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コンビニおもてなしの2月の光景

 ヤルメキススイーツで働くことになったミクランなのですが、とにかくすごい張り切り具合です。

 コンビニおもてなしの2階にありますおもてなし寮で暮らすことになったミクランなのですが、誰よりも早く厨房へと出向いては厨房の掃除から作業をしてくれています。
 いつも一番のりをしていた魔王ビナスさんよりも早くに厨房へやってきているもんですから
「あらあら、この新人さんってばなかなかやりますわねぇ」
 って言って褒めてたんですけど……魔王ビナスさんってば、翌日はいつもよりも1時間近く早く出勤してミクランよりも早くに出勤してたもんですから……
「いや、ビナスさん……そこまでしなくてもいいですから。それにミクランも、もう少し遅くてもいいからね」
 といって、2人にセーブするように声をかけないといけなくなったほどでして……

 とはいえ、

 ミクランの加入で、ヤルメキススイーツ部門が強化されたのは間違いありません。

 育休から復帰後、すぐにフル回転で頑張ってくれていたヤルメキスなのですが、昨年末のクリスマスケーキならぬパルマ生誕祭ケーキをはじめ、人気商品を投入しまくっていたヤルメキススイーツは現在大人気でして、いくら作ってもすぐに売り切れてしまうほどの人気ぶりなんです。

 オトの街のラテスさんとヨーコさんが作成して納品してくれているロールケーキも、その人気の一翼を担っている次第なんですよね。

 時々やってきてくれるテマリコッタちゃんが
「さぁみなさん、これを試食してもいいのよ! 私の大好きなヨーコさんとラテスさんが作ったすっごく美味しいロールケーキなんだからね!」
 笑顔で試食を配布してくれるのも、人気の一因だったりします。

 ヤルメキススイーツ料理教室の方も結構好評でして
「次はいつなのかしら?」
「今度は参加したいんですけど」
 といった声が、コンビニおもてなし本支店に数多く寄せられているもんですから、第二回を早くも企画している次第です、はい。

 ちなみに……

「その……だ、第二回にはアタシも参加させてよね」
 と、頬を赤く染めながら参加を表明してきたのは、他ならぬファラさんでした。
「べ、別にあれよ。ピラミやフク集落の子供達用のチョコレートケーキは予約してるからいいんだけどさ、て、手作りのチョコレートケーキを作ってあげたら、あの子達も喜ぶかしらなんておもってないんだからね!」
 と、予想通りのツンデレを爆発させながら、出来上がったばかりの第二回ヤルメキススイーツ料理教室参加用紙に記入していた次第です、はい。

 こんなファラさんですけど……宝物を守る龍として、その宝物を奪いにやってきた人達をことごとく返り討ちにしていたという、とんでもない龍なんですから……ホント、人は見かけによらないと言いますか……

 しかしあれですね……

 そんな龍人さんが、ファラさん以外にも、ファラさんの血縁にあたるファニーさんがいて、
 この世界とは別の世界の魔王だったビナスさんがいて、
 元神様みたいな存在だったララデンテさんがいて、
 さらに、この世界唯一の伝説級の魔法使いであるスアが魔法薬を製造販売してくれているという……

 こうして考えると、このコンビニおもてなしってば、とんでもない人材の宝庫になっていたわけなんですよね、いつの間にか……

 そんなすごい人達を、僕みたいななんの強みも取り柄もない、ごくごく平凡な一般人が店長として雇用させてもらっていてもいいんでしょうかね……なんか時々、そんなことを思ってしまう今日この頃だったりします、はい。

◇◇

 そんなコンビニおもてなしなのですが……最近はパラナミオがバイト的な立場で本店のお手伝いをしてくれています。

 と、言いますのも……パラナミオはこの春で学校を卒業しまして、晴れて成人になるんですよね。

 まぁ、成人といいましても、僕がもといた世界で言うような20歳ってわけではありません。
 こちらの世界の成人は15歳なんですよ。

 龍人で、亜人種族のパラナミオは、人種族の子供達よりも幼い時期の成長具合がかなり早いもんですから、入学して1年少々で、人種族の成人同等ってことに認定されたわけです、はい。

 そんなパラナミオと入れ替わるようにして、今度はリョータ・アルト・ムツキそしてアルカちゃんの4人が新たに学校に通うことになっています。

 もっとも、この4人もですね、エルフ族であるスアの血を引いているリョータ・アルト・ムツキに加えて、猿人のアルカちゃんですから、一般的な人種族よりも子供時代の成長具合がかなり早めなんですよね。
 以前は、成長魔法を自分で自分にかけて人種族で言うところの10歳くらいの姿を維持していたのですが、今では素の状態で10歳手前くらいの姿になっていますから。

 そんなみんなは、今でも僕と一緒にお風呂に入ってくれています。
 男性は僕とリョータだけですけど、パラナミオ達はそんなこと一切気にすることなく
「パパ! 早く一緒にお風呂に入りましょう!」
 そう言って、僕の手を引っ張ってくれるんですよね。

 そんな感じで、ほぼ毎晩一緒にお風呂に入っているもんですからあまり気がついていなかったのですが……

 こうして見ると、パラナミオも本当に大きくなったなぁ……と、改めて思う次第です。

 サラマンダーのパラナミオは、今でも脱皮しているのですが、以前は月に2,3回脱皮していたのが、最近では1,2ヶ月に一回と、頻度がすごく少なくなっているんです。
 その代わり、脱皮によって排出される鱗の大きさも、以前の倍くらいになっているんですけどね。

 スタイルに関しては……その、なんと言いますか、養女のため血はつながっていないはずなのですが、見事にスアと同じ……いや、スアよりは少しメリハリがある感じです、はい。

 これには、スアもコクコク頷いて賛同してくれています、はい。

 スアとしても、パラナミオやリョータ達の成長が嬉しくて仕方ないんでしょうね。
 パラナミオが入学したときに、その記念として鞄をプレゼントしてあげていたのですが、それを見た魔王ビナスさんがですね、

「……店長さん、あの鞄ですけど……巧妙に隠蔽されてますけど

 対魔法防御魔法
 対物理攻撃防御魔法
 
 他、100近い魔法が付与されていまして……伝説級のアイテムになっておりますわ……」
 そう言って目を丸くするほどの代物だったそうなんです。

 幸い、そういった魔法のお世話になることもなく、パラナミオは学校生活を終える事が出来そうです。
「パラナミオはですね、卒業したらコンビニおもてなしで働きます! パパ、よろしくお願いいたします」
 そう言って、頭を下げるパラナミオ。
 そんなパラナミオに、僕も
「うん、こちらこそよろしくね、パラナミオ」
 そう言って、その頭を撫でました。

 すると、パラナミオは少し肩をすくめながら、嬉しそうに微笑んでいたのですが、

「パパ! 僕もお休みの日にはお手伝いします!」
 そう言って僕の側に寄ってきたリョータを筆頭に、
「私もですわ、父上様」
「ムツキもにゃしぃ!」
「お父様、アルカも今まで通りヤルメキススイーツ頑張るアルよ」
 と、みんなが僕の側に寄ってきた次第です。

 そんなみんなの頭を、僕は順番に撫でながら、
「うん、みんなもよろしくね」
 そう言いました。

 みんなも、パラナミオ同様に、嬉しそうに微笑んでいたのは言うまでもありません。

 ちなみに、そんな子供達の様子を少しうらやましそうに見つめていたスアには、夜しっかりとご褒美を……えぇ、その内容に関しましてはいつものように黙秘させていただきますが、この夜のスアはいつもより可愛く思えたとだけお伝えしておきます。

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