第3章の第46話 くじ引きと、一笑を買うムードメーカ
☆彡
【ファミリア星立総合運動公園陸上競技場】
【――壇上にいるスバルは、難民達に語りかける】
『これから、皆さんを3つのブロックに分けます! 先ほど皆さんに言いたかった事は、ここアンドロメダ星に残る人と、あちらに見える大きな星……』
「……」
スバル(僕)は、あの大きな星に手を向けた。
難民達はそれに誘われるように、その星を見上げる。
『あれは惑星です! 月ではなく、人が住める惑星なんです!』
「!?」
――ザワザワ、ザワザワ
騒ぎ出す難民達。
スバルは言の葉を続ける。
『――その名をソーテリア星と言いまして、ここアンドロメダ星とソーテリア星は、双子の惑星なんです!』
「「「「「!?」」」」」
ドンッ
とソーテリア星が大きく主張する。それはお月様よりも、断然大きかった。
『そして、もう1つ!
こことあちらに見える惑星は、アンドロメダ銀河に属しますが……。
人が難民として移住できる星が、もう1つありまして、その名をアクアリウス星と言います』
「アクアリウス星?」
「何だその名前は?」
「取ってつけたようなものじゃないのか?」
『……』
これにはスバル(僕)も、対応に苦慮する。
そこで声をかけたきたのは。
『……スバル君、ちょっといいかな?』
『はい! シャルロットさん! ヒースさん!』
シャルロットさん、ヒースさんと、壇上の最前列に出てきて、僕の隣に並び立つ。
アクアリウス星事なら、僕よりも、彼女達の方が詳しいからだ。
そのシャルロットさんが演説を行う。
『初めまして、地球人難民の皆さん。……あたしはアクアリウス星から来ましたアクアリウス星人のシャルロットです! そして、彼が……』
『同じく、ヒースと言います!』
『『あたし(僕)達は、アクアリウス星から来ました! プロトニアです!』』
「……」
「……プロトニア……!?」
ザワザワ
『アクアリウス星は、みずがめ座矮小銀河に属する惑星の1つです! あたし達はその星で生まれ育った、アクアリウス星人です!』
「……」
『先ほどシャルロットさんが申されたプロトニアは、宇宙を股にかける活動家の1つです。主な任務は、惑星間の橋渡しになります!』
「……」
「……」
頷き得るシャルロットさんに。
これには、スバル君も頷き得る。
『そのプロトニアの活動家の一環として、全球凍結する地球から皆様を拾い上げるために、こうして僕達プロトニアが一致団結して、皆さまをお救いしたのです!』
「……」
『プロトニアの活動内容は多岐に渡ります!
惑星間の橋渡しから始まり、その文明の水準を上げる事、異星人との交流、その星での活動内容を踏まえ、異星に招待したりもします。
そして、今回請け負ったような人助けも……』
「……」
難民の人達が顔を見上げ、その演説を聞いていた。
ヒースさんは笑みを深め。
シャルロットさんに変わる。
『そこであたし達、アクアリウスファミリアも、あなた達難民を受け入れます!
あたし達の星の重力は、地球よりは重いですが、アンドロメダ星やソーテリア星と比べれば、軽いものです!
そこで、くじ引きの前に、名乗り出て欲しいと思っています!
対象は、体の弱い人や、まだ小さいお子さんを持つ赤ちゃんを宿したお母様達を、避難民として受け入れます!』
「……」
「……」
まだ小さいお子さんが、
お腹の中に赤ちゃんを宿したお母さんの手を取っていた。
「ママ、あの姉ちゃん、なんて言ったの?」
「……」
これにはママさん、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていて、驚きしかない。
まさかその人が、この宇宙にいただなんて。
『あたし達の星、アクアリウス星、……それは、水が豊富な資源豊かな惑星の1つとして数えられています!
とてもきれいな惑星で、宇宙旅行の観光地としても、有名なんですよ!
何より、海産物が美味しくて……』
「……」
「シャルロット……私情が出てるよ……」
「ととといけない!! 今のは忘れてください!! ノーカットでお願いします!!」
「イヤ無理だよ……これ、ライブ映像だから……」
「あっ……」
ドハハハハハッ
シャルロットさんは、この場で初めて、笑いを買うのだった。
これにはもう、カァ~~と顔を赤らめるしかない。
だが、緊張をほぐすには、いい効果だった。
『……』
スバル(僕)の顔からも自然と笑みが零れて、その口をついて出た言葉が。
『あの……お母さんいらっしゃるでしょうか?』
「!」
『お腹の中に宿した子が、流産や死産するのは、僕達の目から見ても、とても……とても……心苦しいです……』
「……」
『だから、勇気を出してください』
「……」
僕は難民達の顔を伺った。
そして、隣にいるシャルロットさんとヒースさんを見て。
『……済みません、出過ぎました』
『フッ……』
『フフッ……』
スバル(僕)は謝り。
ヒースさんは笑みを深め。
シャルロットさんはいいのいいの、した。
「……」
その時、お母さんたちは、お腹の中に宿る胎児を安心させるために、さすって安心させてあげる。
「……」
「……」
自然、お子さんと手を繋いでいたママは、その握る手を強め。
その反応を買ったお子さんは、ママの顔を見上げるのだった。
で、スバルは。
『えーと……えーと……他には……う~ん……』
(まいったどうしよう……ッ!?)
