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デラマンモスパオンを求めて その1

 コンビニおもてなしの新人研修に、マキモさんとその姉妹のみなさん、総勢10名が加わって数日経過しました。

「店長さん、マキモさん達、ほんとに筋が良いですわ。この調子ですと10人そろって年内にはコンビニおもてなしに配属出来そうですわよ」
 魔王ビナスさんも、笑顔でそう言ってくださいました。

 ……ですが

 その言葉からは、最後までウルムナギ又の言葉は聞かれませんでした。
 彼女達も頑張ってはいるんですけどねぇ……3歩歩いたら全部忘れてしまう、鰻もどきなウルムナギ又なのに鳥頭とはこれいかに……な状態なわけでして……
 やる気と気合いは人一倍だからこそ、魔王ビナスさんも、ため息をつきながらもみんなの面倒を見続けてくれている次第なんですよ。

 なんとか報われて欲しいと思う次第です、はい。
 
◇◇
 
 そんな中……

 クマタンゴさんから手紙が届きました。

 クマタンゴさんは、先日僕達一家が遊びにいったチウヤゲレンデでおもてなしゲレンデ宿を経営してくれている方です。

 その手紙によりますと、
『おかげさまで、チウヤゲレンデには連日多くのお客様がお見えになっていて宿も盛況クマ』
 とのことでした。

 この手紙は、一日2往復だけ運行している定期魔道船で届けられました。

 そうなんです。
 ナカンコンベやブラコンベといったこのあたりではかなり大規模な部類に分類される辺境都市を定期的に周回している定期魔道船が1日2回とはいえ就航するようになったものですから、

「チウヤゲレンデかぁ」
「ちょっとおもしろそうね」
「温泉もあるみたいだし」

 そんな感じで、足を伸ばしてみられる方々が日に日に増えている次第なんですよ。

 中には、

「魔導船での空の旅を満喫出来るし、そのついでに」
 そう言われる方も少なくありません。

 そんなわけで、僕やクマタンゴさんが思っていた以上に定期魔道船の就航が好結果をもたらしているようで、就航を決めた僕としましてもほっと胸をなで下ろしている次第です、はい。

◇◇

 ちなみに、その手紙の末尾には追伸として

『デラマンモスパオンが 少し北の地で群生しているようですクマ』

 と書かれていました。

 その地からチウヤゲレンデまでの間には切り立った渓谷があるそうで、すぐに危険というわけではなさそうなのですが、クマタンゴさんの手紙からは心配なさっている様子がありありと伝わってきました。

 で

 これを受けまして、僕はイエロに相談しました。

 するとイエロは、

「デラマンモスパオンですか、うむ、相手にとって不足はありませんな。ちょうど新人も加わったことでござるし、一度遠征してみるでござる」
 そう言いながら、胸をドンと叩いてくれました。

 それを伝え聞いた鳥人族のコルミナ・豹人族のチハヤス・ゴーレム族のドナーラの、コンビニおもてなし狩猟部門の新人三人も気合い満々の様子でして。

「このコルミナ、今こそ兄を越えてみせますわ!」
「アタシだって、姉さんに負けてないところを見せてあげるわ」
「ドナーラハ、デラマンモスパオンノオ肉ガ楽シミ」

 そんな感じで、3人それぞれ……1人別な意図で気合いが入っている感じですが、まぁ、とにかく頑張ってくれそうです。

 そんなわけで、改めてコンビニおもてなし狩猟部門の面々によります遠征部隊が編成されました。

 今回現地に向かうのは、

 イエロ
 セーテン
 ドナーラ
 チハヤス
 ドドナ

 以上の5名になりました。

 オデン6世さんとグリアーナの2人は、こちらに残っていつものタテガミライオンの狩猟にあたることになっています。
 なお、今回は人数が若干少なくなったこともあり、加えて子育ても一段落したこともありますので、オデン6世さんの奥さんことルアが久しぶりに狩りに同行することになっています。
「へへ、久しぶりだねぇ、腕がなるよ」
 気合い満々の様子のルアなのですが、
「無理……駄目……絶対……」
 その横で、オデン6世さんがオロオロしながらルアの身を案じていた次第なんです。

