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「隼くんって、不思議な子ね……。」
2人でお粥を食べて、菜摘さんが少し落ち着いた頃。
僕が昨日買ってきたアイスを食べながら、菜摘さんが唐突にそんなことを言った。
「不思議ですか?」
「うん。小学生なのにすごく落ち着いてるし、大人みたいにしっかりしてる。だけどたまに元気で無邪気な子供らしさを出すこともあって、可愛い弟みたいでもある。……けど、さっきみたいに……お父さんみたいな包容力もあるし……本当に不思議。」
「……僕はそんなにしっかりしてませんよ。」
「してるよ~~。今まで見てきた小学生の中で一番。」
「……そんなこと……」
菜摘さんが僕を褒めてくれる度に、僕の鼓動は速まるばかり。
まるで耳から脳を通って、全身の血管へその甘くて気恥ずかしいような感情が送られていくように…
僕の全身を、その細胞の一つも取り零すことなく、淡い色で少しずつ塗り潰していくように…
今まで感じたことのない嬉しさがこみ上げて来る。
次の言葉に窮すること。
こんなことも、今までは一度もなかった。
だけど菜摘さんを目の前にすると、どうしても自分の言葉を頭の中で一度推敲してしまう。
変なことを言いたくない。引かれたくない。
そしてそんな気持ちが増せば増すほど、脳の回転と心臓の動きが轟き合うのだ。
この不思議な気持ちは、何なのだろう。
どうして菜摘さんの前では、普段の僕じゃいられないんだろう。
その答えはきっと、菜摘さんが知っているはず……
僕はそう思って、夕日に反射する橙の瞳を向けて僕の言葉を待っていた菜摘さんに聞いてみることにした。