93章 変わったトッピング
ラーメン店の前についた。ここではどんな味が食べられるのだろうか。
アカネの一番好きな味は醤油だ。見た目は濃さそうだけど、味はあっさりとしているところがいい。
塩、味噌、豚骨といった味も好みである。タンタンメンのような、味の濃いタイプもよく食べていた。ラーメンならばどんなタイプであっても、食べることができる。
アカネたちは、「ラーメン屋」の暖簾をくぐった。
「アカネさん御一行様、いらっしゃいませ」
ラーメン屋の店主は、ゴッドサマーに視線が釘付けだった。魔物というのは、こちらの世界では目立つのかもしれない。
「アカネ様、このお方は誰ですか?」
丁寧な話し方をしているものの、警戒心はマックスになっていた。見たこともない生物に対して、大きな不安を感じている。
「私の知人だよ」
アカネの知人と知ったことで、表情は幾分和らぐこととなった。
「そうなんですね・・・・・・」
「見た目のインパクトはあるけど、心の中はいたって普通だよ」
ゴッドサマーを傷つけないよう、言葉を慎重に選ぶことにした。
店長は後頭部を軽くさすっていた。
「少しだけ気になってしまったもので・・・・・・」
ゴッドサマーの方に目線を送る。これといった変化は見られなかったので、アカネは胸をなで
おろした。
三人は席に腰かける。ゴッドサマーは身体が大きいのか、椅子からはみ出していた。
「うちのラーメンはおいしいですよ」
自分でおいしいという店に限って、たいしたことはないというのはよくあるパターンだ。アカネのテンションは、10パーセントから20パーセントくらい低下することとなった。
ユラはおいしいと聞いたことで、テンションが大きく上がっていた。アカネはその性格が羨ましいと思った。
ゴッドサマーは反応しなかった。味だけで見極めようとしているのかもしれない。
「麺とスープだけで販売しています」
ラーメンだけが悪いというわけではないけど、トッピングがほしいところ。アカネはトッピングがあるのか、確認を取ることにした。
「ラーメンにトッピングはないんですか」
「別料金を払うことで、肉そぼろ、野菜の盛り合わせ、らっきょう、キムチなどのトッピングをつけることができますよ。詳しくはトッピング表を見てください」
肉そぼろ、野菜の盛り合わせはわかるけど、らっきょう、キムチはないような気がする。こちらの世界に存在するラーメンは、現実世界とは大きく異なるのかもしれない。
トッピングリストのメニューに目を通すと、衝撃的なトッピングを発見する。
「トカゲって何ですか?」
店主はそんなこともわからないのか、といわんばかりにこたえていた。
「トカゲといえばトカゲです。それ以外の何物でもありません」
トカゲはオーストラリア、中国、南米、ヨーロッパなどで食べられている。世界各地におい
て、食用として楽しまれる。
日本においても、トカゲを食べる店は存在する。食用とは考えていなかったので、一度も食べることはなかった。
トカゲの味は、鳥のささみに近いとのこと。見た目は全く異なるだけに、意外な印象を受ける。
トッピングをつける気分ではなかったので、麺だけのラーメンを食べようかなと思った。
「私はラーメンとスープだけでお願いします」
「わかりました」
ゴッドサマーはラーメンとトッピングを注文する。
「ラーメン、肉そぼろ、野菜、メンマ、コーンをお願いするのじゃ」
ラーメン屋の主人は注文メニューをメモしたあと、ユラにどうするのかを聞いた。
「そちらのお嬢ちゃんはどうするの?」
ユラは小さく頷いたあと、衝撃的なトッピングを追加する。
「ラーメン、トカゲをお願いします」
鳥のささみに近いとはいっても、トカゲを食べるのは抵抗がある。アカネは注文することはないと思われる。
ユラはさらに追加注文をする。
「そぼろ、コーン、野菜、メンマ、チャーシュー、半熟卵もお願いしたいです」
他人におごってもらうからか、トッピングのメニューがやたらと多い。ちょっとくらいは遠慮しようとは思わないのだろうか。