150章 撮影終了
水着撮影は三時間に及んだ。複数の写真を撮るということもあって、すぐに終了することはなかった。
「ミサキさん、今日はありがとうございました。こちらの思っていたよりも、はるかにいい写真を取れました」
「写真集は売れそうですか?」
ミサキは一般人であって、アイドルではない。アイドルですらない女性の水着写真を、購入したい人はいるのだろうか。
「ミサキさんの水着撮影を宣伝した直後に、30万部の予約をいただきました。1冊10ペソなので、300万ペソの売り上げを保証されている状態です」
撮影をする前から、30万部の予約はすごい。
「ミサキさんの写真集は、女性からの注文が非常に多いです。7割くらいは女性ではないでしょうか」
女性が女性の水着写真を購入するのか。ミサキは大いなる違和感があった。
「一部の写真には、サインを同梱することになっています。ミサキさん、サイン協力をお願いします」
サインをつけることによって、プレミア感を演出する。商売をする人というには、いつの時代になってもあざとい性格をしている。
ミサキのおなかは、空腹のサインを発する。先ほどまでの緊張は、遠くに消えていくこととなった。
「ミサキちゃん、タイミングばっちりだね」
アヤメに茶化されたことで、顔は真っ赤になった。
「アヤメちゃん、からかわないで」
「ミサキちゃんのおなかの音を聞くと、ほっこりとした気分になれる」
ミサキが顔を真っ赤にしていると、シズカから食事案内をされた。
「アヤメさん、食べ物を準備しています。しっかりとお食べください」
「シズカさん、ありがとうございます」
シズカの視線は、シノブに向かった。
「アヤメさんにも、昼食を用意しています」
「シズカさん、昼食は何?」
「納豆、野菜の味噌汁、ほうれんそうのおひたし、きんぴらごぼうだよ」
ミサキの家に来たときよりも、さらにヘルシーなメニュー。アヤメは顔色を維持するために、徹底的な食事管理をしている。
ミサキのおなかは、二度目の空腹サインを発する。一度目と比べると、時間は五倍になっていた。一刻も早く食べないと、空腹で倒れることになる。