第26話 穢れ
俺は隼を変えてしまったことに……
穢して染めてしまったことに、とてつもない優越感と興奮を覚えた。
だが隼は、自分の急激な心と体の変化についていけないようだった。
俺の言葉に若干気を楽にしたような表情をしたが、まだまだ不安は拭えていないようだ。
「……まだ何か不安があるのか?」
俺は隼の目を見て聞いた。
「………こういう感情が当たり前のことだっていうのはわかったんだけどね……他の皆は、なんであんなに普通にしてられるんだろう………」
隼は不思議そうに首をかしげている。
「俺なんて、そういう考えを皆からバレないように隠すのに精一杯だし……ふとした時に考えちゃったり思い出したりして焦ることもよくあるんだけどさ……皆は割と普通にしてるよね」
「いや……普通に見えてるだけだと思うぞ。内心はお前と同じ様に、心の欲望と葛藤しているはずだ。実際、傍から見たらお前もそんなことを考えてるようには一切見えなかったぞ」
「え……ほんとに?」
「ああ、本当だ。誰もが同じように邪な考えと闘い、必死に隠してる。だから仮に考えてることを察せられてしまったとしても、相手もきっと当たり前のことだと思って受け流してくれるさ」
隼があまりに真面目に相談してくるから、俺もつられて真面目に返答する。
しかし、それこそ俺の頭の中は既に隼を染めたことに対する言い様のない興奮で支配されている。
「だから隼……お前は皆と同じ普通なんだ。何もおかしくないし、病気でもない。むしろ15歳の男子として健全なんだぞ。」
俺は隼の隣に移動し、体を近づけ、目と目を合わせて言う。
俺の真剣な表情に、隼は一瞬瞳の奥を揺らがせたのを見た。
「彼女としたいのも当たり前。毎日オナニーしたいのも当たり前。女性を見ればエッチな思考に至るのも当たり前。だから隼………」
俺は隼の目をまだ見つめながら、無防備に垂れていた隼の右手を握る。
「お前はこれからもオナニーしまくっててもいいし、俺とエッチしてもっとエロくなってもいいんだぞ」
俺は本当に言いたかったことを言った。
俺に握られた隼の右手が少し熱を帯びてくる。
隼は心なしか、俺の手を軽く握り返したような気がした。
「……うん………」
隼は短くそう答え、恥じらったように顔を斜め下に背けた。
唾を飲み込む度に動く喉仏。
安心しきったような期待するような流し目。
段々と火照ってくる繋いだ手。
俺は、久しぶりに近くで見る隼の全てに、興奮することを抑えられなかった。
「隼…………」
俺は隼の名前を呼ぶ。
隼は俯いていた顔を上げ、俺と目を合わせる。
その目は、まるで俺を吸い込むような…艶やかな蜘蛛が獲物を糸に絡めて離さないような…そんな目をしていた。
「………んっ!!?」
俺は堪らず隼の唇を奪った。
二人の右手は繋がれたまま。
隼は次第に俺の舌を受け入れる。
聞こえる甘い吐息と熱い唾液。
俺も隼も、数カ月ぶりの密着に体が素直に反応していた。
「……っはぁっ……はあっ……」
「隼………数ヶ月も我慢させられたんだ。もう抑えられない。」
「うん……」
「いいよな?」
俺は隼の次の言葉を聞く前に、隼をそこに押し倒した。
隼は何も言わずに俺の首に腕を回した。
再び始まる熱いキス。
隼の呼吸が、匂いが、肌の触れる感じが、全てが久々でとても愛おしかった。
俺は隼に跨る状態のまま、自分のモノを隼のモノに押し付ける。
隼は小さく声を漏らす。
そのまま、ゆっくりと擦り付けながらキスをした。
俺達にしては珍しいくらい、丁寧に時間をかけた前戯だった。