困った僕は、頭をかいていた。
「…………」
これを見ていた人達は、真剣な顔つきだったが。
「……プッ」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、緩んだ人もいた。
まるで自分達と同じ、人間なんだと。
「マズイなぁ、スバル君、スピーチ苦手だからなもう……っ。ハラハラする~~」
「あれで苦手なの?」
「うん。あたしがずいぶん前から、しこたま鍛えてたから!」
「「鍛えたぁ!?」」
「うん、学校の教育方針でね。あの子バカだから!」
「バカなんだ……」
アユミ、クリスティ、アユミ、クコンとクリスティの2人、アユミちゃん、クコンちゃんと言いあうのだった。
にしても、このスバル君のスピーチ力の秘密は、どうやらアユミちゃんによる、鍛え方だった。
とこのままではマズいので、次にアドバイスに入るのは、
前にスピーチを行っていたティフさんだ。
その人は、僕に近づき、こっそり耳打ちしてくれる。
「WHOとJAXAと医者の区分分けよ」
『あっそっか……!』
「……」
スバル君に助言したティフ(あたし)は、その場から身を引くのだった。
『これから3つのブロックに分ける前に、くじ引きを行います! これは先ほどスピーチをしてくれたティフさんの話と被るんですが……』
とそのティフさんは、アイちゃんとガノスさんのいるところに身を引いていた。
とその言葉を零す。
「やっぱりまだまだ子供ね」
「フッ」
「……」
ティフ、ガノス、アイと述べあうのだった。
『世界保健機関(WHO)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)や医者たちを、3等分に分けて、その難民達をまとめるリーダーとしておこうかと考えています。
ここには国際警察の方や紛争地域で戦争行っていた軍人さん達も含まれます。
その星に移住次第、その難民達をまとめるリーダーになってほしいと、僕達は考えてます』
「……」
「……」
「……」
「……」
「「……」」
WHOが、JAXAが、医者たちが、国際警察の方々が、紛争地域で戦争を行った軍人たちが、スバルの話に耳をかけた向けていた。
『――星王アンドロメダ様が言ってました――』
★彡
――あの日の回想
「――ワシが思うに、将来的にそのブロックには、独自性が生まれるはずだ! 健康面だけではなく、何らかの変化が起こる! それは環境に適応した人類学の進歩じゃ!」
「人類学の進歩……!?」
スバルも、初めて聞く言葉だ。
「聞けば、地球人類は宇宙人との交流は浅い……。一部の国際機関が昔から関わり、独自の文化・文明の進歩を促した」
「……」
「そう言った者達の掲げていた目標は、次世代の子供達の手での成長を信じての……ものだった」
「次世代の子供達……」
「『古きは良き土に還ろう』……『次世代の芽を育むために』……」
「……」
「この言葉の理念……!! 決して忘れるな、地球の子よ」
「はいっ!!」
「フッ……」
星王アンドロメダ様は僕達の意を組み、昔の人達が掲げていた心情を、教えてくれたのだった。
☆彡
『――と』
その光景を、別所で見ていた星王達は。
「この小僧……」
「へぇ……」
「何じゃ?」
「いや、珍しい……と思ってね」
「うむ」
「フンッ……」
「「「…………」」」
その様子を温かく見守るのだった。
『僕達も同じです。皆さんがその星に住めば、難民生活を送るうちに何らかの変化が生じ、独自性が生まれるかと思います。
僕はこう考えています。
宇宙人達との交流の機会を図る、チャンスなんだと……!!」
☆彡
【海上都市タラッシーポルティ】
その街頭の大型エアディスプレイでも、『地球人類、難民大移動』のニュースが実況生中継されていた。
演説(スピーチ)を行っているのは、スバルの姿だった。
『でも、最初は何といっても苦難と挫折と苦悩の連続でしょう。
見た目が違う、話す言葉が違う、文化が違う、宗教が違う、各惑星との交流が栄えていて、そのあまりのギャップの違いに当初は戸惑うでしょう!』
「……」
「……」
「……」
街頭の人達が足を止めて、目線を向ける。それは注意への関心だ。
『初めに事件を起こしたのは、僕達です!
……だから、後になってわかりました! そのヒントを与えてくれたのは、アクアリウス星人の御二方でした!』
「「……」」
★彡
――回想。
それは星王アンドロメダ様との謁見が終わり、帰った後の宇宙船内での会話だった。
「……そうか、もしかしたら……」
それはヒースさんの呟きだった。
「!」
「うん……考えられる……!」
「どうしたヒース!?」
レグルスが問いかける。
「星王アンドロメダ様が、なぜ、難民達に仕事を手配するのか!? だよ!」
「「「「「!?」」」」」
「それって?」
「ああ、これは僕の仮説だが……。仕事を通して、地球人たちにアンドロメダ星人たちとの交流の場を図りたいかもしれない!!」
「でもそれは、あたし達の母星にも言えますよね!? ヒース!」
「ああ、そうだねシャルロット!! ……でも、一番の関心は、被害にあった街の復興だよ!!」
「……?」
一同、訳がわからない。
そこで、声を張り上げたのは。
「――ああっ!!!」
ビクッとする一同。
そう、声を張り上げたのはシャルロットさんだった。
「そうか!! 宇宙探査機の事故で、実際に被害にあった場所だ!!」
「そう!! そこだよヒース!! まさにアンドロメダ王の狙いは、そこへの修繕活動かもしれない!!」
「そうかなるほど……その修繕活動を通して、地球人への風当たりを削いでいくのが……」
「ああ、もしかしたらそれこそ、あのアンドロメダ王の狙いかもしれないな……!」
「……」
スバル(僕)はその話を聞いていたのだった――……。
回想終了――
☆彡
【ファミリア星立総合運動公園陸上競技場】
「フンッ、あのポンタヌめっ!!」
「ハハッ」
「フフッ、あの人なりに便宜の場を図ったわけですね」
「あれが……?」
アンドロメダ王女、L、デネボラ、レグルスと述べて。
「フンッ、どちらでもいい……! 後でわらわ達が、便宜を図るよう、周りに取りつけて周るだけじゃ! ……その際は頼んだぞ、デネボラ!」
「少し、アイデアを盗むようで気が引けますが……。後でニュースを報じて、父と娘の話題で取り付けた方が、……よろしいでしょう?」
「? ……なぜじゃ?」
「もっと言えば、発案者のヒースさんの口から始まった事です!
シャルロットさんも話題に加えて、2人の評価を促す形が、最善手!
……今後の活動を考えても、いい意味で働くでしょう!」
「なるほどな……! 読めたぞ」
「フッ」
(そうか! アンドロメダ星とアクアリウス星の交流を図るために……!!)
(考えたな……!)
Lとレグルスが、その話の意図を聞いて納得の理解を示すのだった。
☆彡
「星王アンドロメダ様が、後で皆様方に働き口を用意してくださいます!
そこで得た金をもとに、皆さんの身支度を整えて、好きなものを購入してください!
