241章 カスミの涙
「アカネさんはどんな仕事をしているんですか?」
「幽霊退治だよ」
ミナは幽霊退治をしていると知って、瞳がきょとんとしていた。
「幽霊退治ですか?」
「そうだよ。街で悪さをする、幽霊を除霊するんだ」
幽霊を苦手としているのか、体を震わせていた。
「とっても怖そうですね」
カスミは瞳をウルウルとさせていた。
「幽霊退治は面白そうですね。どんな幽霊がいるんですか」
幽霊退治を面白いと感じるのは、独特の感性といえる。
「○○○、○○○などがいるよ」
「形はとっても面白いですね」
日常世界にあるものが、幽霊になったような印象を受ける。乱雑に捨てられたことへの、恨みをはらそうとしているように感じられる。
「アカネさんと幽霊退治をやってみたいです。同行させてください」
やる気に満ちている女性に、非情な現実を伝える。
「幽霊のいるところは、空気がないんだ。通常の人間は、足を踏み入れることもできないよ」
「それなら、仕方ないですね」
カスミは落ち込むと思っていたけど、けろっとしていた。
「カスミさんは前向き思考だね」
「昔はいろいろと悩んでいたけど、なるようにしかならないと思うようになりました」
悩んだからといって、前に進めるわけではない。くよくよするのは、ほどほどにしておいたほ
うがいい。
「アカネさんの付与金のおかげで、リッチな生活を送れています。最高にハッピーですよ」
当たり前の生活を、リッチだと思える。とっても幸せなことだといえる。
「10歳の子供にも、ハッピー、ハッピーを言い聞かせています」
カスミの見た目は、18~19歳といったところ。10歳の子供を育てているようには、とても見えなかった。
「10歳の子供がいるの?」
「はい。9歳のときに、女の子を出産しました。10歳のときに、2人目の女の子が誕生しました」
2人の女性を出産したことで、一人の女性としてたくましくなったのかな。
「生活は苦しくなかったの?」
「苦しいこともありましたけど、子供のかわいいところを見ているだけで、たくさんのパワーを
もらえます」
子供の笑顔には、100万ドルの価値がある。生粋な笑顔を見ることで、どんな悩み、苦しみも吹き飛ばせる。
「旦那はいなくなってしまいましたけど、子供たちと暮らすことができて、最高の幸せを感じていますよ」
笑顔を保っていた女性の瞳から、涙がぽつぽつとこぼれた。
「付与金を早くもらえていれば、旦那は死ぬことはありませんでした。そのことについては、心残りです」
1000兆ゴールドをもらっても、死者を復活させることはできない。お金で命は買えないといわ
れるけど、まぎれもない事実である。
カスミは涙をハンカチで拭き取る。
「家族を支えるために、地雷に挑戦しました。地雷を取り除けないまま、あの世に旅立ってしまいました」
家族を助けるために、無謀な地雷処理に挑戦する。「セカンドライフの街」では、常套手段になってしまっている。