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471 今回のターゲットは⋯

『ああ、美味かった⋯』どさっ
『至福だな⋯』ぼすっ
『里のヤツら作れるようになってくれねぇかな⋯』ぼふっ
パンパンになったお腹をぽんぽん叩きながらドワーフさんたちが話している。

『カミさんたちを修行に出すか?』
『お前⋯逆に俺たちが行けって蹴り出されるぞ』じろっ
『違いねぇ。でもよ』
もう、この味を知っちまったらよ⋯
と、今度は嘆いているドワーフさんたち。
それは確かに⋯。ゲンたちが作ってくれる料理を知ってしまった今、アイナ様たちとて知らなかった頃には戻れない。

『ま、まあ、その辺はその内考えるとして』
『とりあえず、里の外も安全になったみたいで良かったにゃ』
『確かにな。だが、またいつ同じことが起こるとも限らんからな。ほかの土地でも起きているのだろう?』
〖その通りです。何か対策を講じなければなりませんね。魔神たちにも報告し、何か良い手立てがないか相談せねばなりませんね〗
う~んと考え込むアイナ様や、エル様たち。その姿を見てドワーフさんたちが

『なあ、参考になるか分からねぇけどよ、俺たちがあの時、何とか助かったのはよ?アイナ様の張ってくれてた里の結界のおかげだったんだよ』
『そうだな。里には入らなかったが、結界の近くなら何とかやり過ごせたからな』
『だから、上手く言えないけど、似たような物があれば、次に同じようなことが起こった時に助かると思うんだよな』
ドワーフさんたちが、自分たちの経験を交えて話してくれました。どうやら結界の外側でも、結界の近くに他の所より清浄な所が何ヶ所かあったらしい。

『なんとなくだけどな?割と等間隔であった気がするんだよ』
『だから俺たち、だいたい次はこの辺りなら大丈夫なんじゃないかってところに当たりをつけてな?』
『そこを目指すようにして森の中に少し入っては魔獣を間引きして進んだんだよ』
ドワーフさんたちの話を顎に手を当てて聞いていたエル様は

〖アイナ、結界の仕組みはどうなっているのですか?〗
唐突にアイナ様に結界を張った時の様子を細かく聞いてきました。
『え?そうですわね。まずはこの城が結界の中心ですわ。この城に使われている魔石は私が魔力を込めて作ったもので、言わば増幅装置なのですわ』
『そうにゃ。核となる魔石がこの城にはあるにゃ。ご主人特製の魔石にゃ』
『その魔石を守る要塞としての役目もこの城がしているのですわ。そして、この城を中心に、里の全体に結界を張っているのですが、私はそれをより強固にするために、他の精霊王たちとは少し違う方法をとりましたのですわ』
〖違う方法?〗
エル様がその言葉に反応する。

『そうですわ。他の精霊王たちもやはり自分の城を中心に結界を張っているはずですが、私は地の精霊王。魔石を作ることにかけては他の精霊王たちより長けております。そこで、結界の一番外側に一定間隔で杭を打ち込んだのですわ。言わば小さい結界石とでも言えば良いでしょうか?』
『ご主人、今ならもうひと周りか、ふた周りくらい結界を大きく出来るんじゃないかにゃ?ご主人もサーヤちゃんのおかげでパワーアップしてるにゃ』
『そう言えば、そうですわね?思いつきませんでしたわ』
アイナ様の説明にニャーニャが今ならできるんじゃ?と加わります。

〖ふむ。その石はその場に行って打ち込んだのですか?〗
『だが、それでは大変だろう?』
エル様の疑問にそんな方法をとっていたら大変だと心配するアルコン様。

『大丈夫ですわ。この場から出来ますわ。結界石を打ち込むと例えましたが、実際にはこの辺りと思うところの地中に私の魔力を送り込んで結晶化させているのですわ』
『ご主人、実際にひとつ作ってみたらどうにゃ?』
『そうですわね』
そう言ったそばからアイナ様の手の平にキュイーンっと力がたまっていく。するとたちまち輝く石が出来上がる。
コロンっ
『はい。出来上がりですわ』
出来上がった石をエル様に渡すと

