470 餌付け?
『う~ん⋯』
『あ、あれ?』
『俺たち⋯』
なんで寝てんだっけ?
『あっ。起きたにゃ!』
『気がつかれましたか?』
ニャーニャとアイナ様がドワーフさんたちを覗きこんでいる。
〖まったく、そんなに空の旅は恐ろしいものですかね?〗
『我は振り落とすようなことはせぬがな』
『『『あっ』』』
エル様とアルコン様の声で思い出した三人、ガバッと腹筋で起き上がれば⋯
『きゃっ』ぐらっ
『にゃっ』ころっ
〖おっと⋯〗ぽすっ
覗き込んでいたアイナ様とニャーニャに被害が⋯
〖大丈夫ですか?アイナ、ニャーニャ〗
『ありがとうございますですわ。大丈夫ですわ』
『ありがとうですにゃ。ニャーニャも大丈夫ですにゃ』
〖それは良かった〗
転がるところをエル様ナイスキャッチでした。
『『『あ、悪ぃ。すまん』』』
ドワーフさんたちは反省してます。
〖まあ、無理やり乗せたのは我々ですが、そこまで高いところはダメでしたか?〗
『サーヤたちは喜んでいたがなぁ』
そりゃあ、神様やドラゴンからしてみたら空は大したことないだろうが
『いやいや、俺たちはずっと地に足をつけて来たからな』
『なんなら鉱石集めるために地下の穴蔵の方が得意なくらいだからな?』
『高い山にだって必要なら登るが自分の足で登るからな?』
ドワーフさんたちも必死に自分たちを弁明します!
〖まあ、確かにドワーフは地下都市を作ったなんて話もありますしね〗
『言われてみればそうだな。逆に我は地下で暮らせと言われれば拒否するな』
〖そうですね。それは私も嫌ですね。すみませんでした。確かに、人には得手不得手がありますね〗
『我もすまなかった』
素直に謝るエル様とアルコン様。でも、そんなことされたら
『いやいやいや、謝らないでくださいよ』
『そ、そうだよ。分かってくれればそれで』
『俺達だって情けない姿晒しちまって』
『『『すみませんでした!』』』ずざっ
土下座です。まあ、そうなるよね。
『あっ、この辺りではまりませんか?』
『気分悪くなったのこの辺りにゃ?』
なんやかんややってる内に目的地に着いたようです。
〖そのようですね〗
『では、降りるぞ。掴まっていろ』
『『『え?』』』
アルコン様がそう言って一度旋回すると、一気に、
ぎゅわーんっ
目的地に急降下!
『『『ぎ、ぎやーーあああっ』』』
サーヤとおばあちゃんなら、ジェットコースターみたい!と、喜んだかもしれないが
『あら、これもダメみたいですわね』
『まあ、今のは確かに心構えがあった方が良かったかにゃ?』
〖難しいものですね。感覚の違いというものは〗
『うむ。加減が分からん』
再び気絶したドワーフさんたち⋯必死の弁明も分かって貰えてなかったようです。
そして、目的地に降り立つと、
『姿を戻すぞ』
アルコン様が元の姿へ。その前に華麗に飛び降りたエル様とアイナ様。ドワーフさんたちは?
ごろごろごろっ
無造作に投げ出された⋯なんだか扱いが雑で可哀想。
『『『ん~んんん』』』
あっ、無事に起きました。
『大丈夫ですか?』
『気分はどうかにゃ?』
アイナ様とニャーニャが聞くと
『なんか、体が痛い気がするけどな』
『あー腹の奥が一気にひゅんって縮み上がった気がするけどな』
『ああ、地面だ。こんなに地面が愛しいと思ったことは無いぜ』
『『たしかに』』
そう言って地面に抱きついて?いるドワーフさんたち。だがしかし
『違いますわ。以前と比べていかがですか?と、お聞きしているのですわ』
『重苦しい感じとか、嫌な感じはするかにゃ?』
あれぐらいでドワーフさんたちがどうにかなる玉じゃないと思っているアイナ様とニャーニャにゃん。何気に酷い⋯
『ん?そっちか。そうだな、前みたいな嫌な感じはしないな』
『そうだな、なんか穢れたような感じはなくなってるな』
『空気もきれいだよな?なんか前は紫っつうか黒いっつうか、なんか靄がかったような感じだったけどな』
今は大丈夫だというドワーフさんたち。
『そうですか。良かったですわ』
『でも、一応もう少し歩いてみた方がいいにゃ』
〖そうですね。案内をお願いしますね〗
『まあ、魔物は気にするな。我の気配で大抵の魔物は近づきもせぬだろう』
事前に浄化してはいたが、時間の経過とともに変化するかもしれないと思っていたが、今のとこれろ大丈夫なようだ。だが、安心は出来ないのでドワーフたちに案内を頼む。
