2話 快楽殺人鬼のお姉さん相手に初めて能力を発動するが・・・。
衛兵の人が叫ぶ。
「お兄さん!!そいつがここらへんの連続殺人鬼、ジョーカーです!!」
う・・嘘だろ・・!!こんなに早く出くわすことがあるか・・?!!このお姉さんが連続殺人鬼・・?!!
衛兵の人が剣を抜いた。バカでかい市長は棍棒を持ってきた。
「兄ちゃん。下がっておれ。ここはワシらに任せておけ。」
ジョーカーと言われる女は、市長と衛兵を見て笑った。ナイフをクルクル回転させている。
「あらあら、今すぐにでも逃げ出した方がいいわよ。じゃないと、私に遊ばれて、地獄の痛みを味わう羽目になるわよ。」
俺は背筋が凍った・・。この女・・異常だ・・。
「抜かせ!!!」
市長がジョーカーに飛び掛かった。「ふん。」
グサッ!!
市長は腹を刺され、吹っ飛ばされた。
「ぐふぅ・・・!!」
俺はその光景を見て、唖然としてしまった。
なんだ・・!!刺す動きが見えなかった・・!!速すぎる・・!!
市長は、腹を押さえて血反吐を吐いていた。
「さぁ、どうするの?」ジョーカーはニヤニヤしながらこちらを見てきた。俺は恐怖で体が震えた。
ダメだ・・・勝てる気がしない・・・!
市長は腹を押さえて立ち上がった。
「おい、衛兵殿・・・この兄ちゃん連れて逃げろ・・時間はワシが稼ぐ・・。」
衛兵は剣を出していたが、俺と同じように恐怖で震えていた。
ジョーカーは今度衛兵の方を向いた。
「あれ?あなたも来るの?お腹刺されたい?」
ジョーカーがゆっくり、衛兵と俺の方に歩いてくる。
ガッ!!!
市長が棍棒を振りかざし、ジョーカーがナイフで受け止めた。
「馬鹿者!!さっさと行け!!」
市長が顔を赤くしてそう言うと、衛兵さんは俺の方を向いて、
「い、行きましょう!!お兄さん!!こっちです!!」
そう言って、俺と一緒に逃げ出した。
だが、シャキン!!!シャキン!!!
俺は振り返ると、市長が3分割されていた。当然息絶えている。俺は固まった。
「あらぁ?時間が稼げなかったわね。でも、そのおかげで早く楽になれたわね。この人は。」
衛兵は震えていた。怯えているのか、怒っているのか、両方だろう。
「この、異常者め!!俺が多々っ切ってやる!!」
俺も・・俺も戦わないと・・なんのために今まで少林寺拳法やってきたんだ・・!!
俺も前に出る。
「おい、アンタは逃げなよお兄さん。」
「いいや、ダメです。衛兵さん。俺、こう見えても少林寺拳法全国優勝しました。」
すると、ジョーカーがまた笑い出した。
「フフフ。いいねぇ君たち。なんです?ショウリンジケンポウ・・?ですか?楽しそうですねぇ・・」
非常に不気味で恐ろしい。でも、市長が簡単に殺され、衛兵さんはガチで怒っている。俺も、生命が脅かされていて興奮状態に陥り、臨戦態勢に入っていた。なぜか、使ったこともないのに能力を発動できた。
「少林寺拳法、演武!!!」
すると、いきなり俺のパワーがみなぎってくる。今までに感じたことない力だ!!空も飛べそうなくらい凄まじいパワーだ!!
それを見て、ジョーカーは顔を赤く染めていた。
「はぁ・・やっぱり。来てよかったわぁ。やっぱりあなたなのね?」
何を言っているのかは分からないが、危ない状態に陥っている。衛兵さんは俺の急激なパワーアップに驚いていた。
「え!?何これ?!兄さん?!いつの間にこんな力を」
俺は拳に力を込める。力がどんどんみなぎっていく。体中にエネルギーが流れ込んでいくような感覚だ!!
