201章 トラウマ
三人で歩いていると、ココア、シオリと出会った。
「アカネさん、おはようございます」
アカネは二人に挨拶を返す。
「ココアさん、シオリさん、おはよう」
ココアは視線を、右に傾ける。
「ミライさんですか?」
「そうですけど・・・・・・」
ミライであることを知って、ココアは瞳を輝かせていた。
「ミライさんと会えるなんて、とっても光栄です」
ココアの反応を見ていると、憧れの対象となっているのが伝わってきた。
シオリは柔らかい視線で、
「アカネさん、この人は誰ですか?」
と質問をする。
「コ・・・・・・・」
コハルといいかけるも、途中でストップした。ココア、シオリは同じ名前の人に、ひどい目に遭わされた過去がある。
自己紹介は避けてほしいと思ったものの、願いは届くことはなかった。
「コハルといいます。よろしくお願いします」
コハルという名前に強烈な嫌悪感があるのか、ココアは険しい表情になった。ミライはその様
子を確認すると、厳しい口調で問い詰める。
「コハルさんは、ココアさんに悪いことをしたんですか?」
ココアは首を横に振った。
「そういうわけでは・・・・・・」
ミライはいつにもなく、声が尖っていた。コハルを絶対に守るためには、心を悪魔にする覚悟
を感じた。
「コハルさんは、深い傷と必死に向き合おうとしています。悪いことをしていないのであれば、傷つけるようなことはしないでください」
ヒートアップしたら、収拾がつかなくなる。アカネはそうさせないために、
「ミライさん、コハルさん。ココアさんと話をしてもいいかな?」
と、ミライに伝える。
「アカネさん・・・・・」
ミライは納得できないのか、顔にはっきりと現れていた。
「10分くらいで戻ってくる・・・・・・。それまでは、コハルさんのことをお願い」
握っている手を離したのち、ココア、シオリに声をかける。
「ココアさん、シオリさん、離れたところに行こう」
「アカネさん、いいんですか?」
コハルのことを優先したいけど、ココア、シオリを放置するわけにもいかない。
アカネが離れようとすると、ミライに声をかけられた。
「ここで話せることなら、ここで話してください」
他人の過去を、勝手に暴露するのはNGである。アカネは確認を取ることにした。
「ココアさん、過去の話をしてもいいかな」
ココアは少しだけ考えたのち、首を縦に振った。
アカネは過去の出来事を、ミライに小さな声で伝える。
「コハルさんと同じ名前の人に、ひどい目に遭わされているんだ。そのこともあって、名前に敏感になったんだと思う」
「どんなことをされたんですか?」
「○○を○○される、〇を〇されたりしているの。そのこともあって、敏感になっているんだと思う」
ミライはゆっくりと、2~3度くらい頷いた。
「そんなことがあったんですね・・・・・・」
ミライの目線から、ココアに対する敵対心が消えた。
「ココアさん、大変な目に遭ったんですね」
ココアはかすかに頷いた。
「私は男の人に、○○を○○されたことがあるんです」
ココアだけでなく、ミライも同じことをされていたのか。その事実については、耳に挟んだことがなかった。
「○○を○○されたことで、男性恐怖症になったこともあります」
男性恐怖症になった過去が、恋愛を躊躇わせているのかな。その部分については、アカネにわからなかった。