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――凍てつく寒さが極寒の大地に吹き荒れた。外の景色は、暗闇へと沈みかけていた。外で捜索にあたっている看守達は、松明を片手に逃げた囚人の捜索にあたっていた。そして、ギュータスとケイバーはクロビスの命令により仕方なく外の捜索にあたることにした。ケイバーは防寒着を着ると、鏡の前で服を整えながら愚痴をこぼした。
「クソッ……なんで俺が! 俺はマジで寒いの苦手なのによ、恨むぜオーチスの野郎!」
ケイバーが鏡の前で愚痴るとギュータスは椅子に座ったまま彼に言い返した。
「ケッ、根性なしのヘタレのもやし野郎が愚痴なんかたれてるんじゃねーよ!」
ギュータスはそう言い返すとブーツの紐をきつく結び直した。
「もやしで悪かったな~デカブツの大将さん。俺はアンタよりかは、デリケートなんだよ」
ケイバーは鏡の前でギュータスに、その事を嫌味ったらしく言い返した。
「てめぇがデリケートだって? ハン! もやし野郎の癖によく言うぜ」
ギュータスはそう言い返すと、ブーツの紐を結び直して椅子から立ち上がった。ケイバーは鏡の前で今度は自分の髪型を綺麗に整えると、両手にワックスをつけて前髪をオールバックに仕上げた。
「品の欠片もないようなデカブツのお前よりかは、俺の方が品があるのは確かだな。みろよこの男前で凛々しい顔立ち。自分で惚れぼれするぜ、自分に向かってキスしたいくらいだ」
ケイバーはそう言うと鏡に映った自分にみとれていた。
「もやし野郎の上にナルシストだったとはな、恐れいったぜ。マジでリスペクトしてやりてーよ」
ギュータスは不意にそのことを言うと、離れた所でケイバーを見て笑った。
「デカブツのアンタに俺様の美貌をおそわけできないのが残念だ。品がなくて、ガサツなあんたは、せいぜい斧を振るくらいだろうけどな。クロビスはな、あーみえてガサツな野郎が一番大嫌いなんだ。主君様に気に入られたかったら少しはその身だしなみを気にしたらどうだ?」
ケイバーはその事を言うとギュータスをチラリとみて鼻で笑った。
「言ってくれるじゃねーか。てめぇの美貌なんざ、クロビスとリオファーレの前じゃ敵わないぜ。美人で良い男は、あいつらみたいなのを言うんだよ。3人一緒に仲良く並んだ所でもお前はあいつらのおまけ付きみたいなもんだ。まあ、お前はあいつらの引き立て役にはなるかもな!」
ギュータスはその事を言うと可笑しそうに笑った。
「なっ、なんだとてめぇ! この俺様があいつらの引き立て役だと……!?」
ケイバーはその言葉に逆上すると、目の前の鏡を拳でおもいっきり割った。
「確かにクロビスには敵わないけどよ。何で俺様が"アイツ"より下なんだよ!? 俺様はアイツより勝ってるはずだ! あんなヤツに俺様の美貌が負けるはずがねー! 今の言葉、訂正しやがれッ!」
ケイバーは怒り狂うと、物凄い剣幕で怒鳴り散らした。
「なんだよリオファーレに嫉妬か? そりゃあ、悪かったな」
ギュータスはそう言い返すと、下を向いてニヤニヤした顔で笑った。