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177 何かがある


何かがある気がする。

ゲンの言う通り、おかしいことが多い。
石の行方も気になるけど、何より

『『ジーニ様、ゲンの言う翡翠という石の持つ意味、あれは…』』
〖〖 そうね。バート、私も同じことを思っていたわ〗〗
バートがみんなに聞こえないように念話で話しかけてきた。
生命と再生…その石が持つ意味が示すもの。ただ、今はあくまでも憶測でしかない考え。それをみんなに伝えるべきかは…

『ジーニ様、やっぱり何かあるんだろうか?』
ゲンが心配そうに聞いてくる。どう答えるべきか…

『『ジーニ様、私は近い内に皆様にお話された方がいいと思います。ですが、まずは主神様とシア様に報告をしてからの方がよろしいかとも思います。主神様方にもお考えがおありかもしれません』』
〖〖そうね・・・〗〗
そう。口にしてしまうことで影響が出てしまうかもしれない。やはり、まだ全てを話す訳にはいかないか・・・

〖ゲン、ごめんなさい。明日の朝、バートに天界に帰ってもらうわ。それで主神とシアにも話を聞いてもらって、天界の意見も聞きたいの〗
もしかしたら、向こうの世界の神と連絡をとる必要があるかもしれない。だとすると
〖私の独断では話せないの。ただ、約束するわ。話せることは必ず話す。だから、もう少し待ってほしいの〗
『私からもお願いいたします。ことは思いの他、重要なことかもしれません』
待って欲しいとお願いするしか出来ないことがもどかしい。
あの元気なゲンが体を小さくして震えている。
『頼みます。俺はサーヤのあの目はもう見たくない』

あの目、翡翠はおばあちゃんだからダメだと言った時の空っぽなサーヤの目…あの時とっさに精神操作をしたけれど、いまだに思い出すと手が震えるわ

『ここに来た時、心底嬉しかったんだ。キヨさんと一緒にいた時のサーヤの笑顔だったから。なのに、さっきの顔は俺が初めてサーヤに会った時と最後に会った時の顔だ。俺が一番見たくない顔。絶望を通り越して空っぽになった顔だ』

ゲン…あの顔をしたサーヤに心を吹き込み、あの笑顔にするまでどれだけ大変だっただろう。サーヤのお祖母さんとゲンにはどれだけ感謝したらいいか。それなのにヤツはその努力さえも嘲笑い、奪い去った。何がなんでも今度こそヤツを倒さなければ。そして……

〖ゲン。私達も同じよ。サーヤにはいつも笑顔でいてもらいたい。サーヤのお祖母さんとゲン、あなたが取り戻してくれた笑顔で〗
『ええ。そのためには天界一同、協力も努力も惜しみません』
バートと一緒にゲンに伝える。私たちの思いは真剣だと、真実だということを信じてもらうためにはどこまで話せるか…
〖…ゲン〗
『ジーニ様っ』
バートが止めようとするが、こちらも覚悟があることを示さなくては。バートの目をじっと見つめる。
『……』
無言で頷いてくれた。ありがとう。
〖ゲン、もしかしたらこの話は世界をまたぐかもしれないの。あなたたちがいた世界の神にも協力を願わないといけないかもしれない〗

『え?』
世界を跨ぐかもしれないと知ると、ゲンが驚いて顔を上げた

〖ごめんなさい。だから今はこれ以上言えないの。でも、必ずその時が来たら伝えるわ。だから、待って欲しいの。お願い〗
『お願いいたします』
頭を下げてお願いするしか出来ないけど。

『分かりました。待ちます。よろしくお願いします』
ゲンまで頭を下げる必要はないのに

『ゲン、私たちもサーヤの為に出来ることをするわ』
結葉…
『そうだ。そのために我もこの地に来たのだからな』
アルコン…二人がゲンを支えるようにして話しかける
『その通りだ。だからゲン、明日また元気な顔をサーヤに見せないとな』
『そうだの。今のその顔は』
『サーヤにはとてもじゃが見せられんのぉ』
ギンや蒼、青磁たちもゲンを励まそうとしてくれている。
『ゲンさん、私たちも強くなります』
『一緒に頑張りましょう』
フゥとクゥのことばにみんなが頷いている。
『ああ。そうだな。ありがとう』
良かった。ゲンの顔に少し笑顔が戻った。みんなの思いが届いてくれたかしら…

〖さあ、それじゃあ、明日みんな元気な顔を見せないといけないから、そろそろ寝ましょうか〗
今日はこの位にしましょう。色々あったもの。

『そうだな。そうしよう』
『そうねぇ』
アルコンたちも賛同してくれる。

〖みんな、お休みなさい〗

『はい。お休みなさい』
『おやすみ~』
次々と部屋を出ていくみんなを見送る。ただ一人を残して


『ジーニ様、あの石の意味はもしや』
〖ええ。天界で眠ったままのあの人が目覚めない理由がそこにあるかもしれない。憶測でしかないけれど〗
『あの石は本当にどちらにあるのでしょうか。サーヤの物の中にもありませんでしたよね』
〖ええ。なかったわ〗
『見つかるでしょうか』
〖分からないわ。ただ、どこを探しても見つからなかった時は、封印してしまったサーヤの記憶を戻さないといけないかもしれない〗
『しかし、そんなことをすれば…』
〖ええ。そんなことしたくはないわね〗
『……』
〖とにかく、主神に伝えてから考えましょう〗
『そうですね…』
まだ知られる訳にはいかない
〖頼むわね、バート〗
『はい。かしこまりました』
全ては明日……

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