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ウリナコンベの7号店本番 その4

 いよいよ辺境都市ウリナコンベに店を構えたコンビニおもてなし7号店の試験販売が開始になりました。

「お待たせしました。いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ! コンビニおもてなしへようこそです!」

 制服を着込んでいる僕とパラナミオが笑顔で頭をさげていきます。
 僕が着ているのは、この世界に転移してくる前から来ている制服なのでちょっとくたびれているのですが、パラナミオが着ている制服はこの日のために、テトテ集落で服飾製作をしているみなさんに依頼して作成してもらった新品ですので、おろしたてのピカピカです。

 コンビニおもてなしの制服は、バイト用に準備していた予備の制服をテトテ集落の皆さんに提供して、それをお手本にして作成してもらった物なんですよね。
 もっとも、僕が着ている元々の制服の素材は合成繊維ですので、当然この世界に同じ物はありません。
「とりあえず、色合いと布の厚みだけ合わせてもらえたら……」
 そう依頼して、作成してもらったんですけど……いや、ホントにテトテ集落の皆さんって器用なんですよね……厚手の布を、木の実なんかをすり潰して作った自然由来の染料で染め上げて、元の制服と遜色のない色合いの制服を作成してしまったんですよ。
 この制服は、5号店東店を開店した頃から採用させていただいていて、今ではコンビニおもてなしのほぼ全ての店員が新しい制服を着ているんです。

 なので、僕の制服の方が今では稀少だったりするんですよね。

 そんな制服に身を包んでいる僕とパラナミオ。
 その間を通って多くのお客さん達が店内に入ってきました。

「ほぉ……これが噂のコンビニおもてなしか……」
「噂では聞いておったが、店内はなかなか綺麗だな」

 そんな声に混じって、

「おぉ!これこれ!このタテガミライオンの焼き肉弁当! この味が忘れられなかったんだ!」
「デラマウントボアの肉じゃが弁当もあるぞ! これも美味かったんだよなぁ」

 そんな声がお客さんの間から聞こえてきます。

 ……はて?……おかしいですね……
 ここ辺境都市ウリナコンベは、コンビニおもてなしの支店がある一番西の都市である辺境都市ナカンコンベよりもかなり西方に位置しているんです。
 普通に考えると、コンビニおもてなしの弁当を食べた事がある人はまずいないと思うんですけど……ひょっとしたら、商売か何かでナカンコンベまで出向いたことがあるのかな?
 そんなことをあれこれ考えていた僕なんですけど……こればっかりはいくら推測していっても結論は出ませんよね……

「あの……ちょっといいですか?」
「ん、なんだい?」
「失礼ですが……コンビニおもてなしの弁当をどこかで食べられたことがあるんですか?」
「あぁ、ほら、バトコンベの大武闘大会で屋台をだしてただろう? あそこで食べたんだよ」
「あぁ!」

 その言葉を聞いて僕はやっと納得しました。
 毎年夏頃に開催されている武闘大会ですが、その大会に2年連続してコンビニおもてなし狩猟部門のイエロとセーテンが参加しているんです。
 で、その応援を兼ねて会場にコンビニおもてなしの屋台をだしていたんですよ。

 大武闘大会が開催されている辺境都市バトコンベなら、ここ辺境都市ウリナコンベから西へ馬車で数日行った場所にありますので、大武闘大会に出向いてうちの屋台を利用したことがある人がいてもおかしくありません。

 気になっていたことの理由がはっきりしたもんですから、僕も心置きなく接客に専念することが出来るようになりました。

 
 大武闘大会でコンビニおもてなしの屋台を利用したことがある人が、思った以上に多かったようで、試験販売では弁当類が凄い勢いで売れていったのですが……それ以上の売れ行きを記録した物がありました。

 はい、スアビールです。

 コンビニおもてなしの在庫として残っていた缶ビールを元にしてスアの魔法で精製方法を確立して、今はスアの使い魔の森のみんなが生産してくれているこのスアビールなんですけど、この世界には炭酸のお酒がないもんですから、大武闘大会で販売した際にも、

「な、なんだこのシュワシュワした酒は!?」
「今まで味わったことがない味だぞ!?」
「しかも、それでいてすごく美味い!」

 ってな具合で大好評になりまして、あっという間に完売してしまった程の人気だったのですが……

 試験販売中のコンビニおもてなし7号店の中では、その再現とばかりにスアビールがすごい勢いで売れていたんです。

 最近はかなり多くのスアビールを毎日製造できるようになっていますので、余剰分をすべて持って来ていたのですが……それでもお昼前にはスアビールはすべて完売してしまったんです。

「パパ! スアビールがありません!」
「うわ!? と、とりあえずスアに連絡を……」
 
 そうは思ったのですが……この日はとにかくお客さんが途切れないもんですから、ちょっと抜けるなんてとても出来そうにありません。

 そんなお店の外では、

「試食いかがですか~」
「試食です~」

 コンビニおもてなしの試食マスターことルービアスの指導を受けながらフク集落の子供達が、お弁当の試食品がのっているトレーを片手に笑顔で声をあげています。
 その子供達の絵が胃につられて、道行く人達がどんどんその前に集まっていまして、

「うん!? この試食の弁当うまいな!?」
「はい、店内で試食じゃないお弁当も販売しています」
「店内だな、よし、せっかくだし買っていくか」

 と、いった具合に、試食から店内へと移動してこられるお客さんも結構多いんです。


 ……みんなも頑張ってくれているんだし……今日のところはスアビールの追加はあきらめて、今アある品の販売に……

 僕がそんな事を思って居ると……

 ……大丈夫、まかせて

 僕の脳裏に、スアの声が響いてきたんです。
 きっと、僕の思考を読み取ったスアが、僕がスアビール不足で悩んでいることを察してくれたのでしょう。

 で

 そのスアの声から三十分もしないうちに、

「はぁい、店長。スア様からの依頼で、スアビールを二十木箱分持って来たわよぉ……ったくもう、相変わらずハニワ馬使いが荒いんだからぁ」

 いつもの憎まれ口を叩きながら、ハニワ馬のヴィヴィランテスが、スアビールの木箱が詰まっている魔法袋を運んで来てくれました。

「ありがとうヴィヴィランテス。これでスアビールをまた売ることが出来るよ」
 僕が笑顔でそう言うと、ヴィヴィランテスは、
「そ、そんなに褒めたって、また次回も緊急事態の際に荷物を運んであげることしか出来ないんだからね!」
 と、ツンデレ的な一言を残して、転移ドアの向こうへと帰っていきました。

「さぁパラナミオ! また忙しくなるぞ!」
「はい!頑張ります!」

 僕の言葉に、両手の拳をギュッと握り締めるパラナミオ。

 そんな感じで、この日、試験販売初日を迎えたコンビニおもてなし7号店は、夕方までお客さんが途切れることがありませんでした。

まずは、大成功といっても大丈夫な感じです、はい。

 閉店し、売り上げをチェックしていると、そんな僕のところにパラナミオが笑顔で駆け寄って来ました。
「パパ、パラナミオ、しっかりお役にたてていましたか」
「あぁ、もちろんだとも。とっても助かったよ」
 僕は、パラナミオの頭を笑顔で撫でてあげました。
「えへへ……よかったです」
 パラナミオは、嬉しそうに笑顔を浮かべていました。

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