109章 コマーシャルの依頼をされてしまった
1日20000キロカロリー生活を始めてから、1ヵ月が経過しようとしていた。
大量に食べ続けているのに、体重に変化は見られなかった。現実世界の体であったなら、1ヵ月で20~30キロは増えていた。
ロールパンを口に運んだ直後、ドアをノックされる音がする。ミサキは5個のパンを食べてから、扉のほうに向かった。
扉を開けると、とっても美しい女性が立っていた。肌の水分量からすると、年齢は20前後であると思われる。
顔立ちがいいだけでなく、スタイルも抜群だ。こういったタイプの女性なら、グラビア、美女オークションに出られそうだ。
「こんにちは・・・・・・」
「ミサキさん、こんにちは。雪見店のサイトウといいます」
女性は財布から名刺が登場。名前を確認すると、サイトウハルカと記されていた。
話をしているうちにも、お腹は空いていくことになる。ミサキは知らず知らずのうちに、パンに手を伸ばしていた。
「おなかを満たしたいので、パンを食べてもいいですか?」
サイトウは苦笑いを浮かべる。
「どうぞ、食べてください」
ミサキは10個のパンを、2分足らずで完食した。女性はあまりのスピードに、目が点になっていた。
「噂には聞いていたけど、すさまじい食欲ですね」
「これだけの量を食べても、30分~1時間後に空腹です」
ロールパン15個程度では、すぐに腹ペコになる。から揚げ、餃子などを追加することで、空腹になるまでの時間を伸ばしたい。
「サイトウさん、何か用ですか?」
「知名度が非常に高く、人気のある人に、店の商品を宣伝していただきたいと思いまして・・・・・・」
「店の宣伝?」
「はい。当社の商品を食べたあと、おいしいといっていただく仕事です。ミサキさんの食べている様子、おいしいという言葉をテレビで流します」
「コマーシャルに出演するということですか?」
「はい。その通りです」
ミサキの顔が曇った。
「コマーシャルに出るのは・・・・・・・」
一般女性として生きてきたため、コマーシャル出演は頭になかった。
「ミサキさん、出演していただけませんか?」
「すぐに結論を出せないので、1週間後に来ていただけますか?」
「わかりました。ミサキさんの出演を楽しみにしています」
サイトウと呼ばれる女性は、深々と頭を下げる。一つ一つの仕草に対して、人間としての上品さを感じた。