3
「隼くん、本当に絵が上手だね!」
みんなが帰った後、菜摘さんは僕の隣に腰掛けてそう言った。
「ありがとうございます…!」
「色使いが好きだな。夕焼けなのに、少しピンクっぽいのが素敵。」
「昨日の夕焼けは、すごくピンク色に近かったんです。…あと、いつもより空気が柔らかい気がしました。」
「隼くんは、いいことに気がつくんだね。自然の空気とか色をちゃんと見ている人なんて珍しいよ。」
「絵を描くのが好きだから、つい見ちゃうんです。なんなら、人に対しても何となくのイメージで覚えたりしますよ。この人は何色っぽいな、みたいな感じで…」
「そうなんだ!じゃあ、私は何色のイメージなの?」
「菜摘さんは……」
目を輝かせて興味津々に聞いてくる菜摘さん。
彼女を見て、僕は昨日の景色を蘇らせた。
そして我ながら、自分の絵を見て驚いた。
なぜなら菜摘さんは、彼女そのものが……
「……この絵……みたいな色です…」
僕も無意識だったが、昨日描いた絵の色や雰囲気は、まるで菜摘さんそのものだったのだ。
僕の手に乗るスケッチブックが、2人の視線を一気に浴びて心なしか照れたように微笑んだ気がした。
「…菜摘さん…よかったらこの絵、菜摘さんにあげます。」
僕は自分でも驚くくらい、自然とその言葉が口から出ていた。