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ジャントゥーユが紙切れをみつけると、ギュータスはそれを確かめる為、その紙を渡せと急かすように言ってきた。しかし、ジャントゥーユはそれを渡そうとはしなかった。自分がクロビスに直接渡すと言い張ると、そそくさと牢屋の外に出て行った。そして、そのまま出口へと向かって行った。自分の言うことを聞かないジャントゥーユに、ギュータスはしびれを切らすと後ろから声をかけるなり揺さぶりをかけた。
「おい、本当にその紙はオーチスが囚人に渡した紙なのか? もし違ったらどうするんだ。中を確認しないでクロビスに渡す気か?」
ギュータスがそのことを言うと、ジャントゥーユは其処で立ち止まって振り返った。
「……確認?」
「そうだ。渡す前に中身を確認しろ! 中身を確認しねーで渡してもそれがもし違う紙だったら、お前はきっとクロビスに八つ裂きにされるぜ?」
ギュータスはそう言うと嫌味っぽく言ってから笑って見せた。
「今日はアイツは頭がキレてるからな……不機嫌なのにそれに拍車をかけるような真似は、俺だったらしないぜ?」
彼がそう話すとジャントゥーユはその必要はないと言い返した。
「中身を確認しなくてもわかる……」
「本当かぁ? 本当にそうなのかぁ~~?」
ギュータスはさらに揺さぶりをかけた。しつこく聞いてくると、ジャントゥーユは手に持ってる紙を見て、自分で中身を確認しようとしたが、彼には字が読めなかった。ギュータスはそのことを知っていて、さらにジャントゥーユを揺さぶった。
「お前、あたまバカだから字が読めねーんだよな。クロビスに聞いたぜ? 字が読めねえ癖に、中身を確認してもなんて書いてあるかわからないんじゃないのか? かえーそーだからよ、代わりに俺が中を確認してやるよ。だからそれをさっさとよこしな!」
彼はそう言うとジャントゥーユから紙を横取りしようとしたのだった。ジャントゥーユはバカにされると、絶対に渡さないと言って部屋から出ようとした。するとギュータスはシビレをきらして奥の手にでた。彼が可愛がっているネズミを素手で1匹捕まえると、それを握り潰すと言って脅しをかけた。ネズミの悲鳴と共にジャントゥーユは後ろを振り返った。するとギュータスの手の中にネズミが1匹捕えられていた。ネズミは苦しそうにもがいていたが、ギュータスはそんなことお構い無しにさらに手の中で握り潰そうとした。ジャントゥーユは大声で「やめろ!」と叫んだがギュータスはケラケラ笑ってやめようとはしなかった。
「ほら、さっさとその紙をよこせ! でないとお前が大事にして可愛いがってるお友達をこの場でミンチにしちまうぜ!?」
ギュータスはそう言うと、悪顔を浮かべながらケラケラと笑った。手の中に捕われているネズミはさらに悲鳴をあげて暴れた。怪力男と呼ばれるギュータスにとっては、ネズミを1匹握り潰すことは簡単だった。それこそ林檎を素手で、握り潰す事なんて簡単で容易かった。彼はそんな凶暴な性格の持ち主だった。ギュータスはギラついた目をしながら、再び紙をよこせと脅しをかけたのだった。
ジャントゥーユは自分が可愛がっているネズミを助ける為に彼に紙を渋々渡した。紙を受けとると、彼はそこでネズミをジャントゥーユの方へと乱暴に投げ飛ばした。そして、1人でニヤツキながら笑ったのだった。投げ飛ばされたネズミをジャントゥーユは受け止めるとネズミは怖がって怯えていた。そして、もう1匹のネズミはどこかに隠れて消えたのだった。ジャントゥーユは無言で睨みつけたが、ギュータスはゲラゲラと笑って気にも止めなかった。そして、手柄は俺のモノだと言うと、さっそく紙の中を確認したのだった。紙にはこう書かれていた「ダモクレスの岬」と。それだけではなく他にも脱獄する為に必要な情報が書かれていた。ギュータスはその紙をみるなり豪快に笑いだした。
「ついにみつけたぜ、決定的証拠をな! やっぱりアイツは黒だったか!」
ギュータスは大きな声をだしながらそう言って笑い続けたのだった。
「こうしちゃいられねー、早くクロビスにこのことを知らせないとな!」
彼はニヤつきながらそう話したのだった。
「ジャントゥーユ、やっぱりテメェは間抜けな奴だぜ!」
ギュータスは彼に向かって悪態をつくと、バカ笑いをした。そして、足早に部屋を出て行った。2人が紙切れを見つけた頃、拷問部屋に年老いた看守の男。ジュノーがクロビスに呼ばれて訪れた。老人の男にケイバーが二三通り質問した。しかし、ジュノーは耳が悪く。質問しても答えるのに時間がかかった。ケイバーが再度、質問するとジュノーが再び聞き返すといったその繰り返しだった。同じことを三回尋ねると、ジュノーはようやく話が聞こえた。そして、彼の質問に頷いて答えたのだった。昨日はオーチスが無断で持ち場をはなれて、逃げた囚人がいた塔に向かって行く所をみたとそう証言した。ジュノーがそう答えると、クロビスは黙ったまま笑みを浮かべた。それはどこか冷酷な顔にも見えるような冷たい微笑の笑みだった。