232章 宿泊
ココア、シオリは、おにぎりにがっついていた。何も食べなかったことで、空腹は極限に達している。限界点を突破している可能性すらある。
2つ目のおにぎりを食べたあと、シオリの水色の髪の毛が左になびく。とっても柔らかそうだったので、同じ女性としてうらやましいと思った。
「米がとっても甘いです」
シオリの言葉に対して、ココアがうなずいていた。
「バナナよりも、ずっとずっと甘いです。一緒に仕事をしていたときに食べた、おにぎりとは完
全に別物です」
今回提供するのは、「ヒカリニシキ+++++」だ。「セカンドライフの街」において、トップクラスの甘みを誇る。
塩分を少しだけ含むのも、米の特徴である。「ヒカリニシキ+++++」は、おにぎりを作るのに適している。
おにぎりを食べている2人の女性に、最高クラスの紅茶を提供する。
「ココアさん、シオリさん、紅茶だよ」
紅茶については、前回と同じものである。飲むことによって、口はとってもさわやかになる。
「アカネさん、ありがとうございます」
ココア、シオリは紅茶を啜る。上品に飲んでいるからか、優雅に感じられた。
「マイルドな味わいで、心がとっても癒されます」
心を癒すことによって、快適な睡眠につながるといいな。
紅茶を堪能している女性に、最高牛肉でおもてなしをする。
「牛肉をどうぞ。最高級の牛肉だよ」
シオリは戸惑いの表情を見せていた。
「最高級の牛肉を、食べてもいいんですか?」
「うん。いいよ」
「おもてなしばかりをしていたら、アカネさんのお金がなくなってしまいます」
シオリの言葉を聞いていると、コハルと過ごしていたときを思い出す。
「1体の幽霊退治で、1000億ゴールドの報酬をもらえるの。肉をおごったとしても、懐は痛くもかゆくもないよ」
1体の幽霊退治で、100万キロの「セカンド牛+++++」をゲットできる。最高級の肉は、安物に成り下がってしまった。
ココアは金額に敏感に反応する。
「1体で1000億ゴールドですか?」
「そうだよ。幽霊1体につき、1000億ゴールドだよ」
20パーセントの付与金をひかれても、800億ゴールドをゲットできる。あんな簡単なことで、大金持ちになれるのは、夢を見ているみたいだ。
「金額の桁がすごいですね。私には見当もつきません」
仕事の難易度が上がるにつれて、極端なインフレを起こしている。今後は兆の上の単位を、見ることになりそうだ。
シオリは肉に、フォークを入れた。
「肉汁がすさまじいですね」
「そうだよ。肉汁の多さが魅力的だよ」
「セカンド牛+++++」の水分は、隣に並んでいる桃よりも多い。
ココアは「セカンド牛+++++」を食べる。
「何度食べても、おいしい肉ですね」
ココアは肉を食べているときに、大きな欠伸をする。6時間眠ったくらいでは、睡眠不足を解消することはできないようだ。
「ココアさん、瞼が重いの?」
「はい。慢性的な睡眠不足です」
シオリも大きな欠伸をする。
「シオリさん・・・・・・」
「アカネさん、ごめんなさい」
万能な魔法であるものの、睡眠不足の前では無力だ。一人一人の住民に、しっかりとした睡眠を取ってもらう必要がある。
アカネは睡眠不足の2人に、ある提案をする。
「よかったら、宿泊していかない?」
ココア、シオリの2人なら、家を留守にしても安心できる。
「アカネさんの家に泊まってもいいんですか?」
「うん。いいよ」
ココアは考え事をしているのか、小刻みに頷いていた。
「朝までお願いします」
シオリはどうするのかなと思っていると、小さな声で返事をする。
「私も朝までお願いします」
赤の他人を不在時に宿泊させるのは、信頼感があるから。心から信頼していないと、家に宿泊させるのは無理だ。