『分かったけどよ』
『正確に出来るかどうかは分からないぞ』
『今思い返せば俺達もあの時冷静じゃなかった気がするんだよな』
あの時の自分たちの行動に自信が持てないというドワーフさんたち。
〖かまいませんよ。わかる範囲で大丈夫です〗
『とにかく、何か思い出したら言ってくれ』
エル様とアルコン様に後押しされて
『分かったよ。やってみよう』
『そうだな。俺達も目をそらす訳にはいかないからな』
『おう。そうだな。じゃあ、こっちか』
そう言って、ドワーフさんたちの記憶を頼りに歩き出す一行。
魔物を埋めた場所なども確認して回った。
結果、今は異常は見当たらず、一行は里に戻ることにした。
アイナ様の城の一室
『皆様、お疲れ様でした。ドワーフさんたちもどうぞお座りくださいませ。お茶に致しましょう』
『まあ、ゲンさんたちが持たせてくれたものだけどにゃ』
〖もう昼食で良いのではないですか?〗
『そうだな。我も腹がすいたな』
アイナ様とニャーニャがお茶をすすめると男性陣は昼食にしようという。確かに、お昼にしても少々遅いくらいの時間かもしれない。
『そうですわね。では、是非ドワーフさんたちもご一緒にお召し上がりくださいませ』
『今、支度するにゃ。待っててにゃ』
アイナ様とニャーニャがドワーフさんたちにすすめると、
『いや、おれたちは』
『そうだよ。家に戻るよ』
『アイナ様たちの飯を奪う訳にはいかんだろ』
と、遠慮するドワーフさんたち。親方たちなら気にしないだろうに、案外、常識人?
『大丈夫ですわ。ゲンさんたちが早起きをして下さって、皆さんの分も作ってくださいましたの』
『沢山あるから気にすることないにゃ。今出すにゃ』
〖せっかく用意してくださったのですから頂きましょう〗
『朝から付き合わせたからな、食っていけ』
にっこりして用意を始めるアイナ様たちに
『それじゃあ、なんか申し訳ないけど』
『お言葉に甘えて』
『いただきます』
なんて、殊勝なことを言ってたのは誰だったか?
『あっ!それは俺が狙ってた肉!』
『うるせぇ!どこに名前が書いてあるってんだよ!』
『これもうめぇ。おっ?これなんだ?』
二人は怒鳴りながら唐揚げとローストビーフを奪い合い、一人は敵がいないサンドイッチを楽しんでいる。ちゃっかり気に入ったものはひとつは口にひとつは皿にキープ。もちろん肉中心。今はサーヤ、イチオシのハンバーグサンド。
食べる勢いと量は親方達以上。やはり若さか?
それを呆然と見るエル様とアルコン様。その手は自然に自分たちの分をガードしている。
アイナ様とニャーニャは慣れっこな様子で、程よくドワーフたちの皿が空くと、次を補充している。だんだん野菜の分量を増やしつつ。
『これも美味しいにゃよ。お野菜に肉を挟んで揚げたりしてるにゃよ』
(サーヤちゃんが言うには、本当は野菜から食べさせた方がいいんだけどにゃ)
『ええ。私はこちらの甘辛くタレを絡めてあるものも好きですわ』
(お肉命のドワーフさんたちに初めからお野菜をおすすめしても拒絶されますものね)
『にゃーにゃはこの肉巻きも好きにゃ』
(徐々に野菜に慣れさせて、野菜も美味しいと分からせるにゃ)
『私も好きですわ。ベーコン巻きも美味しいですわよね』
(生野菜の魅力もお伝え出来たらいいのですけれど、まずは健康のためにも、お野菜を食べていただくようにすることが大事ですわよね)
『野菜?でも肉なのか?どれ⋯』ばくっ
『んんん?うめえな!』
『おお!こんな野菜なら歓迎だな!』
バクバク食べるドワーフさんたち。
『それは良かったですわ』
(してやったりと言うやつですわ)
『まだまだあるにゃよ』
(お野菜どんどん食べるといいにゃ!)
心の中でにんまりするアイナ様とニャーニャ。その様子を見て
〖さすがですね。アイナとニャーニャは〗
『扱いを心得てるな』
感心しながらも、ドワーフたちに取られないように高速で消えていくお弁当
『それで?どうするのだ?』
〖何をですか?〗
『とぼけるつもりか?名付けしほうが良いのだろう?』
〖ふむ。そうですね。どうしたものでしょうね〗
何か考えている様子のエル様と、それを見ながら高速でお弁当を食べ続けるアルコン様だった。