14話 緊急事態
親玉ゴブリンを討伐したケイたちの所に顔を真っ赤にして激怒したアルフが戻ってきた。
「貴様らっ・・!!!なんで俺より先に親玉ゴブリンを討伐した!!!見つけ次第俺に報告しろと言っただろうが・・!!!」
ミラ班長が横になりながら、焦って答えた。
「す・・すみません・・。村人の命が危なかったので・・。一刻も早く討伐するべきだと・・判断しました・・。」
「ふざけるな・・!!!中隊長に昇格するのは俺だ・・!!成果は俺の成果にさせてもらう!!!」
すると、マリーがブチ切れた。
「おいおい!!ワレ何言うとんねん!!ウチらの手柄やろが!!ワレなんかに中隊長は務まらんわ!!」
なんだか、やばい雰囲気になってきた・・。ミラ班長も重症だし・・。揉め事は避けたいな・・・。
俺はマリーとミラ班長に小声で言った。
「争いごとは避けましょうよ・・・。この成果はアルフにくれてやりませんか・・?」
ミラ班長は了承したが、マリーが納得しなかった。
「ふざけんなや!!ウチらの手柄をなんであの無能にあげなあかんねん?!!」
「お前らはここで皆殺しにして、魔物にやられたことにする・・!!」
アルフがそう言いだした。こいつ・・、そこまでやるか普通・・?
「ちょ、それはさすがにないですよ・・!!俺達おなじ1番隊じゃないですか・・?」
「黙れ・・!!俺の昇格を邪魔する奴は全員敵だ!!殺す!!」
マリーもアルフに言い返した。
「おう!!やってみろや!!やれるもんならな!!」
やばい・・やばい・・やばい・・!!
アルフは悪い笑みを浮かべた。
「フッ・・。馬鹿どもが・・。」
ヒュッ・・!! パリンッ!!
アルフはいきなり、重傷で倒れているミラ班長に液体の入った瓶を投げつけた。瓶が割れ、紫色の液体がミラ班長にかかる。
「・・・うわっ・・!!」
「な・・何を・・!!」
すると、アルフは笑みを浮かべ、叫んだ。
「1番隊!!撤退するぞ!!」
「オオオォォォォォォォオオオ!!!!!!」
そう言い、1番隊の皆は、一斉に退却してしまった。
取り残されたのは、俺とミラ班長とマリーの7班だけ・・。
俺はミラ班長にかけられた謎の紫色の液体が心配になった。
「ミラ班長・・!!大丈夫ですか・・?」
「ええ・・。特に異変はないわ・・。」
「あいつらなんやねん!!デカい口しばくと思ってたら、あっさり逃げやがって根性なしが!!」
だが、その時だった!!
森の方からガァアアアアアアア!!!!と大声が聞こえた。
「この声ッ・・!!魔獣よ!!」
魔獣!!なぜだ・・?そうか・・!!このミラ班長にかけられた紫色の液体の匂いにつられて・・。
「逃げてッ・・!!2人とも・・!!私にかかっている紫色の液体の匂いにつられて、魔獣たちが集まって来てるの・・!!」
いや、さすがに置いていけないでしょ。さすがの俺でも・・。
「大丈夫ですよ・・。魔獣を返り討ちにして、3人で城に戻りましょう。」
「厄介なことになったな・・。来るなら来いや!!」
俺とマリーは魔獣が出てくるのを待ち構えた・・。
ガサガサガサッ!!
魔獣共が出てくると、俺達は絶望した・・。
多い・・いくらなんでも多すぎる・・!!
魔獣共の数は、裕に500体を超えていた・・・。
「あんな数・・。全滅よ・・!!私はいいから2人とも逃げてッ・・!!」
くそっ・・!!数十体くらいなら、何とかなったかもしれないが・・。500体だと・・?
でも、いくら異世界で、出会ったばかりの人だとはいえ、見捨てることはできないと俺は思った。
俺は横のマリーの方を見る
「マリーッ!!ミラ班長を抱えて、城まで逃げろッ!!俺がいい感じに時間を稼ぐ・・!!」
マリーにはいつもの生意気な覇気がなく、呆然としていた。
「・・・っざけんなや!!なんでウチがこんな目に合わなあかんねん・・!!」
・・え?
「は?なに言ってんだよ・・!!協力してくれ・・!!マリー!!」
しかし、
「阿保かいな!!こんなところで犬死なんてごめんやわ!!」
そう吐き捨てると、マリーは空へ飛びあがり、光のスピードで城の方向へ飛んで行ってしまった。
「マリィー----!!!!」
アイツマジか・・・。嘘だろ・・・。俺達を見捨てやがった・・。
俺一人では、ミラさんを守りながら城まで逃げるなんて無理だ・・。
ミラ班長は折れた肋骨を押さえ、必死に言葉を発そうとしていた。
「・・・ケイ・・・。あなたも逃げて・・・。早く・・。」
しかし、もうすでに、360°魔獣共に包囲され、逃げ道がなくなっていた。