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「菜摘さんが作るお粥は、いつもフライパンで煮るんですか?」

「そうよ。隼くんはちゃんと鍋で煮るの?」

「そうですね。フライパンで作るのは初めてです。もし失敗しちゃったらごめんなさい。」

「大丈夫よ、それでも食べるから。」

「じゃあ益々失敗できないですね。菜摘さんに早く元気になってもらう為に作るのに、失敗なんかしちゃったら……」

「フフっ。隼くん、本当に優しいのね。」


キッチンとリビングをつなぐカウンターの椅子に頬杖をついて座っていた菜摘さんの手が、僕の頭に優しく触れた。


「……そんなこと、ないです……。」


菜摘さんが僕の頭を撫でてくれるのは初めてでは無いのだけれど、最近はどうしてか、触れられる度にそこに全ての神経が集まるような感覚を覚える。

その手の温もりか、僕の神経の過剰反応か、もしくはその両方か……。

まるで脳に暖かな風が優しく吹き込まれたように、頭がボーッとしてしまう。

たった体の一部同士が触れ合っているだけなのに。

身に纏う現実の空気を意識しながらも、首より上だけは夢の空想に痺れているようになってしまうのだ。

そして菜摘さんの手が少しずつ動く度に、その微かな移動でも、僕の頭上に集まる神経も一緒になって騒ぐのだった。


フライパンの中で蒸される米の音。

頭上から聞こえる換気扇が回る機械音。

僕の頭を現実に引き戻した2つの音と同時に、菜摘さんの吐息が……

吐息だけが、この静かで煩い空間に響いていた。

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