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わたしが身支度をしている間にリサが朝食の準備をしてくれていた。わたしの家でリサにそんな事をさせて、とも思ったけどリサは早く話がしたいみたい。ソワソワしている。わたしとしては食事中に重たい話は遠慮したいので、食事が終わるまでは待って欲しいと思っているので、話を振るような事はしない。リサも食事中は話題を選んでくれていたので、重たい話はすることなく朝食を終えることが出来た。
「それで、こんな朝早くからどうしたの?」
「ありがとうパル。どうしてもお礼が言いたかったの。我慢が出来なくてこんな時間になっちゃった」
わたしに返ってきた返事は予想外だった。この言い方だと話し合いは上手くいったみたいだ。
リサの顔は晴れ晴れしている。自分の憂いが取れた証拠だろう。わたしはホッとすると事の経緯を聞くことにした。
「それで、どんな内容だったか聞いてもいいの?」
「もちろんだよ。話したくて来たんだし」
そう言うとリサはその後の話を教えてくれた。
仕事が終わった後、ダイニングに全員集まって話しをすることになったらしい。その時にリサからではなく、おじさんから話し出されたそうだ。わたしから不安に思っていると聞いていたから、おじさんから全部を話すと言われたそうだ。その時はおばさんもお兄さんも心配そうな顔をしていて、よほどの話だと思ったリサは言っていた。
「でもね、聞いたら大した話じゃなくて」
「ん? ちょっと待って。大した話じゃない? どういう事? わたしはおじさんにリサが不安になっているから、その理由を話してってお願いしたよ? その話じゃなかったの?」
「その話だったけど、その理由が大したことじゃなかったって事」
「そうなの?」
わたしが聞いたのはリサはおじさんのお友達の子供だという。これって子供からしたら、すごく大事だと思うんだけど? もしかして、おじさんはリサに違う話をして誤魔化しのかな?
わたしがおじさんを疑ってると、あっけらかんとリサは言い放つ。
「うん。パルには言ったって聞いてるから言うけど。わたしはお父さんのお友達の子供だって、聞いたでしょう?」
確認するようにリサが話をしてくるのでそれに私は頷く。もう一つ聞いているのは、リサの名前は亡くなったお母さんの名前だそうだ。リサには両親の記憶がないからせめて名前だけでも残してあげたいと思ったのだという。
わたしが頷くのを見てからリサは続ける。
「わたしね。その事は知ってたの」
「知ってた??」
わたしの声は裏返る。全員が知ないと隠していた秘密を寄りにもよって、本人は知っていたという。これには何も言葉が出てこない。おじさん達はどう思ったのだろうか? ていうか、いつから知って、誰に聞いたのか。わたしは詰め寄る様にリサに矢継ぎ早に確認する。
「どういう事? 誰に聞いたの? いつから知っていたの? その事はおじさんに確認しようとは思はなかったの?」
「パル。落ち着いて」
わたしのあまりの剣幕にリサがたじろぐ。若干、引き気味に話を続けてくれた。
「じつはね、お母さんのお母さん。つまり、おばあちゃんね。その人がわたしに会いに来たの。始めは気が付かなかったんだけど。よく見かけるようになったから、顔を覚えちゃって」
それからはよく見かけるから、会釈をして挨拶をするようになったらしい。挨拶をするようになって馴染んだ時に、大雨が降って、傘がないらしいおばあさんが気の毒で、傘を貸したら返してくれて、という形で交流が始まったようだ。
始めは他人の振りをしていたが仲良くなるにつれて、黙っているのが苦しくなった。という経緯らしい。
「それっていつの話?」
「2年ぐらい前」
「そうなんだ」
わたしは脱力する。良い事なんだけど、周囲が必死に隠していたことを、案外本人は知っていたという、典型的な例の様だ。