04・勇者様
......な...い。
起...な...い。
起き...さい。
「いい加減、起きなさいって言っているでしょうがぁぁぁああっ!!」
「のわぁぁぁあ~っ!?」
聞こえてきたお怒りモードの大声にビックリした俺は、飛び跳ねる様に
ガバッと起き上がる。
「ふう、やれやれ。やっと目を覚ましましたか......まったく、いつまで
グースカと寝ているつもりなんでしょうかね、もうっ!」
その大声の主が眉を吊り上げてそう言うと、腰に手を当てて嘆息を吐く。
「え、えっと、その...寝坊助ですいません......」
何で怒られているのか良く分からない俺だったが、取り敢えずここは
機嫌を取っておいた方が良いと判断し、頭をペコッと小さく下げて
怒っている相手に謝りの言葉を入れておく。
「......そ、それで...ですね。ちょこっとばかり質問があるんですが、
よろしいでしょうか?こ、ここはその...一体全体どこなんでしょうか?
お、俺は確か、トラックに跳ねられて死んだと思うんですが?」
トラックに跳ねられて意識を取り戻したらこんな感じの場所にいるし、
やっぱりここは俺の想像通り、あの世なのかな?
......う~ん、でも見た感じでは地獄......じゃなさそうだけど?
地獄のイメージとは逆の真っ白で殺風景な周囲を見て、俺がそう判断を
していると、
「うふふ♪ここはですね、天界という場所ですよ勇者様♪」
「は、はあ!?ゆ、勇者!?」
先程、俺を強引に叩き起こした女性がニッコリと微笑むと、囁く様な
声で俺の問いに答えを返してくる。
それを聞いた俺は、この場所がどこかという事よりも、この女性から
発された勇者という言葉に引っ掛かってしまう。
「あ、あの...そ、その勇者ってのは、もしかして俺の事...ですかね?」
「もしかしても何も、ここに貴方以外、誰もいませんよ?」
.....ああ。
「た、確かに誰もいませんね......」
俺は周囲をキョロキョロと見渡し、ここにいるのはこの女性と
俺だけだというのに気付く。
「おっと、そうでした!わたくしの自己紹介がまだでしたわねぇ♪
え~コホンッ!わたくしの名前はメリアーナ。貴方の認識で言うのなら、
女神様ですねっ!」
「め、女神様!?」
い、言われて見れば、この女性の見た目と雰囲気はそう言われても
差し支えないな。
腰まで伸びている金色にキラキラと輝く長い髪に、サファイアの様に
光輝く藍色の瞳。
そして絹の様な素材の真っ白なローブに身を包み、手には細やかな
綺麗な飾りで出来ているロッドを持っている。
その姿、正に神々しいを絵に描いた存在。
これは確かに女神様で間違いない。
......性格はじゃじゃ馬っぽいけど。
「で、ではメリ...アーナ様。あ、改めてもう一度お聞きしますけど、
俺が勇者っていうのは、その...ど、どういう意味でしょうか?」
自分を女神様と名乗るこのメリアーナという女性に、俺は自分の置かれて
いる立場を理解するべく、今気になっている問いを投げる。
「うふふ♪それはですねぇ~勇者様!貴方はわたくしの管轄する世界の
平和を脅かす存在の魔族...そしてそれらを束ねる王である魔王を倒す
勇者様に選ばれたのですっ!いや~おめでとうございます、パチパチ~♪」
自称・女神様のメリアーナがニコニコした顔で俺に向かって称賛の声を
掛けてくると、両手をパチパチと叩く。