173章 ミライの恩返し
家でゆっくりとしていると、扉をノックされる音がした。
扉を開けると、ミライが立っていた。
「ミライさん、いらっしゃい」
「お邪魔します」
「今日は絵描きは休みなの?」
「はい。今日はお休みを取っています」
フリーランスのいいところは、自分のペースで休めるところ。会社で働く社会人みたいに、拘束時間が決められているわけではない。
「身体の調子はどんな感じかな?」
「いろいろなところに、痛さを感じることがあります」
「回復魔法をかけたほうがいいかな?」
「はい。お願いします」
レベル999になってから、初めての回復魔法である。ミライの身体に、どのような効果をもたらすのだろうか。
回復魔法をかけ終えると、ミライは身体のチェックをしていた。
「身体が回復しているだけでなく、エネルギーを与えられているように感じます。この調子な
ら、徹夜で絵を描くことができそうです」
言葉を聞いているだけで、レベルの書き換えの効果が伝わってきた。
「諸事情によって、レベルが999になったんだ。そのこともあって、回復効果がアップしたんじ
ゃないかな」
ミライは首をかしげていた。
「レベルアップはできないと聞きましたけど・・・・・・」
「レベルアップではなく、レベルの書き換えなんだ」
「そうなんですね」
納得はしていないものの、必死に吞み込もうとしているのを感じた。
「ミライさん、おにぎりをありがとう。おかげですごく元気になれたよ」
ミライのおにぎりは、遠足のときに食べた味と似ていた。そのこともあって、たくさんのエネ
ルギーを得ることができた。
「お役に立ててよかったです」
「機会があったら、また食べたい」
「アカネさんのためなら、喜んで作ります」
ミライの表情に、満面の笑みが咲いていた。
一緒に食事しようと思ったものの、冷蔵庫には何も入っていなかった。
「ミライさん、一緒に食べに行かない」
「はい。いきましょう」
お金を準備しようとしていると、ミライから声をかけられた。
「いろいろとお世話になったので、『セカンド牛+++++』を御馳走したいです」
「セカンド牛+++++」は、100グラムで1000万ゴールドとなっている。庶民が手を出せば、
即座に破産しかねない。
「ミライさんが生活できなくなるよ」
「アカネさんが魔物退治に出かけている間に、180憶ゴールドを稼ぎました。『セカンド牛++
+++』を御馳走しても、懐が痛むことはありません」
絵描きを開始してから、180億ゴールドを稼いでいたとは。ミライの絵の才能は、アカネの想像よりも遥か上にいる。
「いつかは恩返しをしたいと思っていました」
アカネの瞳がうるっとしていた。
「ミライさん、ありがとう」
「アカネさん、いきましょう」
人におごってもらえるからか、テンションは三割ほど高くなっていた。
*キャラクターがごちゃごちゃとしていました。誤解を招く作品になったことを、心からお詫びいたします。