子供たちにプレゼントを与えるのも良し。
自分たちへのご褒美として、上手いものを食べるのも良し。
身なりを整えるために、その星特有のお洋服に袖を通すのも良し。
また、勉学を図るために、教科書やノート、筆記用具などを買い揃えるのも良しです。
また、マンガやアニメ鑑賞などを見るのもいいでしょう!
自分たちが好きな事に使ってください!」
「……」
この話を聞き入れる難民達。
で、まさか、そこからの意見が飛ぶ。
「文字の読み書きができないのに、漫画やアニメの声優の人が言っている言葉の意味も、……わからないだろ!?」
「あっ!!」
「やっぱりガキだな!!」
「しまったぁ~」
「「「「「アハハハハハ!!!」」」」」
「……」
みんなに笑われて、テレテレのスバル。ほんのり恥ずかしくて顔が赤い。
シャルロットさんに続き、僕で2人目だった。
これにはシャルロットさんも「フフッ……」笑い。
ヒースさんの視線に感づき、「なに……?」「いや……」とした会話があったのだった。
「これって……」
「ええ……」
「いい具合に働いているわね……」
「フフッ」
クコン、シャルロット、クリスティ、アユミちゃんと述べて。
ほんのり笑みを浮かべるアユミちゃん。
「?」
「どうしたの? アユミちゃん」
「いやね。前に学校の先生が言っていた言葉を思い出してね。……フフッ」
★彡
――回想。
それは小学校時代の話。
スバルはアユミちゃんから勉強を教えてもらっていた。
「違うって!! 三角形の面積の求め方は、底辺×高さ×2分の1よ!!」
「えっ!? でもこの30度、60度、90度の角は、それにサイン、コサイン、タンジェントって何!?」
――とそこへ足を運んでくる人物の影が。
「「!」」
その人物の名は。
「おやぁ? 勉強を教えているのですかー!?」
「「先生!」」
先生だった。
「ははぁ~前にスバル君は、赤点でしたからね……!」
「ッ」
「それに比べてアユミちゃんはとても優秀ですからね! 平均70点~90点を推移してますからね!」
「えっへん!」
「彼女に勉強を教えてもらう方がいいでしょう。精神的レベル的にも波長が近いでしょうし」
先生はそこまで言い。
今やっている三角形の問題を覗き込む。
「ふむ。58ですね」
「「!?」」
「……もうわかったの? 早くない?」
「いいえ、私達教員が作っているテストの答案なので、その問題様式と回答方法と答えを熟知しているだけです」
((……ズリィ~~……))
「う~ん……。試しにアユミさん」
「はい」
「ホワイトボードに、このテスト問題を解いてください」
チラッ
とスバル君を見て。
「……スバル君はまだご理解していないようなので」
「……」
これにはあたしも、やれやれという思いで嘆息するのだった。
「……わかりました」
先生に言われたあたしは、席に座ったまま、自分の机に備わっている端末に触り、信号を送る。
するとホワイトボードに、その問題が表示されて。
カタカタとあたしが手入力して、その問題を解いていくのだった。
「三角形の面積の求め方は、底辺×高さ÷2です。
よってこの問題の解き方は、18×12÷2となり。左手側から解いていき、116÷2となります。
これを半分に割ると、58となります!」
「うん正解!」
こんな問題は、簡単とばかりにあたしは鼻息を鳴らすのだった――フンッ
「では、次の小数点の問題は?」
「簡単!
底辺は204.6、高さが338.4の場合!
さっきの求め方と同様でいいと思います!
204.6×338.4÷2となり。これを三角形の求め方で解いていくと、69236.64÷2となり。
その答えは、34618.32となります!!」
「うん!! 大正解!!」
(フゥ……今のは危なかった……。なんでこんなに数が多いのよ……)
あたしは解けはしたが、さっきの問題は難しいと思った……。
「………………」
ズ~~ン……
とこれには、スバルは手も足も出ず、思い切り凹んでいたのだった……。
は、速過ぎるよぉ、アユミちゃん……。
彼女は優秀だった。
こんな僕よりも……。
「――さてスバル君!」
「はい?」
「聞きましたよ~! 学校にカードゲームを持ち込んで、遊んでるようですね!?」
「ゲッ!!」
「出しなさい!! 君からも没収です!!」
「そんな~~!!」
――とスバルのデッキは、なんやかんやあって先生に取り上げられたのだった。
とそのデッキ構成を確認する先生。
「フムフム、こうなっていたのか……」
「……」←メッチャへこんでる。
「これは強いわ」
「え?」
これにはアユミちゃんも驚く。
「繋ぎが上手い!!
まず、相手を氷漬けにするところから始め、
次に、毒のカードで凍結中の相手にブレイク性能を当てて等倍ダメージ!! なおかつ毒のフィールドを作る。
さらに、毒のフィールドをこのカードで吸い寄せてからの攻撃。
ステルス状態の相手に追撃する為、すかさずサポートカードも入れている。
さらにヒットした相手には、麻痺性能を与えるサポートカードも組み込んでいる。
何より、フツーは目がいかないはずのバリアを1枚だけ忍ばせている……。
フツーはトラップ系やカウンタ系なのに、……なぜ!?
……なるほど、どんなタイミングでも、任意で使用できるバリアか……フムフム。
さしずめ、限定カードだな。
強大なバトルカードは、そのデッキに1枚しか入れられていない。
君はそーゆう相手に対して、忍ばせていたこのカードで防いでいる場面があったと……周りからは聞いたけど……」
「はい。でもそれ、第2デッキです」
「……1番じゃないと?」
「はい……前に親に取り上げられて、店に売られました……」
「あちゃ~」
「強過ぎだもん、スバル君はことゲームになると……」
「ははっ……。もしも暇なら、そのカードゲームを公認しているお店で、バトル、……見せてもらおうかな?」
【――後日】
【バトルカード公認ショップ】
スバル完勝。
6勝0敗0引き分け
「強過ぎ……」
その負けたナビが消える……。
「お前!!! 少しは手加減しろ!!! ロイもロイだ!!!」
そのお店の機械ボードの上には、ホログラム映像が投影されていた。
そのホログラム映像に映っているのは、スバルの相棒ロイの姿だった。
その様は、バトルに勝利して、照れていた――いやぁ~
「ははっ、まるでスバル君は、ムードメーカだね」
「? 先生?」
「君達子供達の……」
その生徒はムカつきながらスバルに当たるが、スバル君もまんざら悪い気はしてなかった……。
回想終了――
☆彡
「へぇ……ムードメーカーか……」
「まるで子供ね。ってガキか!」
「うん、子供だもん!」
クコン、クリスティ、アユミちゃんと言いあい。
その話をアンドロメダ王女様たちが立ち聞きしていた。
「で、そのスバル君の全体の戦績は……?」
「う~ん……全体を通して見れば、勝率70%ぐらいかな?