この能力名、演武には相手と自分の戦力比を6:4にすることができる。つまり、相手が強ければ強いほど、自分もパワーアップできるのだ。ただ6:4になる訳ではない。10回相手と戦った場合。4回は俺が勝てるということだ。
「はははは!!いいわぁ君。名前は?」
「ツルギ・ケイ」
「そう。ケイちゃん。私はジョーカーと呼ばれているけど、本当の名前はアイラって言うの。フフフ・・・」
アイラは襲い掛かかって来た。俺は少林寺拳法の構えで待つ。ガッッ!!! 激しい金属音が鳴り響く。俺はアイラの攻撃を防いでいた。なんて重い攻撃なんだ・・・!!
「ふーん・・・私の攻撃を耐えられる人初めて見たわぁ。ま、まだ本気じゃないんだけどね?」
アイラは両手でナイフを高速で振り下ろしてくる。俺は、素手で弾くので手から出血して痛い・・。でも、手を緩めればナイフで切り裂かれてしまう・・。
「あぁ・・!!素敵・・!!いいわぁ・・!!もっと受け止めて・・!!」
「・・ぐっ・!!くそっ!!」
俺はもう限界だった。このままじゃ殺される・・・。
横から衛兵さんがアイラに切りかかった。しかし、軽々と避けられてしまった。そして、そのまま首を切られた。
血が噴き出し、その場に倒れこむ衛兵さん。俺は、頭が真っ白になり動けなくなった。
え・・・?なんか俺にナイフ振りかざすときより数倍速かったよね・・?
衛兵さんは倒れたまま動かない・・。
「ごめんなさいね・・。彼に興味があるから、邪魔者入らないの。」
アイラは冷たい目で死体と化した衛兵さんを見ていた。そして、ゆっくり目線を動かし、俺の方を見た。
「ケイちゃん・・・私と一緒に来てくれる?」
「・・・・・・」
俺の集中力は切れてしまった。っていうかさっきまでちょっとだけやり合えていたのが奇跡みたいだ。本来俺は普通の高校生。殺し合いなんて見たこともない。目の間で人が死ぬのも初めてだ・・・。異世界ものアニメでは、最初からチート能力で敵を圧倒するものが多いが、リアルならそんなことありえない。俺が必死に練習してきた少林寺拳法なんて本当の殺人鬼には通用しないんだ。
俺がボーッとしていると、アイラが近づいてきた。
「く・・来るな・・!!」
俺は震えながら言った。すると、アイラは何かブツブツ呟いていた。
「あなた、まだ若いじゃない・・。未成年だよね?ちょうど私とは10歳くらい差があるかしら・・。素敵・・。」
「は・・・離せ・・・!!」
アイラは俺の腕を掴んでくる。
「ねぇ、お姉さんといい事しましょ?」
「や・・・やめろぉ!!!!」
俺は全力で抵抗した。だが、ビクともしなかった。
グサッ!!
アイラに、腕を刺された。血が噴き出る。
「もう諦めてしまったの?中途半端に抵抗する悪い腕はいらないのよ。切り落としちゃっていい?」
ガクガク震えるのが分かった。腕もめちゃくちゃ痛い・・。
「ま・・待って・・」
俺は力を入れるのをやめた。「あら、やっとわかってくれたのかしら?」
アイラが俺の腕からナイフを話した瞬間俺は、尻餅をつき、出血した腕を押さえた。
「ケンちゃん・・。私の家までいきましょうね?私、一人暮らしだから・・。」
どうしよう・・。ついて行ったらやばいことになる。かと言って、ここで抵抗しても殺される・・。くそっ・・男のくせにビビって泣きそうになってんじゃねえよ俺・・。
俺はなんとなく震えた声で、「わ、わかりました。」と言ってしまった。すると、アイラは俺を抱きしめて、首元にナイフを突きつけながら耳元で囁いた。
「本当に分かったのかしら?こうやって命を握られることで初めて分かることなのよ。」
その後、俺の耳をべろっと舐めた。
俺は、恐怖で体の震えが止まらなかった。やっぱり、ついていきたくない・・。
バッ!!
俺は一瞬の隙をついて、横の壁をぶち破り、外に逃げた。