〖なるほどこれは素晴らしいですね。内包する力も申し分ない〗
『今回はアクセサリーとして持てるように形も整えましたが、埋まっている石はそんなに形は気にしていませんわ。むしろ見つからないようにしてますから』
『まあ、見つけられることはまずないだろけどにゃ。悪用されないようにしてるにゃよね』
『そうですわね』
アイナ様たちが話している中、まじまじと石を見つめるエル様⋯

『エル様、そんなに穴が空くほど見つめて何か見つかったのか?』
アルコン様が訝しんでたずねると
〖いえね、これは使えるんじゃないかと思いましてね〗
ふむ。と、一人頷くエル様をみんなが不思議そうな顔で見る。

〖おそらく、ドワーフたちが無事だったのはこの石のおかげですよ。一定間隔に感じた清浄な気を感じた地はこの石が打ち込まれている場所で間違いないでしょう。どうですか?〗
そう言って、石をドワーフたちに渡すと

『ああ。確かにこの感じだな』
『そうだな。俺たちはこの感じを辿って歩いたんだ』
『やっぱりアイナ様に助けられてたんだな』
『『『ありがとよ』』』
助かったと頭を下げるドワーフたちに

『え?そんな?頭を上げてくださいませ』
『そうにゃ助かって良かったにゃ!』
ワタワタするアイナ様とニャーニャ。もっとそこは堂々としていていいのに。と、みんなが思っているが、気がつかない

〖では、アイナ。早速ですが、やってみましょうか〗にっこり

『はい?』
『なんにゃ?』
訳が分からずキョトンとする二人。

〖おや、さっき仰っていたではないですか。ひと周りかふた周り広げてみましょうか?〗にっこり

『え?い、今、ですの?』
『たしかに言ったけどにゃ?』
呆然とする二人

『あ~今回はサーヤがいないからな⋯』
アルコン様、一言
『なんだ?サーヤって愛し子様だろ?まだ二歳って聞いたぞ』
『そんなちびっ子にこんな無茶振りするのか?』
『さすがにそれは⋯』
ないだろう?と言うドワーフさんたちに
『甘いな。もっと酷いぞ』
『『『ええ?鬼か?』』』
『ちなみに結葉はもっと酷いぞ』
『ああ、それは容易に』
『想像つくな』
『ああ、ほんとに』
『『『かわいそうに⋯』』』ほろり
まだ会ったこともないサーヤのために涙を流すドワーフさんたち。だが、今の被害者は

〖さあ、まずはひと周り、次はふた周り。そうですね、石の数も増やしてくださいね。とりあえず二倍でいいでしょうか〗にっこり

『え?え?』
『にゃ?にゃ?』
まずは?二倍がとりあえず?

〖それが終わったらこの結界石を作りましょうか。そうですね、まずは軽く村人全員分お願いしますね〗にっこり

『ええええ?』
『にゃにゃにゃにゃ?』
それは軽くとは言わない

『⋯諦めろ。二人とも』ぽんっ
かわいそうだがな⋯と、二人の肩を叩くアルコン様

『『⋯⋯』』
話についていけない二人。言葉もない⋯

『まあ、なんだ⋯』
『あれだな、がんばれ⋯』
『応援だけしてやる⋯』
ドワーフさんたちも、すまんと思いながらも何も出来ない⋯

〖さ、頑張って下さいね〗にっこり

『ひえええええっ』
『にゃああああっ』
とんでもない事になってしまったアイナ様。
釣られて悲鳴をあげるニャーニャ。

〖ふふふふ〗
ひとりほくそ笑むエル様。

こそっ
『怖ぇな⋯』
『やべぇな⋯』
『敵に回したらダメなやつだな⋯』
『『『だな⋯』』』

『お前たちそんなこと言ってると⋯』ひくっ

〖何か?〗ふふふ

『『『ヒッ!』』』
ほら、エル様が⋯

ぼそっ
『だから言ったのに』
〖アルコンも何か?〗ふふ
『な、なんでもないぞ。な?』
なぜ我まで⋯
『『『⋯⋯』』』
こくこくこくこく
アルコン様に便乗して頷きまくるしかないドワーフさんたち

〖ふふふふ⋯〗
エル様、本領発揮。とっても楽しそうです⋯

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