あたし達顔見知りとは勝率80%ぐらいで。
インターネット通しての対戦成績はだいたい……、60%ぐらいかな……? 子供の部限定だけど……」
「すごっ!!」
「子供の部って……?」
「このゲームは、子供の部と大人の部に分かれていて、
子供の部の対象年齢は、小学1年生から中学3年生までを対象としていて。
大人の部は、一般部門とされてるの!
対象年齢は、小学1年生以上! だから、スバル君でも参加できるの!
だいたいこのゲームは、腕っぷしじゃなく、その人のセンスを求めてるから、小学生が大人顔負けの試合で勝ちあがる事は、良くある話ね……!」
「「へぇ~……」」
「おふざけだけど、TVの芸能人と同姓同名の人が参加していて、スバル君、その人を下してるし!
遠く離れた外国人も下してるんだよ!
でも、中には負けた試合内容もあって……。
当然だけど一般の部は、お金にものを言わせた、課金制を敷いていて、イリーガルカードの使用が認められてるの!
また、中には悪質な人たちもいて、改造カードやチートが使われていて。
試合中にバグ技も、使われたことがあるみたい!
だから、途中回線が切れて、無効試合になることも少なくない……。
本当に強い人は、対戦カードの仕掛けにトロフィーのアイコンが出てて。
時々、そのゲームの開発スタッフ陣の方が、乱入試合を仕掛けてくるからね。
あれはカオスだって言ってたもん……! スバル君……!
……で、スバル君はそれで負けちゃって、ほとんど手を出さなくなっちゃったの……。
まぁ、あたしが知る限りなんだけど……ね。」
「「……」」
それは知らないところでは、挑めるという事だ。
スバルのその戦績を考えれば、その世界に挑んでいて、そこから負けて学び得たものもあるかもしれない。
勝って、終わるのではなく。
負ける事で、得られるものもあるのだから。
とこの話を聞いていた人が。
「「地球人うるさい!!」」
「静かにしろ!!」
「厳粛な場だぞ!!」
それは、アンドロメダ星の3英傑の2人、ガノスとティフの声がハモリ。
ガニュメデス様から命を受けた護衛2人、アラン、アプリが、注意を促すのだった。
これには、ビクッとする3人。
「「「!!」」」
さらに付け加えて、スピーチ中のスバル君も驚いてしまうのだった。
『ひゃい!?』
「!?」
スピーチ中にそれが漏れた……ッ。
これには難民達も、何事かと驚いてしまう。
そして、これを見ていたアンドロメダ王女様が、幻滅してしまう……ッ。
(しもうた……この壇上にあげる人選を間違えておった……ッ)
「今の……」
「ええ、漏れましたね……これ、実況生中継(ライブ)映像ですよ……」
「頭が痛い……ハァ……」
これにはアンドロメダ王女様もデネボラさんも、頭を痛めるばかりだ。
☆彡
『――と僕からは、以上です』
僕のスピーチが終わったと思ったその時、手が挙がった。
『……はい?』
「前に、雲の上に上がった映像を見た!」
『?』
「質問! 君はホントに地球人なのか!?」
「そうだな。疑いたくはないが……」
『……何の事でしょう?』
「とぼけているのか?」
「いや、あんたの言い方が悪いだけだ」
「なに!?」
「実際、何の事かわからないだろ!?」
『あ、あの……喧嘩は止めて……。これ、この星ばかりか周りの宇宙中にリアルタイムで流してるから……!!』
そうこれは、今まさにリアルタイム映像で、各宇宙に実況生中継されている。
スバルが危惧していたのは、まさにそれだ。
ここで地球人側で問題行動が起これば、この後の行動如何に、もろに関わってくるからだ。
地球人類、難民達に対する誹謗中傷が起これば、もう目も当てられない……ッ。
「あ~んやろうってのか!?」
胸倉を掴みかかる男性。
捕まられた男性は。
「おい、伸びるだろ!?」
「あ~!? 知るか!!」
「チッ、そっちがやる気なら!!」
「あっ!? やろうってのか!!
両者掴みかかりあいに入る。下手にしたら喧嘩だ。
『あっ! ちょっとそこ待って!!』
これにはスバルも対応に慌ててしまう。
「おい、マズいぞ!!」
「これ、無人航空機を通してのライブ映像でもあるのよ!!」
「……」
箒を握りしめるアイちゃん。
「アイ、見えないようにできるか?」
コクリと頷く。
「じゃあ、あたし達がサポートするわ。ほとんど一瞬でね。
コクンと頷くアイちゃん。
ガノスとティフのサポートがあれば、それは可能だった。
だが、ここでデネボラさんが。
「そこやめなさい!!」
と注意しておくのだった。
「何ならわらわが……!」
だが、ここでギロリと睨みつけるデネボラさん。
「うっ……」
となるアンドロメダ王女様がおられるのだった……。
――で、その争い中の難民たち2人は。
「だいたい魔法なんて、この科学技術時代にあるもんか!?」
「なくてもだな!! 近代兵器で代用できるだろうが!! それぐらいの事もわからないのか!?」
『あ、あの本気でやめて……』
「魔法はない!!」
「近代兵器の道具だ!!」
「やらせだ!! 何のやめだ!?」
「CG、ホログラム映像だ!! ああっ、やろうってのか!!」
スバルはこの時、この言い争いを聞いてて、内心イライラしていた。
『うるさぁあああああい!!!』
キィ――――――ン
とこの会場中に仕掛けられた集音器を通して、大きくなったスバルの怒声が響いたのだった。
これには言い争いをしていた2人も、相手を掴みかかったままの姿勢の固まっていた……。
それは周りもであり。耳を塞ぐほどだった。
『さっきから聞いていればそこ!!!』
「「!」」
『静かにしろ!!! っつーか出てけッッ!!!』
僕は怒りのまま、手を横薙ぎにないで制するのだった。
「んなっ!?」
「ガキがふざけたこと抜かすな!!」
「誰がガキの言う事聞くもんか!! ああっ!!」
「ガキはガキらしく……ママンのミルクでも飲んでろ!!」
『グググッ……』
尻込みするスバル。
事実そうだ。子供のスバルでは、どうする事もできない。
そこで。
「少年」
『!』
「汚れ仕事は我々が請け負おう。少し下がりなさい」
「……」
僕はガノスさんに言われて、壇上から引き下がる。
と代わりにガノスさんが、壇上の最前列に出てきて。
『ハァ……誠に遺憾だ。ガッカリだ……』
「「……」」
『この場は、地球人類、難民達をどうするのか取り決める厳粛な場……!