 確かにオデン6世さんの気持ちもわからないでもないのでですが……やっぱりルアには、狩りに向かう姿が似合っているんですよね。

 その姿を久しぶりに見て、僕もなんだか嬉しくなった次第です、はい。

◇◇

 クマタンゴさんのお手紙の中には、パラナミオをはじめとした我が家の子供達にあてた、クリッタちゃんからのお手紙も入っていました。

 そこには

「また遊びたいクマ。遊びに来てクマ」

 そんな思いがいっぱいかき込まれていた次第です。
 それを受けてパラナミオ達も、
「パパ、またチウヤゲレンデに遊びに行きたいです!」
 そう言っていますので……週末の、コンビニおもてなしがお休みの時にでも、イエロ達の陣中見舞いを兼ねてみんなで行ってみようかな、と、思っている次第です、はい。

 ちなみに、

 デラマンモスパオン討伐に向かうイエロ達は、クマタンゴさんが管理しているおもてなしゲレンデ宿をベースキャンプ代わりにして活動する予定にしています。

 翌朝
「では、行ってくるでござる」
 イエロ達は、そう言うとスアが召喚した転移ドアをくぐってチウヤゲレンデに向かっていきました。

 イエロは、
「今日は様子見してくるでござる。本格的な狩猟方法はその様子を見てから決めるでござるよ」
 そう言っていたのですが……

 その日の夕方、コンビニおもてなしが閉店時間を迎えた直後のコンビニおもてなし本店に、イエロが戻って来ました。
 転移ドアを、イエロ達が宿泊しているおもてなしゲレンデ宿の宿泊部屋につないでいるのですが、それをくぐって戻って来たわけなのですが、
「いやぁ店長殿、大量でござった」
 満面の笑顔のイエロ。

 そう言うと、魔法袋の中身を取り出したのですが……

 いきなりそこに、でっかいデラマンモスパオンの牙が出て来ました。
「こいつを筆頭に、6頭のデラマンモスパオンを仕留めたでござるよ」
「え? もうそんなに!?」
 イエロの言葉に、僕はびっくりしてしまいました。

 いえね

 前回スアが大量のデラマンモスパオンを魔法で仕留めた際に、クマタンゴさんに教えてもらっていたのですが、
「デラマンモスパオンは手練れの冒険者が10人がかりで、数日かけて1頭倒すクマ」
 それを覚えていただけに、
「いくらイエロ達でも、一度に1,2頭仕留めることが出来たら御の字かな」
 とか思っていたのですが……様子見のついでに6頭も狩ってきたというのですから、ホントびっくりです。

 で

 イエロの報告によりますと、
「北の峠の向こうにはデラマンモスパオンの一大巣窟がございますな。そこで相当な数のデラマンモスパオンが暮らしております。それだけに、少々狩ってもまったく問題なさそうでござる……と、いうか、周囲の集落や村の脅威軽減のためにもしっかり狩るべきでござろう」
 とのことでした。

 これは、スアにも同行してもらって一気に狩った方がいいかもしれないな、なんて思ったりもしているのですが、
「いやいや、ここはぜひとも拙者達におまかせくだされ。新人達も気合い満々でござるゆえ、うまくいくはずでござるよ」
 イエロが、笑顔でそう言いましたので、しばらくはそんなイエロ達に任せてみようと思っている次第です、はい。

 しかし

 そんなイエロ達のおかげで、デラマンモスパオンの肉を定期的に仕入れることが出来そうです。
 味はすごくいいものの、追加入手の目処がたっていなかっただけに、このイエロの報告はコンビニおもてなしにとっても朗報でした。

 とりあえず、僕は今回イエロが持ち帰ってくれたデラマンモスパオンを使用して、新しい弁当やホットデリカを考案してみようと思っています。

 僕に、今日狩ってきたデラマンモスパオンを渡し終えたイエロは、
「今夜は宿の温泉を満喫するでござるよ。チョキナの料理も楽しみでござる」
 そう言いながら、おもてなしゲレンデ宿へ戻っていきました。

 コンビニおもてなしがまた忙しくなりそうですね。

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