コンビニおもてなしと新たな……
「まったく、あの小娘にはホント困ったもんだわ」
コンビニおもてなし5号店東店で、店長のシャルンエッセンスと打ち合わせをしていると、何やらファラさんがブツブツ言いながら姿を現しました。
ファラさんはコンビニおもてなし5号店東店の奥にあります、おもてなし商会ナカンコンベ店の運営をしてくれています。
ちなみに……
おもてなし商会は現在3店舗ありまして、
このナカンコンベ店の他に、
テトテ集落店と、ティーケー海岸店があります。
テトテ集落店では、リンボアさんがテトテ集落で収穫された農作物や果物などを仕入れ、
ティーケー海岸店では、ファニーが、ティーケー海岸にあるアルリズドグ商会から魚介類などを仕入れていまして、それをナカンコンベ店のファラさんが、ドンタコスゥコ商会を筆頭にした各種商会や店舗に卸売りしている次第なんです。
で、そのファラさんによりますと
「さっきね、トツノコンベから時々きている小娘が仕入にきてたんだけど……このアタシとしたことが、またあの小娘の言い値で販売しちゃったのよね……なんでかしら、あのさわことか言う小娘にはいつもペースを崩されっぱなしというか……えぇいもう、悔しいったらありゃしない」
ファラさんはブツブツいいながら、気分転換のために街道を散歩しにいきました。
「……ドンタコスゥコさんを毎回涙目にしているあのファラさんがあそこまで悔しがられますなんて……」
シャルンエッセンスが、ファラさんの後ろ姿を見送りながらそう言いました。
「……確かにそうだよねぇ……いや、ホントすごいよね」
その言葉に、僕も頷いていった次第です。
トツノコンベのさわこさん……ファラさんが太刀打ちできないくらいなんですから、きっとすごい人なんでしょうね……
◇◇
とまぁ、そんなおもてなし商会ですけど、売り上げそのものはすごく右肩あがりです。
テトテ集落で仕入れた農作物や果物は美味しいと評判ですし、ティーケー海岸で仕入れた魚介類は、山間のナカンコンベでは超貴重品です。
それに加えて、コンビニおもてなしの狩猟担当をしてくれているイエロ達が仕留めてきたタテガミライオンやデラマウントボアなどのお肉のうち、弁当として加工しなかった分を、このナカンコンベ店で買い入れしてもらってそれを卸売りしてもらってもいるのですが、これも大人気なんですよ。
それらの貴重な品々を求めて、最近では王都に近い辺境都市に店を構えている商会や商店がわざわざ荷馬車隊を率いて仕入にきているくらいですからね。
コンビニおもてなしの本支店も、おもてなし商会に負けずに売り上げを伸ばし続けています。
しばらく前まで売り上げが横ばいだった、オザリーナ村にあるコンビニおもてなし6号店も、最近はかなり売り上げが上がっている次第です。
ここでは、店長のチュパチャップと、店員のアレーナの2人がすごく頑張ってくれていまして、そのおかげでもあるわけです。
ただ、この6号店なんですけど……最初はアレーナと同時期に雇用した新人さんを配置していたのですが、全員諸事情で辞めてしまったんです。
そのため、今の6号店はスア製のチュ木人形を臨時で配置して急場を凌いでいるのですが……早く店員候補を確保して回してあげないと、と思っているのですが……
今のコンビニおもてなしで新人研修をうけているのは、マキモさんと、ウルムナギ又達なのですが……
とにかく試食販売以外がからっきしなウルムナギ又達は、すでに相当な長期間研修を受け続けているにもかかわらず、研修担当の魔王ビナスさんからいまだに許可がおりない状態なんです。
全員やる気はすっごくあるのですが、全員思いっきり空回りし続けている状態といいますか……
一方のマキモさんですが、
「マキモさんは筋がいいですわ。あと1週間もしたらお店に配置出来ますわよ」
魔王ビナスが笑顔でそう言ってくださっている次第なんですよ。