相応しくない、あなた達の行動は……!
……。
さらにこの場には、無人航空機やメディアなどの姿がある……!
……」
ガノス(私)は目を細めた。
「……この場での不手際は、この私、ガノスがすべて請け負おう』
シ――ン……。
と周りが静粛になる。
それは子供のスバルよりも、責任が持てる大人のガノスの方が、よっぽどインパクトがあるからだ。
『……そこにいる監視員!』
「!」
『そこにいるバカ2人を、反省室にぶち込め!!! 後で私が話をつける!!!』
そう言うと、その現場に監視員の人たちが駆けつけて、
その問題を犯した2人を、この場から連れ出していくのだった。「こらっ」「離せ」と「うるさい静かにしろ」「とっと歩け」と。
それを見送るガノスさんは嘆息し。
地球人の難民達と、カメラ付きゴーグルをつけた人やエアディスプレイ画面を向ける人に、死線を向けるのだった。
『…………………』
私は一呼吸を置いてから。
『――さて、何か聞きたいことは、あるかな?』
と口を零すのだった。
「……」
「……」
「……」
これには、何も言えなくなる地球人の難民達。
私は嘆息し、
先ほどの行いが一応の成果があったことを認め、次に移ろうとしたら。
――その時、1人の少年の手が挙がるのだった。
『では、ないということで、次にくじ引きに入らせて――何かな? 地球からの少年?』
「俺も見てみたいです」
『? なに?』
「魔法を!」
「おいっ!」
「ちょっと!」
「別にいいだろ!? あの時見ていたのはお前達だけで、俺達は話に聞いただけで、見ていないんだからさ」
『?』
それは、恵ケイのホテルで身を寄せ合っていた修学旅行生たちだった。
中には見ていない人達もいるのかもしれない。
スバルと子供達との喧嘩の現場を……。
当然、そんな事を知らないガノスさんは。
『……?』
となるばかりだ。
「ちょっとつまみだされるわよ!」
「すぐに謝った方が!」
「大丈夫だって! 俺に考えがあるからさ!」
『? ……』
「えーと……自分達は恵さんのところで身を寄せ合っていた修学旅行生で、そこにいるスバル君って人が、……ここにいる奴等と喧嘩したと、……後で聞きました!」
『……』
「……」
ガノスさんが振り返り、僕を見てきた。
「……」
「……」
自然、周りからの視線も僕1人に殺到してきて。
コクッ……と小さく頷いたんだ。
「……喧嘩したのね?」
「うん……間違いないです……やっちまいました……」
僕は、正直に語る。
これを聞いていたガノスさんは。
『こちらでも確認が取れた。……喧嘩というのは、起った事実みたいだな』
「……」
これには周りも信じられないとばかりに、顔にありありと出ていた。
「……」
「……ッ……ッ」
確信を得た少年は、前だけを見据えていた。
周りの子供達は、ハラハラドキドキしていた。
自然。
「おい、カメラ回せ。面白い事になってぞ!!」
カメラ付きゴーグルをつけた人が。
エアディスプレイ画面を向ける人が。
飛び交う無人航空機が。
上空を浮遊している宇宙船が、それを納める。
「……その当時、何があったのかな?」
「バカッ!! そこは聞くべきところじゃないでしょ!!」
「ムゥ……」
「……」
ガノス、ティフ、ガノス、無言のアイちゃんと述べるのだった。
ティフさんの言う事は、むしろ懸命だった。
だが、このガノスが尋ね返してしまった以上、全体の関心を買ってしまい、もう後には引けなくなっている。いわゆる墓穴を掘ったのだ。
「俺が聞いたのは、そいつがチアキさんと一緒に帰ってきて、なぜか、その棺桶の中に、恵さんのところの娘さんの遺体があった事だ!!」
『ほぅ』
と口を零すガノス。
チラッとアンドロメダ王女達の方を見て。
「……事実よ」
とデネボラさんが事実確認を取るのだった。
頷き得たガノスは。
『その話は、事実みたいだな……! ……で?』
「俺達はその頃、第3班で、荒れる河川敷にいたんだ!! 大人達に混ざって、土嚢を積んでいたんだ……!!
……で帰ったら、もう2人とも帰ってきていて……。
俺達は周りに促されて、足を運ぶと……。
……そこには、恵さんの亡骸が眠ってたようにあったんだ……!!
……。
えっ? 何だこれ? って思った……!?
恵は眠ったように寝てて、死んでた……。
……」
あの時の光景を思い出し、その少年の周りで、今にも泣きだしそうに悔やむ少女達。
『……』
「……」
少年は顔を上げて、言葉を続ける。
「後はみんなが、いや、主に女子が花を積んできていて、添えていた………………。
……俺達は知りたい!!
一体あの場で何があったのか!? 何であんないい子が死ななければならないのか!?
どうして喧嘩に発展したのか!? 魔法を使ったのはなぜか!?
どうして雲の上に、あんな激しい戦闘の様子が、目まぐるしく映し出されていたのか!?
