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わたしとリサは放課後の教室で喋っている。他の同級生は帰っていった。人がいなくなるのを待っていたのだ。今日こそゆっくりリサと話をしようと思っていたので、願いがかなったか形だ。

リサも話してくれるつもりなのか、ぼんやりと自分の机に座っていた。

わたし他の生徒が帰った事を良い事に、リサの前の席に座りリサの方を向く。

リサもそのタイミングを待っていたのかわたしの方を見ていた。

「ねえ、パル。ずっとおかしいと思ってるでしょう?」

「正直に言えば思ってる。どうしてお兄さんの方だけ優遇されているのかなって」

「正直に言えば? わたしだけ仲間外れだって。わたしもそう思うもの」

パルの自虐的な発言にわたしは反論が出来なかった。事実、そう感じているので何も言えなかったのだ。わたしが感じているくらいだから本人はもっと思っているだろう。当たり前の事だ。何も反論が出来ない私にリサは仄暗い笑いを浮かべる。わたしが言うのもなんだが子供が浮かべる笑いではなかった。この様子から見ると、リサはずっと疎外感を感じていたことが感じられた。

理由は何だろうかと思っているとリサから続きが聞けた。



「どうしてかは分からないけど、わたしだけ家の中で仲間外れだった。始めは家の手伝いがあんまり上手じゃないから、とか女の子だから、とか考えてたけど、そうじゃないみたい。気が付いたらこうだったから。理由も分からない」

「リサ」

「学校に来るまではよくわからなかった。どの家もわたしみたいだと思ってた。でもね。学校に来ると他の家との違いが分かるから、変だなって思うんだよね。パルの家も仲が良いじゃない? おじさんはパルも事が大好きってすぐにわかるよ。羨ましい。なんでわたしだけが仲間外れなのか理由がわかわない。今までは仲よくしようってずっと頑張ってた。でも、今度の事でもういいやって思ったの。ウチが大変って言うのに、何も教えてくれない。手伝いだけしろってそんなのないでしょ? もういいやって思ってもおかしくないじゃない? だから、そうする事にしたの。パルが聞きたいのって、お父さんたちに言われたんでしょ?」

「リサ。正直に言えばどっちも。かな? おじさん達が気にしていたのもあるし、わたしが気になった。どっちもなの。ごめんね。言いにくい事を言わせてしちゃった」

「いいの。わたしも誰かに言いたかったし。諦めたし」

「諦めたの? おじさん達に確認しなくていいの?」

「今までも何回も聞いたよ。でも、子供は気にするな、とか。気のせいとか。いろいろな理由を付けて何もおいせてくれないだもん。諦めた」

「私が聞いてもそうかな?」

「そうじゃない?パルは何が理由だと思う?」

「私は心配を掛けたくたくないんだと思ってたんだけど。そんなに前からだっただら、ちがうのかな?」

「ねえ、親と仲がいいって、どんな感じ?」

「どんな感じ?」

リサの問いかけに、わたしは言葉が詰まる。そんな事は考えたこともなかった。わたしは日本にいた頃も親とは関係背は良好だった。もちろん、意見の食い違いはあるが決定的に関係背が破綻するようなことは無かったのだ。そういう意味ではおおむね問題が無かったと言える。リサが悩むようなことは無かったのだ。仲が悪い事がなかったので、比較ができない。問題として上がるようなことがなかっただけにリサに的確にこたえることは出来なかった。

「どんなって。ごめん。分からないわ」

「分からないって、そんな事、ないでしょ? 楽しいとか。なんでもいえるとか。あるでしょう?」

「リサはそういう感じが普通の家って思ってる? 」

「違うの?」

「違わないけど。普通っていろいろだよ。家の数だけ普通があるんだから」

「優等生だね」

リサの満足できる答えは用意できなかったみたいだ。わたしが家庭問題に首を突っ込む事は違うと思うが友達としてリサの事を知らない振りをする事もできない。

どうすればいいんだろう。

私は決めることもできなかった

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