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111章 地雷処理

 アカネ、ココアはラーメン店をあとにする。

「アカネさん、今日はありがとうございました」

「ココアさん、機会があったら、一緒に行こうね」

「はい。よろしくお願いします」

「今度はどこに行きたい?」

「鍋を食べてみたいです」

「わかった、一緒に行こう」

「次のときは、子供を連れてきてもいいですか?」

「いいよ。みんなで食べよう」

 鍋、焼肉などは人数が多いほど、おいしく感じられるようになる。材料は変わっていないのに、そのように感じるのはどうしてなのだろうか。

「子供が待っているので、私は帰ります」

「ココアさん、一人で帰るのはだいじょうぶかな?」

 若い女性が一人で帰ると、思わぬトラブルに見舞われかねない。アカネとしては、家まで送り届けたい気分だった。

「はい、だいじょうぶですよ」

「もしものことがあったら・・・・・・」

 若い女性が一人で帰ると、襲われるリスクがある。アカネが同行することで、襲われる可能性
を完全に排除したい。

『「セカンドライフの街」では、夜間に弱者に手を出したら、死刑となっています。そのこともあって、夜間の犯罪はほとんどありません』

 法律を厳しくすることによって、治安を保っている。合理的ではあるものの、他人を信じていないともいえる。バランスというのは、非常に重要なのかもしれない。

「私は帰ります」

「気をつけてね・・・・・・」

 アカネも家に帰ろうとしていると、ミライから声をかけられる。

「アカネさん・・・・・・」

「ミライさん、どうしたの?」 

「お金のことはすみませんでした。姉妹の貧しさを知っていたので、そのままにしておくことは
できませんでした」

「気にしなくてもいいよ」

「でも・・・・・・」

「家族を助けたいという、優しさに感動したよ」

 自分たちも苦しいはずなのに、兄弟のことも考えることができる。ミライの度量の大きさに対して、心から感動することとなった。

「そのようにいってもらえると、とっても救われるような気がします」

「ミライさんが優しそうな人だから、1憶ゴールドを渡したんだ。助けたくない人間だったら、
手を差し伸べようとはしないよ。私はその分別については、厳しくしているんだ」 

「心の癒し屋」には、1ゴールドすら渡さなかった。彼らに対して、お金をプレゼントしようという気分にはなれなかったのである。

 ユラについても、お金はプレゼントしていない。遠慮を知らない人間にお金を渡したら、収拾がつかなくなる。のらりくらりとかわすのが無難といえる。 

 二人の話を聞いていた、ココアが口を開いた。

「私からすれば、1憶ゴールドを渡せることの方がすごいですよ」

「そうかもしれないね」

 初対面の女性に1億ゴールドを渡す。勢いだったとはいえ、すごいことをしてしまった。

「アカネさんがお金をくれたおかげで、ラーメン店の店主を救うことができました。お金がなければ、店主は地雷の仕事をやっていたかもしれません」

 地雷処理は誰にも挑戦でき、1兆ゴールドの成功報酬を得られる。リスクは非常に高いものの、一般庶民が大金を得られる数少ない手段といえる。

「地雷処理については、私も考えたことがあります。バナナ生活を脱却するためには、命を危険にさらさなくてはなりません」

 自殺未遂を頭に入れるほど、追い詰められて生活を送っていたのか。そのことを知ると、胸に痛みを感じることとなった。

「地雷処理の仕事は失敗したときに、家族に1500万ゴールドが配られることになっています。家族を助けたい一心で、地雷処理に参加する人もいるみたいです」

 正常な判断ができるのであれば、地雷処理に参加することはないと思われる。地雷処理の仕事を受けた時点で、まともな判断を下せなくなってしまっている。

「アカネさんが地雷処理をしてくれたおかげで、住民にお金が配られることになりました。働い
たときの給料もアップしました。本当に助かっています」

 地雷処理の脅威が取り除かれていたため、スムーズに仕事することができた。超能力あってこその、仕事といえる。 

「アカネさんは地雷を踏まなかったんですか?」

「何個か踏んだよ・・・・・・」

 地雷を除去する前に、2個くらいの地雷を踏んだかな。数についての記憶は、おぼろげとなっている。

「身体はだいじょうぶなんですか?」

「うん。地雷を踏んでも、異常はまったくなかったよ」

 超能力のおかげなのか、身体はダメージを受けなかった。現実世界では絵に刺されるよりも、痛みを感じることはなかった。

「アカネさん、腕に触ってもいいですか?」

「いいよ」

 ココアが腕を掴んだ。力仕事をしているのか、腕っぷしはかなり強かった。

「触っただけでは、通常と何も変わりません」

 見た目は通常の人間と同じである。それゆえ、特殊能力を持っているようには映らないのではなかろうか。

「こんなことをいってはいけないのでしょうけど、地雷処理の仕事ができるのは羨ましいです。これさえできれば、一生食べ続けることができます」

 超能力を持っているおかげで、莫大な富を築くことができた。そのことについては、すごくよかったと思う。

「私も超能力が欲しいです・・・・・・」

 ココアは空を見上げると、流れ星が流れていた。彼女の願いが、星に届いているといいな。






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