じゃなければ、とても納得できない!!」
『……事実は?』
「全部事実じゃ!」
『……』
ちょっと目線を向けただけで。
今度は王女様自ら確認を取るのだった。
これには嘆息するガノス。
『――今確認を取った! 全部事実らしい!』
これには周りが、「おおおっ」と歓声の声を上げるほどだった。
『だが、この場で問い質すのは、いささか野暮ともとれるだろう?』
「うん……」
『そこでどうだろうか!? 聞けば君達は、スバル君達と同じグループのはずだ!』
「!」
『スバル君達と同じグループなら、将来有望株だ! ……君達グループは、くじ引きは行わくていい』
「えっ?」
「!」
これには周りも驚き得る。
「ちょっと何を勝手にッ!?」
怒声を挙げたのは、同じ3英傑の一柱ティフだった。
だが、それを手で制したのはガノスだ。
「……考えがあるっていうの?」
「……」
小さく頷くガノス。
「……」
あたしはそれを見て、考えて、身を引くのだった。
『……』
ガノスは振り返り、こう告げる。
『見たところ、君は、君達は、スバル君達と知り合いのようだ。……それは君の発言からも見て取れる!』
「……」
『何かに使えるかもしれない……私はこう思った! ……そこでどうだろうか!? 君達全員にホテルへの宿泊場所を提供するよう、こちらから呼びかけよう!』
「えっ?」
ザワッとこれには周りも驚く。
『そのホテルにスバル君達が行くから、後で問い質すといい、いくらでもね……。こちらとしても、これ以上場を濁したくない……ッ!! ……これなら君も、賛成できる……だろ!?」
「……」
これには少年も、なんとなく察し、「うん……」と小さく頷くのだった。
『フッ……どうやら決まりのようだね! …………………』
だが、ここで一考するガノス。
自らの考えを持ち出す。
(だが、ここで引き下がれまい……。こちらももう少し譲歩すべき……か?)
私は、「……うむっ!」と小さく頷いて。
『……』
「……?」
私は、件(くだん)の少年に振り向いて。
その少年は、自分の顔を驚いたように指さすのだった。
私は、小さく頷き得て。
察した少年が前に出る。
『……』
「……」
☆彡
再び、この場に代表の少年がご登場だ。
『えーと……僕は何を……?』
『気にすることはない、たった1つで終わる!』
『?』
『あの子の関心を買ったのは、君の魔法だ! 何でもいい、1つだけ披露してくれ!』
『1つだけか……』
僕は、その言葉を聞いて考えて、コクリと頷くのだった。
『……』
「…………………」
僕は難民達の前に出て、みんなの顔をよく見て、見回して。
『……』
「……」
そして、あの少年と顔を合わせて、「フッ」と笑みを浮かべる。
「……?」
その少年も、僕の視線に気づくのだった。
(1つだけ……なら! これきゃっない!!)
『会場の皆さん、今から1つだけ魔法を行います!』
「!」
その時少年が反応を示した。
『少し危ないんで……どうかそこを思い切り開けてください。……巻き込まれると大変危険ですよ!」
ザワザワ、ザワザワ
どよめきが周りで起こり、スバルの指差した方向を中心点として捉え、人垣が開けていくのだった。
そこで。
「こ、これくらいでいいんじゃないか?」
『いいえ、もっと開けてください』
「これくらい?」
『いえ、もっと』
「じゃあ、これくらいか?」
『いいえ、もっと』
「……」
『……』
「……」
『……』
そうして、危険を考慮した上で、巨大な円形の場を開けたのだった。
【――僕はここで、急遽予定を変更した】
【本来は、『重力魔法のガイアヴァリィティタァ』を唱えるはずだった……】
【僕にとって、始めた覚えた魔法であり、特別だから……――】
【でも、頭上で雷の力を感じたんだ。……それはほんの微々たるものだった。証拠も何もない】
【だから僕は、顔を見上げて確認したんだ】
『――雨雲か……』
【アンドロメダ星の空は、日中でも赤く、本来は白い雲も、赤く色づき桃色に見える事もある】
【だが、この時の雲は、どんよりとした雲で、なんか黒かった……】
【雨雲と思った僕は、使えるかもしれないと思い】
【ガイアヴァリィティタァを、危険と考えた】
『……』
前を向くスバル。
そして、壇上から飛び降りて、ズダンッと着地を決める。
「「「「「!?」」」」」」
【アンドロメダ星の重力は、この通り重い】
歩みを進めるスバル。
引き気味の顔で、道を開けていく難民達。
その口から呟きが零れる。
「今、凄い音がしたぞ……」
「足、大丈夫か……!?」
『……』
気にしないスバルは、前を向いて歩む。
【アンドロメダ星の重力は地球よりも重い……それがガイアヴァリィティタァで、どのように作用するのか未知数だ】
【安易には使えない……】
「おい、君、大丈夫か? ……!」
「……」
「そ、そうか……それならいいんだが……」
「……」
おじさんの質問に。
手を前に出して制し、笑顔で頷き得る。
心配事が消えたおじさんは、そのまま引くのだった。
僕はそのまま歩み進める。
【万が一もある、見栄でやってはいけないと踏んだんだ】
【しかもそれ行えば、この会場を貸してくれた星王アンドロメダ様のお顔に、大変失礼だからだ】
「……」
【不安は拭いきれない……】
【だから僕は、使用を断念したんだ】
【あの重力魔法の影響で、地面に大穴が空いてしまい……】
【後日、ここで試合を行う選手たちに対して、試合ができないとなれば、申し訳が立たない】
【だから、それはできない。試合に遅れが生じかねないからだ】
【相手からの見方も気になる】
【それは大変失礼な行為に当たるからだ】
『……』
「!」
「!?」
「……」
【ここで僕は、はるか頭上で流れる雨雲の様子を確認した】
【周りの人達も気になり、頭上の雲の様子を伺う】
【雨雲があれば、火雷を墜とせる】
【――それがスバルが下した総合的な判断能力だった】
『――今日は、もしかしたら、雷が落ちるのかもしれませんね』
「!?」
「ハァ~!?」
訳の分からない事を言い出す少年(僕)に対し、周りの人達の意見は、疑念だった。
