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「田中くんたち来たじゃん。」
昭恵さんは僕を訝しげな目で見て言う。
「おーい隼!お前何でこんなとこにいんのー?」
田中くんたちが、ドアの窓部分から覗き込むようにして話しかけてきた瞬間、僕は咄嗟に教室のドアの鍵を締めた。
「え、隼くん?何してるの!?」
「……は?オイ隼!何鍵かけてんだよ!」
外からドンドンとドアを叩きながら、田中くんたちは怒声を上げる。
「隼くん?何で鍵をかけるの?」
背後から、昭恵さんの不安そうな声が聞こえる。
「ごめん、昭恵さん…今はやっぱり、外に出ると危険かもしれない…。誰か先生が来るまでこうしててくれないかな?」
「はあ?意味分かんないんだけど。」
「隼ー!てめぇ何のつもりだよコラ!」
「開けろよオイ!!」
「邪魔すんなよ隼!クソ野郎が!死ね!」
教室の内外から僕を非難する罵声が聞こえる。
ドンドンドンドン、次第に音を大きくしながら響くドアの音。
昭恵さんは、外に出ようと僕を押しのけて鍵を開けようとする。
「昭恵さん…!本当に、今ここを出たら危ないから……」
「だから何が危ないの?!」
「だからそれは……」
「言えないなら出してよ!正直、今あんたとこうして二人きりでいる方がずっと怖いんだけど…!」
「そうだぞ隼テメェ!!昭恵ちゃんを困らせんなよ!」
「お前もしかして二人きりになって変なことしようとしてたんじゃねーだろうなぁ!?」
「キモいんだよカスが!マジで死ねよ!」
僕は、どんな罵声にも堪えずドアを必死で押さえていた。
昭恵さんが鍵を外そうとしないように、昭恵さんとドアの鍵の部分の間に入って、必死に外に出さないようにしていた。
僕の今の行動は確かに誰が見ても怪しい。
そうして僕たちが騒いでいるとき、ちょうど校内を見回りしていた担任の先生が来たのだった。