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「駄々をこねても無駄です! 私は何がなんでも貴方様の幸せをマリアンヌ様に変わって、見届ける義務があります!」
「何……!?」
「マリアンヌ様の願いは一つです! ローゼフ様が幸せになり、美しい女性と素敵な恋をして、その方を自分の妻としてシュタイン家に迎い入れることです! そして子宝に恵まれ、幸せな家庭を築くことがマリアンヌ様の何よりの願いでございます……!」
「黙れパーカス……!」
「いいえ、黙りません! 貴方様の代でシュタイン家の血を絶やすことは決してならないのです!」
「パーカス……」
「貴方のお父上も、そのお父上も、名家の名を受け継ぐ者として責任を果たしてきました。シュタイン家の名を受け継ぐ者ならば、なおさら避けられない運命なのです――」
「パーカスお前……」
「私もそんなに長くは生きていられません。ですので、どうか私が生きてるうちに美しい花嫁をお探し下さいローゼフ様。それが年老いた執事のささやかな願いでもございます」
「しかし、私は…――」
「いいですか、ローゼフ様。貴方様はあの子といることでそれが愛だと錯覚しておられます」
「何……?」
「例え貴方様がよくても、神は決してお許しにはなられないでしょう。ましてや人と人形が"恋"に落ちるなど、あってはならないことなのです」
パーカスがその言葉を口にすると、ローゼフは再び感情的になって言い返した。
「貴様は私に何が言いたいのだ!?」
「ローゼフ様、私が心配していることは既にお伝えしました。あとはご自身でお考え下さい」
「待てパーカス……!」
彼はそう話すと割れたティーカップを片付けて、そそくさと部屋から出ていった。
「クソ、あのタヌキじじいめ……!」
ローゼフはパーカスの話に怒りを覚えると、椅子に座って深い溜め息をついて途方に暮れた。