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「隼くん、全部食べてくれたんだね!」
「はい…気づいたら食べちゃってました。ごめんなさい…」
「謝る必要なんてないよ!?むしろ、沢山食べてくれたから嬉しいの。」
「僕も嬉しかったです。あの、わがままかもしれませんけど……もしよかったら、また菜摘さんの手作り食べたいです。」
「わ、わがままじゃ…ないよ……!もちろん!作るよ!隼くんのためなら…!」
「本当ですか?ありがとうございます!楽しみにしてます。」
僕は菜摘さんに甘えている……
不意にこのときそう自覚した。
だけど、その甘えの気持ちはどこか心地よくて暖かくて、とても安心できるからこそ。
僕の甘えを受け入れてくれる菜摘さんを、心から信頼しているのだと自分で分かった。
「……菜摘さん、本当に大丈夫ですか……?」
僕の隣に座る菜摘さんが、グッタリし始めた。
エアコンの効いた涼しい部屋なのに、菜摘さんの額には汗で濡れた前髪が張り付いていて、顔を赤くしながら息を深く吐いている。
「菜摘さん、寝たほうがいいですよ。あと体温測りましょう。」
「ごめんね隼くん……大丈夫だから……」
「そうは見えないです。無理しないでください菜摘さん。……ベッドまで歩けますか?」
「ありがとう……」
フラフラと立ち上がる菜摘さんを、僕は咄嗟に抱き止めた。
そのままベッドまで肩を支えながら歩いた。
「……ほんとにごめんね隼くん……」
呼吸を荒くしたまま、ベッドに倒れ込むように寝た菜摘さんが言う。
「大丈夫ですよ、気にしないでください。」
僕はそう言いながら、菜摘さんが教えてくれた救急箱の中から体温計を取り出した。