181章 会話
「アカネさんは見た目が変わらないですね」
「体重が変化しないので、見た目は変わらないと思います」
身長は170センチ、体重は50キログラムのままとなっている。
「どんなに食べたとしても、体重は増えないんですか?」
「はい。どんなに食べても、体重が増えることはありません」
フタバは目を輝かせていた。
「とっても羨ましい身体ですね。私も手に入れてみたいです」
太らない身体というのは、女性の憧れである。
「魔物退治をしていたときは、ご飯を食べたんですか?」
「ほんの少しは食べました」
「ほんのちょっととは、どれくらいですか?」
「おにぎり1個です」
「1年間で、おにぎり1個しか食べていないんですか?」
「はい。それ以外は、何も口にしていません」
「水分は取りましたか?」
「水を少し飲みました」
「おにぎり1個、少量の水だけで、生きることができるんですか?」
「はい。何も食べなくても、生きられるスキルを所持しています」
フタバは、二~三度ほど頷いた。
「アカネさんのスキルは、住民にとって必須ですね」
超人的なスキルがあれば、アメ、バナナだけであっても、問題なく生きられる。「セカンドライフの街」の、食料問題を一気に解決できる。
「年齢についても、変わっていないような気がします」
「私は不老不死なので、年を取らないです」
「そうなんですか・・・・・・」
「この街に住んでいる限り、永久的に18歳となります」
18歳であり続けることに対して、フタバは本音を漏らしていた。
「18歳を続けられるのは、とっても羨ましいです。私は誕生日を迎えるたびに、年を重ねてしまいます」
年を取るのは人間の宿命である。これについては、変えることはできない。
「不老不死ということは、ずっと生き続けることができるんですか?」
「はい。100年後、200年後も生き続けることになります」
18歳をキープしたまま、100年、200年が過ぎていく。そうなったときには、どのような感情を抱くことになるのかな。
「アカネさんがいれば、住民は安心した生活を送ることができますね」
付与金を収めたからこそ、住民が安定した生活を送っている。それについては、れっきとした事実である。
アカネは話の話題をチェンジする。
「ミライさんはいないんですか?」
「自分の家を完成させたあとは、顔を合わせる機会は激減しました」
絵の仕事に集中したいときは、自宅の方がメリットは大きい。
フタバは軽い瞬きをする。
「火傷をしている女性に対して、冷たい態度を取ることが多かったです。そのこともあって、いいようには思われていません」
自分の生活を守るために、邪魔者を排除するのはよくある話。人間としての防衛反応が働いている。
「会いたいといったところで、妹に拒絶されるだけでしょう。そのことがわかっているので、声をかけることもありません」
フタバの話を聞いていると、関係修復は難しそうである。ミライの火傷は、家族間に冷たい影を落とした。
「ミライが心を寄せているのは、アカネさんだけです。他の人については、心を開くことはないでしょう」
フタバは目をゴシゴシとこすった。
「店長の看病をしていたので、身体に疲れがたまっているみたいです。今日のところは、失礼させていただきます」
「ゆっくりとしてください」
「アイコが喜ぶので、また来てくださいね」
「わかりました・・・・・・」
フタバがいなくなったのを確認すると、アカネは店をあとにした。