春
他愛のない話をしながら歩いていると、わたしたちは会場に到着した。
もうそろそろ式が始まる時間だ。
(陽菜さんともっと話したかったな……)
そんなことを思いながら二人で会場の中に入っていく。
ーー二時間後
「サークルのパフォーマンス凄かったですね!」
入学式会場を後にしながら、わたしが興奮したように言う。
「そうですわね!」
陽菜さんも落ち着いて見えるが、なんとなく少し興奮しているようだった。
「…………」
少し沈黙が流れたと思ったら、陽菜さんが口を開いた。
「そういえば彩花さんはどうしてこの大学に入学されたのですか?」
「え?」
急な質問で驚いた。まさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなかった。
「あっ、いえ少し気になっただけで…… 失礼だったでしょうか……」
「いえいえいえ! ちょっと驚いただけで!」
わたしは首をぶんぶんと横に振り、入学理由を話す。
「そんな大した理由ではないんですけどね。ここの大学が就職に有利だって聞いたので。それでここの大学に決めたんです。」
「そうなんですね! 今から将来のことをお考えになってるなんて素晴らしいです!」
「いやいや、そんなことないですよ! 陽菜さんはどうしてこの大学に?」
「えっと、わたくしはお母様がこの大学にしなさいと……」
(お嬢様にありそうなご回答!!)
そんなことを思っていると陽菜さんはこう続けた。
「お母様がこの大学で生涯の伴侶を見つけてきなさいと……」
「ん?」
わたしは混乱した。
「は、はんりょ?」
陽菜さんは少し照れたように「はい」と言う。
(待って待って照れるな照れるな。ここ女子大だよね?どうやって男の人を見つけ…… はっ!! まさか……き、教授を狙ってるのか!? 教授なら男の人いるらしいし…… うん……そうに違いない)
「陽菜さん…… わたし応援しますね!!」
そう言うと「ありがとうございます」と秋桜さんが優しく微笑む。
「ではわたくしと結婚しましょう」