267章 仕事の鬼
肉の購入を終えると、家に戻ってきた。
50キロの肉は多すぎたのか、購入するまでに、30分を要することになった。今回の反省を踏まえて、次回からは肉の量を減らしていこう。
アカネが肉を買っている間に、テオスは眠ってしまったようだ。
「テオスさんの様子はどうですか?」
アカネの質問に、ソラが答える。
「テオス様は、かなりの疲れがたまっているみたいです」
「ソラさんの世界では、超能力で体力を消耗するんですか?」
「それはありません。瞬間移動をしても、体力は維持されます」
テオスが疲労を感じたのは、加齢によるものなのかな。それ以外では、この状況を説明するのは難しい。
「アカネさんのところに出発するまでは、元気を保っていました。テオス様がこんなに疲れているのは、信じられないです」
アカネ、ソラの会話が大きかったのか、テオスは目を開いた。
「アカネさん、戻っていらしたんですね」
テオスは体を起こす。疲れがたまっているのか、明らかに重そうだった。
「テオスさん、仕事はできそうですか?」
無理だといってほしかったけど、そういう展開にはならなかった。
「この仕事については、絶対にやり遂げようと思います」
水をきれいにする場所は、250カ所くらい残されている。衰えが明らかになっている、テオスにできるのだろうか。
ソラはゆっくりと、テオスの手を握った。
「テオス様、無理をなさらないでください」
テオスは握っていた掌を離した。
「私の最後のわがままです。アカネさんと仕事をさせてください」
「テオス様・・・・・・」
ソラが何をいったとしても、テオスは仕事についてくる。
「アカネさんと出会えたことで、仕事を楽しいと思いました。感動を一秒で長く、心に焼き付けていきたいです」
仕事=ノルマの側面が強い。楽しめる人というのは、少数派である。
「私もついていきます。テオス様の部下として、上司を守る義務があります」
困ったときに部下に助けてもらえるのは、人望が伴っているからである。嫌われている上司だ
ったら、誰も手を貸すことはない。
「ソラ、ありがとう」
テオスは布団から出る。
「アカネさん、仕事の続きをしましょう」
今日の状態で仕事をするのは難しい。しっかりと体を休めて、翌日以降にしたほうがいい。
「テオスさん、本日はゆっくりとしましょう」
「休みを取り過ぎると、リズムがくるってしまいます」
30000年以上にわたって、仕事に魂を注いできた。テオスの発言からは、そのように感じられた。