「あぁ、あれか……なるほど……!」
周りの人達の意見とは対照的に、あれを喰らった事があるレグルス隊長は、何の事なのか察する。
そして。
ザッと僕はその場に辿りついた。
『『駆けよ稲妻! 轟け!』』
その時、上空の雨雲から雷光が駆け巡る。
『『火雷』ファイアサンダー(ピュールケラヴノス)!!!』
スバルが魔法名を唱えた時、スバルを中心点として置いて、魔力の粒子が回る、回る。
その魔力の回転は、周囲にいた難民達の顔を、グルグルと映していた。
そして、その雨雲の一点に向かって、周囲から雷光が駆け巡り、一点に集中し、落雷となって落ちる。
カッ
と突然目の前が真っ白になる。
瞬く間に、落雷が爆ぜて、大爆発が起こる。
ズドォオオオオオン
それは、瞬間的に空気が温められて、熱膨張を起こし、大気中の分子が臨界点を超えて、弾け飛んだ様だ。
それは、周囲の大気中の分子に伝わり、瞬間的に、物凄い力で圧し出された。
光と熱の化学反応。
それがまるで、爆弾が炸裂したかのような現象を垣間見せて、雷光雷熱となって、大爆発したのだ。
それは瞬間的に、スバルや周りにいた人達の顔を照らし出し。
押し寄せる爆発によって生じた衝撃波が、
まるで爆圧のように、周辺にいた人達を圧し出して、吹き飛ばしていった。
それはさながら爆風のようであった。
さらに――
『――『迸(ほとばし)れ』!!!』
瞬く間にスバルは、追加の呪文キーを唱えた。
落ちた先の落雷は、地面から、空中から、中空の一点に向かって、激しい電流が駆け巡りながら集まり、雷光雷熱の球体となった途端。
カッ、ズドォオオオオオン
と大爆発四散するのだった。青白い電流が駆け巡る。
それは辺り一帯を、照らし出すように、閃光が包み込む。
爆風と爆圧の衝撃によって生じた衝撃波が、まだかろうじて立っていた難民達を、軽々と吹き飛ばしていくのだった。
その光景はある意味で、予想以上の狂気さながらだ。
「うわぁあああああ」
「きゃあああああ」
爆風の衝撃波によって吹き飛ばされた人達は、周りにいた人達の背中からぶつかり、その衝撃で転倒していく。
落ちた現場には、砂煙が舞い上がり。
バリッ、バリッ、バリッと電気が駆け巡っていた。
恐怖にすくむ人々。
人々がその顔に浮かべるのは、驚きと恐怖と畏怖だ。
そして――
「――気をつけろぉおおおおお!!! 殺す気か――!!!」
「バッカやろぉおおおおお!!!」
「キャアアアアア」
「イヤァアアアアア」
上がるは怒声と悲鳴。
これにはスバルも。
「うっ……」
反省するのだった……。
「だって、やれって……」
これには対応に嘆き、悲しんでしまう少年。
そして、この注文を促した少年は。
「すげぇ……」
と零すのだった。
そして周りの子供達の反応は。
「デタラメだろあいつ、やっぱ……」
「うん……味方でよかった……」
爆煙が舞い上がる現場の中、バリッ、バリッと電流が駆け巡っていたのだった。
とアユミちゃん達の反応の様子は。
「「「………………」」」
その顔は驚きしかなく、前に覗き込むようにして、言葉を失っていた。
だが、ここで口が零れていく。
「どこかで見たような……」
「ええ……あれって確か……」
「あぁ、あたしがあの後、駆けつけた現場よね……」
「「……」」
「……恐いわあの子……上手く手懐けなきゃ……」
「「うん……」」
3人はその現場を見て、戦々恐々するのだった。
そして、クコンちゃんが。
「……あたし、あの子に喧嘩売るのよそう……」
「「……」」
「あんなのを頭の上に落とされたら……さすがに死ぬわ……」
「「……うん……」」
そのクコンちゃんの発言に、この2人もさすがに同じ思いを共有するのだった――
☆彡
【――その後は予定通り、世界保健機関(WHO)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)や医者たちなどが、くじ引きを行っていた】
【スバル達は壇上から降りており、必要な時、呼び出しがかかるまでは、一種の自由行動が認められていた】
スバルの足は、自然と恵ケイちゃんのパパさんとママさんの元へ進んでいた。
スバルの隣にいるのは、アユミちゃん、クコンちゃん、クリスティさんの3人だ。
その様子を壇上から見守るのは、L達だった。
「……」
Lはこの時、行きたそうな顔をしていた。
「行ってもいいのよ」
そう促したのはデネボラさんだ。
「!」
「フッ、こっちは心配がいらないからね。……でも、呼び出しがかかったら、すぐに戻るのよ!」
「うん!」
シュン
とその場からLは、テレポート(チルエメテフォート)使用し、この場から消えるのだった。
その様はまるで、瞬間移動のようだ。
「……とレグルスはどうするのじゃ!?」
「……俺はどうせ見えませんからね……。……それにたくさん手にかけてしまった……」
俺は自分の手爪を見た。
思い出すのは、あの時の人殺しの現場だ。
「人の肉を切った感触が残っているうちは、まだ、俺の罪は消えない……」
「……それはわらわもじゃ……!」
「……」
レグルス、アンドロメダ王女、デネボラとその罪の意識に苛まれ、その口から零すのだった。
空を見上げたデネボラさんは――
「――今日の雨は、小振りそうね……」
と零す……。
【――今日の雨は小振り】
【その言葉の真意は、今だけは、亡くなった人達も、この難民達の大移動を見て、少しは溜飲が下がる思いだった……】
【死者が願うのは、今生きている人達の、何よりの幸せなのだから……――】
☆彡
シュン
といきなりLが、スバルの近くに現れた。
それはLのテレポート(チルエメテフォート)によるものだった。
これにはスバルも。
「うわっビックリした!?」
いきなりLが現れるものだから、こっちはビックリだ。
「どうしたのスバル君?」
「うん、いきなりLが現れてね……」
「僕もいていい?」「へぇ~……」
とLが口を零したのと同時に。
アユミちゃんの声が上がるのだった。
「もちろんだよ」「Lがね……って」
答えるスバル君に同時に。
遅れて反応するアユミちゃん。
「うんよろしく」「で何でいきなりいるの!?」
