三話 ロシア
翌朝、いつもの時間いつものメンバーいつもの場所で食事をする。
けれどいつもは楽しい食事もみんな静かに淡々と食べている。
食事後の後は昨日の続きをした。
「今日は少し畑の機械が調子悪いから直してきます」
堀越さんは畑の方を見に行くそうだ。
全てのミッション予定が無くなり暇になってしまった。こんな状況なのに自分にはやる事がなかった。
僕は有人ローバーの点検やアンテナの確認などしていた。
壊れていないのがわかっているのに。
ローバーの点検などを終えてリビングに入る。
『あ!若田さん!ローバーとかの点検ありがとうございます!、今ちょうど紅茶淹れたのでどうですか?』
愛梨は笑顔で僕の方を向いた。
『え、あ、んー、お、お願いします』
『はーい』
愛梨は元気そうだ。
『ローバーとアンテナの様子はどうだ?』古代さんが聞いてきた。
『問題ありませんでした』
『そうか、ありがとうな若田。あれが壊れたら困るからな』
『若田さん、アイスティーにします?』
『え、あ、ん、お願いします』
『わかりました!』
数分経って僕にアイスティーを持って愛梨が歩いてきた。他の全員の分もお盆において。
『カラカラ、ドテ!、ビシャ!』
愛梨は落ちていたペンで転んでしまい運んでいたアイスティーを全身で浴びてしまった。
『あ!ごめんなさい!』
『だ、大丈夫ですか?』
僕は急いで彼女に近づく。
『怪我は?』
『ないです。すみません』
少し愛梨は泣いてる。
『大丈夫かい?ふきん持ってきたよ、僕はまだやることあるから二人で後片付けお願いね』鴻鳥さんが大きめのふきんを持ってきてくれた。
僕と愛梨で溢れたアイスティーを拭いた。
僕は少し拭いてコップを片付けた。
コップを戻すと、ちょうど愛梨も床を拭き終えたらしく立ち上がろうとしていた。僕は手を差し伸べる。
『ありがとう。若田さん』
『あ』
僕は思わず驚いてしまった。彼女の服が濡れて透けている。いつもライブではそこまで露出がない衣装ばかりなので少し恥ずかしい。
『ん?……あ!』
愛梨も気づいたらしく。顔を赤らめ腕を組み透けた胸を隠して。
『その、ごめんなさい!』
そのまま彼女の部屋の方へと走っていた。
僕は驚いて少しの間立ち尽くした。
数分経って彼女が少し気まずそうにリビングに戻ってきた。
「ザッ! ザッ! ゴロゴロ パアーンドオオオンー!」
車が走る音の後に爆発音がした。直ぐに基地の状況を示すモニターに農場区画での爆発だと示された。そこには今堀越さんがいるはず。
「おい堀越があそこにいるぞ、俺が行く」
そう言い古代さんは宇宙服のあるエアロックへ走って向かった。
『キュキーーーーン』
基地中に超高音の機械音が流れる。耳が痛い。僕は意味もないのに農場区画へ走った。
愛梨も鴻鳥さんもついてきた。
農場区画の扉まできた。扉の小さな窓から畑が見える。だけど壁の一部は吹き飛び、吹き抜けになっていた。そこからは赤茶色の大地が見えた。そして他国の宇宙服をきた人が赤茶色の大地に横たわる堀越さんをしゃがんで見ていた。
だが、その宇宙服の人はぴくりとも動かない。
いまだに超高音の機械音は鳴り続いている。
少し経って古代さんが宇宙服を着て走り、堀越さんの横にいる宇宙服の人にタックルして離した。
超高音の機械音が止み、
『皆さん。こんにちは。私は9000HALです。先ほど日本基地に対しロシア基地の人間が攻撃しました。ゲームの管理者はこの行為はゲーム性に反すると考えたので、ロシア基地にペナルティを与えます』
「パァーン」
甲高い音と共に、空から黄金のレーザーが伸び、古代さんが押したロシアの宇宙飛行士を頭から貫いた。
レーザーに打たれた宇宙飛行士は倒れる。
そして直ぐに宇宙服を着た古代さんが倒れた宇宙飛行士から銃を奪い、僕のいる基地の扉からは見えない方へ銃を向け撃つ。
「バン! バン!」
「キイイイーン、ゴロゴロ ザッ! ザッ!」
車が離れていく音と揺れを感じた。
車の揺れを感じなくなり、古代さんは倒れている堀越さんを抱えた。一瞬だったが堀越さんの腹が酷く抉れているのがわかった。
「マズイ」
鴻鳥さんは慌てってエアロックへ向かった。
「ウソ、、、イヤ」
愛梨も後に続いた。
僕も彼女についていく。
「ピピピピピピ、ピュシュー」
エアロックが開き堀越さんを抱えた古代さんがきた。
「バ!、ドサ」
鴻鳥さんは古代から堀越さんを奪う。
「無駄だ」
古代さんはヘルメットを外し、鴻鳥に応急処置を止めた。
「もう、死でいるよ」
堀越さんは死んでいた。