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――濃い霧が包む真夜中のロンドンに、怪しい人影が2人蠢いていた。彼らは街外れの誰もいない廃墟で待ち合わせするとそこで密会をした。
「オーランド公爵！ あれは間違いなく、例の人形でございます！ ええ、そうですとも…――！ 間違いありませんよ……！ もしやと思ってあの者に試したところ、あの人形は人間に姿を変えたのです……！」
「おお、やはり愛玩ドールであったか…――！ 姿を持たない人形こそ、あれはまさしく愛玩ドールの証。どんなにこの日を幾年も長く待ち望んでいた事だろうか……！ やっとついに見つけたぞ！ 我が愛しの、愛玩ドールを！ 欲しい……！ そしてこの手で私の理想を描くのだ…――！」
「オーランド公爵、如何されますか？」
「ええい、どんな手段を使ってでも必ず取り返せ！ あれは私の人形だ！ 誰にも渡すものかっ！！」
オーランドと呼ばれる男は、そこで取り乱したように話すと、愛玩ドールを必ず取り戻せと激しい口調で命じた。
「はい、仰せのままにオーランド公爵……！ あの者から必ずや、愛玩ドールを奪い返して見せます――！」
「失敗は許されないぞ。慎重に行動をとれ、いいな？」
「了解しました。では公爵様、ご機嫌よう――」
怪しい者はそう言って優雅にお辞儀をすると暗闇の中に姿を消した。オーランドと呼ばれる男は怪しい者と密会を済ますと、自分の馬車に乗せていた少女に話しかけた。そして、少女の細い長い髪を指先でなぞると愛しそうな顔で彼女の髪の匂いを嗅いだ。そして、瞳には僅かな狂気を秘めた。
「愛玩ドール。必ず我が手に入れよう、ああ。愛するこの子の為にも必ずだ…――！」
男は少女を乗せた馬車に乗ると、霧が濃いロンドンの都を馬車を走らせて姿を消した。
