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「オイ!何騒いでる!」
僕たちが2Rの入り口付近で小競り合いをしていたのが担任の先生に見つかった。
先生の大声に一瞬みんな怯んだが、すぐに教室の外にいた5人が口々に主張し始めた。
「先生!隼が、ここに昭恵さんを閉じ込めようとしてます。」
「それで俺ら、昭恵さんを出してあげて下さいって言ってたんです!」
「でも隼は鍵をかけて絶対に昭恵さんを外に出そうとしませんでした。」
「隼は多分、この教室で二人きりになって、昭恵さんの嫌がることをしようとしてたんだと思います。」
「……何?隼……お前出てこい!」
5人の主張を聞いた担任の先生が、鬼のような形相で僕を呼んだ。
先生が来た今、この5人が昭恵さんに何かすることは無いだろうと思ったので鍵を開けた。
すると昭恵さんは泣きながら飛び出てきて、僕の頬にビンタした。
「……最低!」
「おい隼。こいつらが言ってることは本当か?お前は昭恵に何かしようとして、ここに閉じ込めてたのか?」
昭恵さんの罵声と被せるように、先生が僕に問い詰める。
……昭恵さんに何かしようとしていたのは僕じゃなくて田中くんたちだ……。
だけどそれを、今ここで言うべきなのだろうか……?
もしここで言ってしまえば、結局昭恵さんは自分がそういう対象になっていたことを知ってしまうことになるし、
何より、田中くんたちの怒りに火を注いでしまい、今以上に普段のいじめも悪化するかもしれない。
それに……
僕の言う事なんて、誰も信じてはくれない……
「……はい……」
漂う重苦しい空気と圧力に耐えかねて、また、今考えていたようなことで自分を納得させて、僕は田中くんたちによって作り上げられた罪を肯定した。