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113章 ペットショップを尋ねる

 アカネは「なごみや」に足を運ぶ。こちらにやってくるのは、かなり久しぶりである。

「なごみや」の店内では、100人くらいの客が待っていた。この人数だと、3~5時間くらいは待つことになりそうだ。アカネがやってこない間に、人気店に変化を遂げることとなった。

 人数が多いとあってか、活気が伴っている。以前は感じられた、落ち着いた雰囲気は消滅していた。のんびりとしたところに魅力を感じていただけに、寂しさを覚えることとなった。

 順番待ちをしようかなと思っていると、住民から声をかけられることとなった。ここにおいても、個人の自由は尊重されないようだ。

「アカネ様だ」

「アカネ様・・・・・・」

「アカネ様・・・・・・」

 名前の後ろに「様」を、つけるのはやめてほしい。一般人として生きてきたからか、大きな抵抗がある。「様」づけで呼ばれるのであれば、「おい」、「こら」の方がまだましである。

「アカネ様、握手をしてください」

 握手を求める人間の一部には、男性も含まれていた。手を繋ぎたくない、異性と握手するのは抵抗が大きい。

 同性であったとしても、ほぼ同じようなものだ。18歳という年齢もあってか、接触に対して、敏感になっている。

「申し訳ないですけど、握手の対応はしていません」

 握手がダメだとわかると、ノートを取り出していた。これだけで、おおよその見当がついた。

「アカネ様、サインをください」

 一部の客はノートではなく、カメラを手に持っていた。

「アカネ様、写真をお願いします」

 一枚でも写真を撮らせてしまったら、瞬く間に拡散することになる。写真を撮られるのは、絶対に避ける必要がある。

 このままだと、ペットと戯れるのではなく、住民と戯れることになりそうだ。これでは、「なごみや」に来た意味がなくなりかねない。

「アカネ様・・・・・・」

「アカネ様・・・・・・」

「アカネ様・・・・・・」

 これ以上は放置できないと思ったのか、20くらいの女性店員が、客に注意を促していた。

「アカネさんは客としてやってきています。必要ないと思われる行動は、慎んでいただきます」

 これくらいで収まるわけはなく、いろいろな人から声をかけられることになる。アカネは我慢することができず、店を飛び出してしまった。英雄としてたたえられているはずなのに、集団いじめを受けているような気分になった。

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