212章 コハルが目を開ける
コハルは6時を過ぎても、眠り続けていた。
眠っている女性に負担をかけないために、一人でご飯づくりに取りかかる。疲れない体をしているため、身体的な負担は0である。
炊飯器の中をチェックすると、十分なご飯が残っていた。新しく炊く必要はなさそうだ。
スーパーで購入した、サーモンを器に盛りつけていく。店ではないため、盛り付け方については適当である。適当に盛り付けたからといって、食欲は変わらない。
冷蔵庫から桃を取り出すと、食べやすいサイズに切り分けていく。ひと手間を加えることで、
桃のおいしさを引き立たせることができる。
桃を切り終えると、眠っている女性に声をかける。
「コハルさん、夕食ができたよ」
コハルは目をごしごしとこすっていた。
「アカネさん、今は何時ですか?」
「夜の6時半だよ」
「6時半ですか?」
「うん。そうだよ」
疲れがたまっているのか、体をなかなか起こさなかった。
「すみません、眠り過ぎてしまいました」
「気にしなくてもいいよ」
「食事が終わったら、きっちりと家事をします」
「今日はいいよ。体を休めることだけを考えよう」
家事をしてほしいという思いはあるものの、心の中に閉じ込めることにした。
「ありがとうございます・・・・・・」
「コハルさん、ご飯を食べよう」
「はい・・・・・・」
鉛でしばられたかのように、コハルの体は重そうだった。
「体はどうしたの?」
「腹部を刺されてから、眠れない日が続きました。昨日、一昨日については、30分だけの睡眠にとどまります」
2日で1時間の睡眠か。アカネ以外の人間であったなら、確実に睡眠不足である。
「アカネさんと一緒に眠りたいです。そうすれば、深い眠りにつくことができそうです」
「わかった、一緒に睡眠をとろう」
「ありがとうございます」
コハルの重たそうな、瞼がゆっくりと開いた。
「アカネさんは、体が疲れることはないんですか?」
「まったくないよ・・・・・・」
10000時間くらい起き続けても、体の疲れを感じていなかった。体内のスタミナは無限大であ
る。
「心が疲れることはないですか?」
「心の疲れに関しては、しょっちゅうだよ」
裏世界探索は一方的に攻撃を受け、魔物退治では神経の磨り減る戦いを強いられた。心のライフについては、0を下回ることが当たり前だった。
心を回復させているのは、最高級の食事である。「セカンド牛+++++」などを食べることによって、メンタルを回復させている。