6
「せっかくだから、隼くんも一緒に食べようよ。」
「少しだけ食べます。量はそんなに多くないので、菜摘さんの分が足りなくなったら大変ですし…。」
「心配しないで!さ、食べよ食べよ!」
「あ、取り分けますよ!」
「ありがとう。…あ~いい香り!美味しそう!」
「ありがとうございます!ぜひ食べてみて下さい。」
「じゃあ早速……頂きます!」
「頂きます。」
リビングのテーブルに、向かい合って座る2人。
唇に近づけるだけで熱いスプーン。
火傷しそうなその熱は、どこか僕の心と一致した。
「……どう……ですか…?」
一口食べた菜摘さんが、まるで像にでもなったかのように動かない。
しかし目だけは潤々と動き出している。
「……菜摘さん……?美味しくなかったですか……?」
お粥を作るのは初めてではない。
だから、大きな失敗さえしなければそこまで不味くなるとは思わなかったけれど……
口に合わなかったのかな。
そんなことを考え、少し焦っていたとき……
「……美味しい……」
沈黙を破ってそう言った菜摘さんの目から……
ポロポロと涙が溢れていた。