174章 久しぶりのご飯
二人で店を尋ねると、
「アカネさん、ミライさん、いらっしゃいませ」
と店長がいった。アカネだけでなく、ミライも有名人になったのかな。
二人以外には、来客は誰もいなかった。付与金がもらえるようになっても、「セカンド牛+++++」を食べるのは厳しいようだ。
「有名人が二人並ぶと、華やかさを感じます」
「ミライさんは有名人なんですか?」
「絵描きの天才ということで、知らない人はいないといわれています」
魔物退治をしている間に、有名人になっていたとは。一年間の変化というのは、大きいのかな
と思った。
「買ってくれる人がいるからこそ、お金をもらうことができます。私はお金を出してくれる人
に、心から感謝しています」
有名人になっても、低姿勢をキープできる。人間性のすばらしさに、おおいに感動することとなった。
店長の妻である、ヒカリが水を運んだ。
「いらっしゃいませ」
ミライはメニュー表を見ることなく、
「店長、フルコースセットを2人分お願いします」
といった。この言葉を聞いて、定期的に通っているのを感じさせた。
「かしこまりました」
ヒカリは一礼すると、店内へとさがっていった。
「絵の収入を得るようになってからは、3ヵ月に1回のペースできています。最高級のお肉を食
べることで、心に安らぎを与えています」
「セカンド牛+++++」はおいしいだけでなく、人の心を癒す力がある。一枚の肉の中に、CBDが入っているのかな。
「アカネさんは、店を利用したことはありますか?」
「二回くらいは来たことがあるよ」
家で調理することが多いため、店で食べる機会は少なめだ。
「どんなメニューを頼みましたか?」
「『セカンド牛+++++』の、しゃぶしゃぶを頼んだよ」
「セカンド牛+++++」は、熱に弱い部分が多いため、しゃぶしゃぶには適していない。お湯
に長くつけると、水の中に溶ける。
一部の部位については、熱に強くなっている。それゆえ、しゃぶしゃぶをするのに適している。
お湯で軽くしゃぶしゃぶしたあと、大根おろし入りのポン酢で食べる。肉の柔らかさ、ポン酢の甘さ、大根おろしの刺激が一体となって、最高のハーモニーを醸し出している。
「しゃぶしゃぶも食べてみたいですね」
「次に訪ねたときは、しゃぶしゃぶを食べよう」
「はい。一緒に食べましょう」
ミライと雑談をしていると、フルコースセットが運ばれてきた。
「フルコースセットです」
フルコースセットはご飯200グラム、牛肉300グラム、サラダ、味噌汁、デザートのセットだった。1人前にしては、量は多めといえる。
「アカネさん、料理を食べましょう」
ステーキをソースにつけて、口の中に運んだ。
「家で食べるよりもおいしい」
ソースの絶妙な味が、肉の味を引き立てていた。
アカネはあっという間に、300グラムを食べきってしまった。おいしい料理というのは、あっという間になくなってしまう。
本音はもっと食べたいところだけど、ミライの懐事情もある。今回については、フルコースだ
けにしておこうと思った。
「セカンド牛200グラムを、アカネさんに追加してください」
「ミライさん・・・・・・」
「肉を食べたいという気持ちが、ハートに伝わってきました」
「懐は大丈夫なの?」
「10憶ゴールドを用意したので、好きなだけ食べてください」
「ありがとう」
ミライは「セカンド牛+++++」を、噛みしめるように食べている。
「店長、最高においしいです」
「そういってもらえると、こちらも作った甲斐があります」
ヒカリが焼き上げた肉を持ってきた。
「アカネさん、できました」
「ありがとう」
ステーキに何もつけずに、口の中に運んだ。
「これもすごくいい」
あまりのおいしさに、提供された肉はあっという間になくなった。
「アカネさんはすごい食欲ですね」
「うん。今日はとっても食べたい気分なんだ」
魔物を倒している間に食べたのは、ミライの作ったおにぎり一つだけ。それ以外については、何も口にしていなかった。
「ご飯、スープなどもおいしいですよ」
ご飯を口にすると、溢れんばかりの甘さが広がることとなった。
「コメについては、「ササヒカリヤ+++++」を使っています」
「セカンド米+++++」を中心に食べていたので、他はよくわからない。
スープを口にすると、柔らかい味がする。
「自然の最高級食材だけを使っています。そのこともあって、とっても優しい味をしています」
本当は追加注文をしたいけど、ミライのことも考える必要がある。今回はここまでにしておこうと思った。
ミライがご飯を食べ終えると、二人は席を立った。
「ヒカリさん、会計をお願いします」
「わかりました・・・・・・」
ヒカリは伝票を見ながら、金額を弾き出した。
「フルコースセット2人前などで、1.2億ゴールドとなります」
ミライは財布から、1.2億ゴールドを取り出す。
「ミライさん、いつもありがとうございます」
会計をすませると、二人は店をあとにした。