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02・振られた俺

――陽は昇り次の日の朝――


部屋の窓から射してくる朝日の光を顔に浴びて起きた俺は、
ゆっくりと布団から出て、学校へと行く準備を寝惚け眼(まなこ)で始める。

そして学校への準備を終えた俺は一階へと降り、母親の作った朝食を
食べる為、テーブル椅子に腰を降ろすと、俺はテーブル上に置かれていた
朝食をパクパクと食べていく。

そんな中、

ふと何かを思い出したのか、母親がこちらに顔をスッと向けると、

「ねぇねぇ聞いてよ、溯夜!ママ友の会で聞いた話なんだけど。ほら、
あんたととっても仲が良かった娘さんがいたじゃない?確か名前は...あ!
そうそう、思い出した。確か恵美ちゃん!その恵美ちゃんに、なんと!
スッゴいイケメンの彼氏さんが出来たんだって♪」

「――――は!?」

俺の耳に、とてもにわかには信じがたい、衝撃なる情報が入ってきた。

い、今、恵美にイケメンの彼氏が出来たとか言わなかったか!?

う、嘘だろ!?

ま、まさか恵美の奴、浮気をしていたっていう......のか!?

い、いやそんな馬鹿な!?

だって、昨日の夜もあんなに楽しげに会話したじゃないか!?

近い内にまたデートをしようねって、計画も立てたじゃないかよ!?

......だというのに、

それが他の男と付き合っていた......!?

......嘘だよな、恵美!?

ママ友の会の聞き間違い、それか勘違いだよな!?

なあ、答えてくれよ恵美!

頼むから、嘘...だって言ってくれよ......お願いだから!


恵美ぃ...ぃぃぃい......いっ!!!


母親から突如聞かされた、恵美の浮気情報を聞かされた俺は、言葉には
言い表せないズシッと重い何かが、俺の心にのしかかってくる。


―――そんなの信じられないし、信じたくもない。


所詮は母親同士の井戸端会議での噂話だし、信憑性もない。

そうさ、直接あいつから真相を聞くまでは信じてたまるかよ!


―――だが、俺のこの切実なる思いは届かない。


何故なら、母の言うママの会で流れる情報には一切合切ガセがない
事で有名なのだ。

ママ母の会の間で流れる情報は常に的確で確実。

そんな完璧なる情報なのだ。

それを分かっているからこそ、俺の心中は動揺でパニクり、頭の中は
真っ白。

そして心臓は今にも止まってしまうのでは、という程のショックを受けて
しまう。

だが疑問に思う人もいるだろう。

こんな最悪な情報である恵美の浮気情報をこの母親は悪びれもなく、
俺に言ってきたのかと?

俺がこの情報を聞けばショックを受けてしまうのは明白だというのに、
どうして残酷で残忍なこの情報を俺に言ってきたのかと?


その理由は簡単だ。


―――母は俺と恵美の関係を知らないからだ。


そう...俺と恵美が付き合っていたという事実を母親は知らない。

俺が奥手だったせいもあって、あいつとは恋人の関係には見せず、
女友達の関係に見えたのだろうな。

まぁそういう理由もあって、母親は俺と恵美の関係を友達の間柄だと
認識している。

じゃあ何故、母親に恵美とは恋人同士だったって事を言わなかったのか?

その理由も簡単だ。

あいつと付き合っていた頃の俺って、思春期の真っ最中でさ。

だから思春期特有のこじらせのせいで、恵美と付き合っているという
事実を母親に伝える事が、とても気恥ずかった。

そしてとうとう、恵美が引っ越して行くまで...いいや、引っ越した
後でさえも、その事実を母親に伝える事が出来ていなかったのだ。

そういう事もあり、俺と恵美の関係をまったく知らないこの母親は、
他の母友から聞いたという恵美の浮気情報を、俺に対して意気揚々と
してきたって訳だ。

「もう!だから母さんあれほど言ったでしょう!いちも早く恵美ちゃんに
告白をしなさいってさ。あんな美少女さんで、あんたと気の合う子は
今後一切現れないかもしれないっていうのにさ。ホント、逃した魚は
大きなかったと死ぬほど後悔しなさいな、馬鹿息子っ!」

「あはは...そ、そうだよね......ホント馬鹿だよね...俺って......」

俺と恵美が既に付き合っていて、恋人同士の関係だという事を全く
知らない母親は、呆れ口調にて述べてくる忠告に対し、俺はただただ
苦笑いをこぼすしかなかった。

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