とりあえず、彼女のような人材が、社員募集に応募してきてくれることを祈るしか……
そんなことを考えていた僕のところにですね、
「あの、店長さん、折り入ってご相談があるのですが……」
マキモさんが、真剣な表情でそう言って来ました。
「実はですね……マキモには姉妹がいるのですが……その姉妹のみんなをですね、社員候補として研修を受けさせてもらうわけにはいかないでしょうか?」
「マキモさんの姉妹の皆さんを?」
「はい、特にユウモ姉さんは私以上に頭がよくて美人さんで器量がよくてもう私の憧れの人でして、コンビニおもてなしでもばっちり戦力になること請け合いなのです。カザモをはじめとした妹達もきっと頑張ってくれると思いますの」
マキモさんはそう言って再度頭をさげました。
……確かに、マキモさんは魔王ビナスさんも筋がいいと認めておられますし、その姉妹の人達となりますと期待出来そうな気がしないでもありません。
「ビナスさん、どうですか?」
「えぇ、良いと思いますわ。マキモさんの姉妹の方々でしたら喜んで」
魔王ビナスさんも笑顔でそう言ってくださいましたので、マキモさんには早速姉妹のみんなに来てもらうように伝えました。
それを受けてですね、その翌日にマキモさんの姉妹のみなさんがやってきました。
元々、ガタコンベ近くの森の中で暮らしていたそうなんです。
で、
そんな皆さんを出迎えた僕と魔王ビナスさんの前にはですね……マキモさんを加えて総勢10人の栗鼠人さんがずらっと横一列に並んでいました。
「……マキモさんって、10人姉妹だったんだ」
「はいです」
僕の言葉に、マキモさんは笑顔で頷きました。
で、マキモさんはお姉さんのユウモさんが大好きなようでして、その腕にしっかりと抱きついています。
そのマキモさんも、この10人姉妹の次女にあたるそうでして、その下に8人の妹さんがいるわけです。
そんなマキモさん達は、
「「「よろしくお願いいたします」」」
そう言って一斉に頭を下げました。
その背に、大きな尻尾が見えています。
今日は、それが10個並んでいるわけです。
……相変わらず、あの尻尾ってば気持ちよさそうだなぁ……しかもそれが10個も並んでいるなんて……
僕は、思わずそんな事を考えながらも、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
とりあえずそう言って頭を下げ返しました。
魔王ビナスさんも、笑顔で
「はい、よろしくお願いいたします」
そう言って頷いてくださっていましたので、あとは研修をおまかせしても大丈夫みたいですね。
◇◇
その夜……
僕は、今夜もいつものようにスアの研究室にいました。
いえね、子供達にバレないように、この研究室の中にある簡易ベッドで夫婦の営みを行うのが僕とスアの日課なんですけど……
「スア……今日はまたどうしたの?」
思わず、そう聞いた僕。
そうなんです……僕の前で裸になっているスアなんですけど……そのお尻の部分にでっかい尻尾が生えていまして……しかもそんなスアが今日は10人もいるんです。
多分、分身魔法か何かを使っているんでしょうけど……いったいなんでまた……
……あ、そうか
ここで僕はあることに思いあたりました。
昼間、マキモさんと、その9人の姉妹のみなさんの尻尾をみながら
『相変わらず、あの尻尾ってば気持ちよさそうだなぁ……しかもそれが10個も並んでいるなんて』
そんな事を考えていたもんだから、スアが自分に魔法をかけて、今夜も僕の願いを叶えてくれたってわけなんでしょう。
「「「「「「「「「……旦那様、好きにしていいの、よ」」」」」」」」」」
そう言いながら、10人のスアが僕に寄り添ってきました。
そんなわけで、今夜の僕は……おっと、ここからは黙秘させてもらいますね。
とにかく、すごかったとだけ、お伝えさせていただきます。