13・冒険者登録
――翌朝――
「へぇ...ここが冒険ギルドか......」
俺は嫌々約束した冒険ギルドに、成美と一緒にやって来た。
「あっちの世界の冒険者ギルドとは全然違うんだな?」
見た感じでは、教習所と少し似ているかも。
恵美と付き合っていた頃、あいつと一緒に原付バイクでツーリングを
しようと計画を立てていた時があり、その時に通った教習所の事を
ふと思い出す。
「ほらほら、お兄ちゃん!ボケっとしていないで中に入るわよ!」
「のわ!?そ、そんなに強く引っ張るなって、コケちゃうって!?」
思い出に浸っていた俺の袖をグイッと引っ張ると、成美は冒険ギルドの
中へと入って行く。
「ようこそ、冒険者ギルドへ♪」
中に入ると、入り口付近に待機していた綺麗な女性が俺達に気付き、
ニコッとした笑顔で挨拶してきた。
「あの、わ、わたしのお兄ちゃん...この人が冒険者の新規登録をしたい
らしいんですが、どこで登録をするんでしょうか?」
「冒険者の新規の登録ですか!ご登録、どうもありがとうございます!
ではご案内しますね♪」
綺麗な女性が笑顔で成美にそう対応すると、冒険者の新規登録をする
為の場所へと連れて行ってくれる。
「こちらの三番テーブルで、冒険者の新規登録をお願いします!」
綺麗な女性が新規登録をする場所まで案内すると、軽く会釈をして
元居た入り口付近に戻って行く。
「お姉さん、案内ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
俺達は去っていく女性にお礼を言ったあと、早速、新規登録をするべく
登録担当の受付嬢に声を掛ける。
「あ、あの...すいません、冒険者の新規登録したいんですが?」
「はい。新規登録ですね?ではこちらの登録紙に取り敢えず、必要
事項の住所、お名前、年齢。そして見たところ学生さんみたいです
ので、通っている学校の名前をお書き下さい。あと、ご家族と
お暮らしになられていらっしゃるのでしたら、ご家族のお名前も
お願いしますね。全てお書きになられたら、私に提出してください」
「わ、分かりました。まず、住所をっと......」
俺は受付嬢に言われた通りに、登録紙の記入欄を埋めていく。
「...これで良いでしょうか?」
そして全てを書き終えた俺は、登録紙を受付嬢に手渡した。
「ふむふむ...はい、書き洩らしはない様ですね。では今から三十分後に
冒険者の心得やルール等を教える説明会を行いますので、それまで
お待ち下さい」
「はい、分かりました!んじゃ行こうか、成美!」
「うん!」
「さて三十分...か。それまでどうやって時間を潰そっか?」
「あっ!それだったら良いところがあるよ、お兄ちゃん♪」
成美はそう言うと、案内看板の一部分に指を差す。
「グラウンド会場?」
「このグラウンドで冒険者達が戦いの練習とか、武器なんかのチェック
をしているみたいなんだよ!あとね、ランクアップの試験なんかもして
いるみたい!だからそれらを見学していれば時間も潰せると思うんだよ!」
「やたら詳しいな....どこで知ったんだ、そんな情報?」
「例の雑誌だよ!あれに冒険ギルドの事が色々と書いてあるんだ♪」
「例の雑誌?ああ~はいはい。昨日俺に自慢気のドヤ顔で見せてきた
あのイケメンや美女達が載っている雑誌の事か!」
俺は『冒険者ファンファン』の事を思い出す。
どうせ、陽キャラやイケメン達がキャーキャー言われている場所だろ?
んなとこ、行きたくないんだけどっ!
そんな頭の痛くなりそうな場所よりも、俺的にはあそこに見える
武器屋や道具屋を見学したいんだが......
かと言って、成美をひとりで別行動させたら、絶対ナンパされちゃい
そうだしなぁ。
......妹を魔の手から守る。
それはお兄ちゃんとして、やらねばならぬ責務だぜっ!
イケメンなんか見たくないが、可愛い妹を守る為、グッと我慢のこを
遂行するか。
「......よし。そんじゃ成美のご期待通り、そのグラウンドで時間潰しは
決定だな!」
「おお!やったぁ~いっ!ありがとう、お兄ちゃん♪」
成美は喜色満面の笑顔で、その場をピョンピョンと跳び回る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ほら!あそこがグラウンドみたいだよ、お兄ちゃん!」
「へぇ、結構大きいんだな......」
あっちの世界にあった、一番大きかった決闘グラウンドのより
広いんじゃね?
「......しかし良く見ると、人が沢山いるな?」
ここって、そんなに大人気の場所なんだ?
やっぱ、成美をひとりでグラウンドに行かせなくて良かったぜ。
「行かせていたら、確実にナンパされてただろうな......」
俺は見える人だかりを見て、成美と別行動をしなくて正解だったなと
安堵でホッとする。