301章 テオス登場
のんびりとしていると、目の前に何かが現れた。メイホウかなと思っていると、まったく違っていた。
「アカネさん、お久しぶりです」
わずかな期間しか経っていないのに、はっきりと老化している。病気に詳しくないものであっても、死に近づいているのを悟った。
「テオスさん、療養しなくていいんですか?」
「療養したとしても、長くは生きられません。あの世に旅立つ前に、アカネさんに会いたくなりました」
テオスは口元に手を当てた。
「テオスさん、無理をしないでください」
「ちょっとくらいならいけると思ったのですが・・・・・・」
体をワープさせるのは、かなりの力を使用する。通常時は問題なくとも、死の迫っている人間には厳しい。
「テオスさんが死んだら、たくさんの方を苦しませることになります。一日でいいので、長生きをしてください」
ソラの悲しむところが、はっきりと浮かんできた。
「不自由な生活を送るくらいなら、あの世に行ったほうがマシです」
テオスの思考は、末期の人間と似通っている。好きなことをやり終えることで、死への未練を
ちょっとでも減らしたいという思惑が働いている。
テオスは弱々しい声を出す。
「街のことが一段落したら、新しい依頼を受けてほしいです」
「新しい依頼?」
「酸素村で魔物が暴れています。魔物を退治していただきたいです」
「酸素があれば、問題ないような気がしますけど・・・・・・」
空気のないところは生きられなくとも、酸素たっぷりなら生きられるはず。アカネは率直な疑問をぶつける。
「酸素たっぷりなところはダメですか?」
「生物の体は、酸素30パーセント以上のところでは生きられません。酸素濃度が低すぎる場所はもちろん。酸素濃度の高すぎるところもダメです」
生物の体はいろいろと複雑だ。融通がきけば、もっと生きやすくなる。
「私たちの力では、酸素村の魔物に太刀打ちできません。超能力をお持ちしている方に、お願い
するしかありません」
「空気のないところで生きられるけど、酸素濃度の高いところで生きられるのかはわかりませ
ん。返事は保留とさせていただきます」
「わかりました。問題なければ、魔物退治をお願いします」
テオスは最後の力を使い果たしたのか、体の力をすべて失った。
「テオスさん、一緒に街に戻りましょう」
アカネは超能力を使用して、自分の体、テオスの体をワープさせた。