258章 テオスのゆったりタイム
テオスは6時になるまで、ゆっくりと体を休ませた。
「ゆっくりと休んだことで、体は楽になりました。アカネさん、ありがとうございます」
「テオスさん、体の状態はどうですか?」
「アカネさんのおかげで、ばっちりです」
声のトーンを聞いていると、元気になったのが伝わってきた。
「テオスさん、何か食べませんか?」
「食事をいただいてもいいですか?」
「はい。好きなだけ食べてください」
「アカネさん、ごちそうになります」
テオスをおもてなしするには、最高級の食材を必要とする。冷蔵庫から、「セカンド牛+++++」を取り出す。劣化しない魔法をかけてあるので、新品さながらである。
他の食べ物についても、保存魔法をかけてある。新品同様なので、おいしく召し上がることができると思われる。
「テオスさんの世界では、肉を食べてもいいですか?」
とある宗教では、特定の食物を口にするのを禁じている。
「はい。肉を食べる習慣はありますよ。猪、狼、鯨などが主流ですね」
牛、豚、鳥ではなく、猪、狼、鯨を食べる。人間は食べないような肉が、あちらでは好まれている。
「テオスさんには、こちらで最高級の牛肉を提供します」
「牛肉?」
テオスに牛肉を説明する。
「牛からとれる肉を牛肉といいます」
テオスは瞳をウルウルとさせていた。
「食べたことがないので、とっても楽しみです」
アカネはフライパンの上に、「セカンド牛+++++」をのっける。
「フライパンは自動ですか?」
「はい。全自動で肉を焼き上げます」
「こちらの世界は、技術がすごいですね。私の街においても、いつかは取り入れたいです」
人間には知恵というものがある。知恵を使うことによって、社会を大きく発展につなげてきた。
「セカンド牛+++++」の片面が焼きあがると、肉は自動的にひっくり返った。テオスは突然の事態に、慌てふためいていた。
「何が起きたんですか?」
「肉がある程度まで焼けたら、自動でひっくり返します」
「本当にすごい機能ですね」
肉を自動でひっくり返すのは、現実世界にもなかった。「セカンドライフの街」の技術は、人間界よりも上に位置する。
「テオスさん、レア、ミディアム、ウェルダンのどれがいいですか? レアは生の部分がある状態、ミディアムは肉の中に赤みが残っている状態、ウェルダンはしっかりと焼いている状態を指
します」
「どれが一番おいしいですか?」
「人によりけりですね」
味覚はそれぞれなので、どれが一番とはいいがたい。それぞれの舌に合わせた、肉を食べてほしいところ。
「ウェルダンにします」
「わかりました。肉をウェルダンに設定します」
ウェルダンの設定は、1000段階に分けられている。個人の味覚に合わせた。肉を焼けるようになっている。
テオスの好みは分からないので、「ウェルダン500」に設定。ウェルダンの焼き方の中では、中間に位置する。
肉が焼きあがっていくにつれ、香ばしさが広がっていく。肉の香りを感じるだけで、幸せな気分を味わうことができた。