281章 久しぶりの顔合わせ
カスミンと過ごしていると、ドアをノックされる音がした。
アカネが扉を開けると、ハルキが立っていた。
「アカネさん、こんばんは」
ハルキに最後に会ったのは、魔物退治のときである。顔を合わせるのは、かなり久しぶりだ。
「ハルキさん、元気に過ごしていたの?」
「はい。元気に過ごしていました」
「ペットショップはどんな感じかな?」
「まずまずですね」
二人で話をしていると、カスミが近づいてきた。
「アカネさん、この女性は誰ですか?」
「ミライさんの妹の、ハルキさんだよ」
カスミは頭を下げる。
「ハルキさん、はじめまして。カスミといいます」
「カスミさん、はじめまして。ミライの妹の、ハルキといいます」
二人はがっちりと握手をする。
「ハルキさんは、絵が上手ですか?」
ハルキは首を横に振った。
「私の絵はとっても下手ですよ」
ハルキのデッサンしたところは見たことがない。どれくらいのデッサン力があるのかは、未知数である。
「ミライさんはとってもすごいので。ハルキさんも同じなのかなと思いました」
ミライのデザイン能力、デザインセンスは超一流である。
「ミライは天性のポテンシャルがあるからね。私に同じことはできないよ」
「絵を描き続ければ、できるようにならないですか?」
「チャレンジはしてみたけど、成長することはありませんでした。天性のポテンシャルが、大きくものをいうのかもしれません」
一定の成長曲線を描くものの、能力は頭打ちになりやすい。そこから先については、成長させるというより、維持が目的となる。
「頭打ちになってからは、一度も筆を持っていません」
才能のない分野を追求するよりも、才能のある分野を追い求めたほうがいい。力を生かせる分野を頑張ることによって、報われることも増えていく。
ハルキは心の中の真実を語った。
「アカネさんを見ていたら、才能100パーセントだと思うようになりました。どんなに努力をし
ても、届かないものはたくさんあります」
メイホウがでたらめな能力をつけたことで、超人的な人間になってしまった。空気いらず、食べ物いらずなどは、人間からかけ離れている。
アカネ以外の人間については、ごくごく通常の一般人だ。一秒でも長く努力したほうが、結果を残せる人間になれる。
「懸命に生きようとしたからこそ、アカネさんと出会うことができました。努力はとっても大切だと思うこともあります」
カスミはバナナ、飴だけで生き抜いてきた。そこには、並々ならぬ苦労があったと思われる。
「ハルキさんには、子供はいますか?」
「はい。二人の子供がいます」
「二人の子供を育てたのは、とっても素晴らしいことです」
バナナ、水だけで子供を育てていく。屈強な精神を持っていなければ、やり遂げることは難し
い。アカネが同じ立場なら、無理心中を考える。
「些細なことでいいので、自分のいいところを上げてみましょう。自己肯定感を高めることで、ポジティブ思考になれますよ」
「ポジティブ思考ですか?」
「はい。ポジティブに生きることによって、うまくいくことを増やせますよ」
「わかりました。取り入れてみようと思います」
ハルキの心に、はっきりとした光が取り込まれてように感じられた。