挨拶を返すLに同時に。
反応を返すアユミちゃん。
「じゃあ、一緒にいこうか!」
「うん!」「……ついていけない……ハァ……」
ほぼほぼスバルとLの会話で、見えもしない聞こえもしないアユミちゃんは、ただただ1人嘆くのだった……。
そこへ肩を、ポンポンするのは、クコンさんとクリスティさんの2人だ。
「!」
「同情するわ……」
「あの子が特殊なだけよ。あたし達が正常だから……」
「うん……」
見えもしない、聞こえもしない、クコンちゃん、クリスティさん、アユミちゃんの3人は、なぜか親睦が深まるのだった。
だがこの時、その周りにいた難民達は、思い切り引いていた。
無理もない。あんな雷を墜とされて、独り言を呟いているのかと思えば、とても、近寄りがたい雰囲気を醸し出していたのだから。
「おい? あれ?」
「ええ」
「……」
【――思い切り、人垣が開いていく……。それも無造作に、勝手に……】
「ヒソヒソ」
「あの子、ヤバくない?」
「ヤバいって絶対……」
「あんな見た目して、実は、宇宙人じゃないの?」
「えっやっぱりー!?」
「実はそうなのよ。見たでしょあれ!? 絶対あの子ヤバいって……」
「いけなーい!! 騙されるところだった!!」
「そうよねあんな見た目をして、子供の容姿だから、危うく騙されるところだったわ!」
「……ッ」
【無辜の民達は、地球からの難民達は、一様に、その少年の存在に恐れを抱いていた】
【誰だってそうだろう】
【自分達とは違う、力を持つ者に対して、忌避感を覚えるものだ】
【それは自己防衛本能に他ならない】
【少数派なら黙って、遠くから伺うだけだが……】
【これだけ集団になって集まっていれば……】
「……」
(こっ……こんなはずじゃなかったのに……、……何で……ッッ)
【嘆き悲しむ少年】
【急な疎外感を覚える】
【世界から弾き出された、1人ぼっち……】
【今までの自分の努力は何だったのかと……自分に対して問いかけて……疑いたくなる】
【そして、これじゃあまるで、地球人たちの仲間の輪からハミデタ、異分子じゃないか、ハハハハ……】
「……ハァ、またか」
「?」
「……」
【顔を上げる少年、この感じの感情は覚えがあった……】
【そう、忘れもしない、あの日……、クラスのみんなから、仲間外れにされた感じだ】
【あの時も、急に仲間外れにされて、虐めにあって、物を投げつけられて、殴られて、蹴られて、部屋の隅っこで、疎外感を覚えていた少年……】
【それはまただった――】
「……ッ……ッッ……」
「スバル、大丈夫?」
「……うん。大丈夫だよ」
「……」
「……大丈夫だから……」
【誰だってそうだ】
【突然、目に見える、聞こえる人が現れたらどう思う!?】
【おかしな子だと感じ、不信感を抱き、仲間外れにし、集団の輪から外さないだろうか……!?】
【自分達とは違う、それは差別だ、軽蔑だ、侮辱だ】
【だから面白がって、反応を伺う】
【虐める、けなす、嘲笑う、侮辱する、話のネタにする、悪戯する、物を奪う、または壊す】
【周りから見たら、うっぷんを晴らす、格好の標的だった】
【だから、僕は、ここにきても、身に覚えがあったんだ……】
【ここでも、またなのだ……!!】
【以前は障害者で仲間外れにされていた……】
【クラスの中でもネタにされ、笑いものにされ、持ち物を奪われて、隠されたり、壊されたりもしたっけ……】
「フッ……」
「ヒソヒソ、ヒソヒソ」
【今度は、宇宙人達と関わった事で、魔法を覚えたことで……】
「……ッ」
【証拠を掴まられて……】
【……でもそんな中でも、思い出すのは、亡き親戚の兄貴の言葉だ――】
『無視しろスバル。そんな奴等とは関わるな』
『……』
『こちらがそれに対して、反応して突っかかれば、相手は面白がって、また集団でお前を標的にする』
『……どうしたらいいの?』
『完全シカトだ!! 無視だ無視!!』
『……』
『シカトを決め込んでいれば、いつかは相手の興味も失せて、別の誰かに移るって……! あいつ等は集団じゃないと、自分が強くなったとしか誤った認識ができないんからな……!』
『……無理だよそんな事……』
『じゃあ、目上に人に頼んで、どうにかしてもらうしかないな』
『目上の人?』
『先生だ先生! もしくは相手の嫌がる事をするか! 証拠を掴んで、真実を解き明かしていくかだ』
『真実……!?』
『……お前はまだ白い、そのまま白にいるんだぞ……! いつか、きっと、お前の理解者が現れてくれる』
『……うん……』
僕の頭の上に乗せられた手は大きくて、それは親戚の兄ちゃんの手だった。
『……俺のように、孤独な道を歩まないでくれよ』
『?』
『……フッ、何でもない……』
【兄貴は、僕にとって、良き理解者だった。自分も、同じ生い立ちだから……】
【だから、この時僕は、周りの言葉を無視することに決めた】
「……」
「ヒソヒソ」
僕は目線だけ、その人達に向けた。
(……人を侮辱するだけで、何もしない奴……)
【僕はその人達から視線を切り、前に向いて歩いた】
(関わらないようにしよう……。真実を解き明かす……! ……でも、その前に、会っておかないといけない人がいる……!)
【人は、自己主張の強い生き物だ】
【それは集団として集まった時、自分の意見に肯定として意識表示された時、安心感を覚える】
【自分の意見が正しいんだと……】
【それが集団の危うさだ】
【真実の道を求めるなら、周りの意見に流されずに、その目標に向かって慢心するしかない】
【自分の信じた道を信じて、化学でもそうだが、最初は誰も信じてくれないものだから】
【人は、自分の価値観しか信じず、物事の理解を見ていない】
【理想と真実は相反することもある。……だが、もしも仮に、その真理に至ったなら……――】
【人は、その認識の理解を超えて、その急激な進歩についていけるはずだ】
【それが、これから先、少年が歩んでいく道の道理なのだから……】
「……」
「! ……」
【――そして、僕達は、恵さんのご両親と合流するのだった……――】
TO BE CONTINUD……