83章 第2回目の回復魔法
第二回の病気治療が行われようとしていた。
前回は有料だったものの、今回は無料となっている。お金のない人であっても、病気を治癒を受けられるようになっている。
無料で治療を受けられるからか、長蛇の列ができていた。パット見ただけでも、前回の10倍以上はいる。これだけの数を治すとなると、数日はかかることになりそうだ。
大量の人間を治療するにもかかわらず、報酬はなんと無料。数日以上もかかる仕事を、タダでさせられることになる。アカネだけが損をする、究極のボランティアとなる。奴隷といっても差
し支えないレベルだ。
一人目の治療者は10歳くらいの男の子だった。隣には付き添いの母親がいた。
「ゆ・・・・か・・・・・・・」
何をいおうとしているのか、さっぱりとわからなかった。それゆえ、どのようにしていいのかわからなかった。
アカネが困惑していると、40くらいの女性から詳細が伝えられた。
「この子は聴力を失っているので、耳を聞こえるようにしてもらえますか」
アカネは依頼を理解すると、少年に回復魔法をかけることにした。
回復魔法が終了すると、母親が息子に話しかけていた。
「ヒロシ、音は聞こえる」
ヒロシは小さく頷いたあと、意味不明な言葉を発する。
「が・・・・・こ・・・・・・・」
聴覚障害になると、正しい発音を身に着けるのは難しくなるのかな。アカネは専門家ではないので、その部分はよくわからない。
「アカネさん、ありがとうございます」
少年の次に現れたのは、30くらいの女性だった。火傷をしたのか、皮膚が完全に焼けていた。
「アカネ様、皮膚の病気を治療してください」
「わかりました」
回復魔法をかけると、皮膚は美しさを取り戻すこととなった。
「アカネ様、ありがとうございます」
次は50くらいの男性だった。腰が曲がっていることから、腹痛であるのがすぐにわかった。
「腰の痛みを治してください」
回復魔法をかけると、背筋はまっすぐに伸びていた。
「アカネさん、ありがとうございます」
次は20くらいの女性だった。
「身体の中にある、ぶつぶつを取り除いてください」
「どこにあるんですか?」
女性は場所を知られたくないのか、小さな声で耳打ちをしてきた。
「股からお尻のラインです」
指定された箇所に、回復魔法をかけた。
「アカネさん、ありがとうございます」
治療はきっちりとできているのかな。アカネは一抹の不安を感じることとなった。
次は誰かなと思っていると、こちらにやってきたばかりのユラだった。
「ユラも参加したの」
「はい。今度は足首を痛めてしまいました」
長時間労働をすれば集中力は低下することとなる。そのような状態だと、怪我をする確率は高くなる。
ユラに回復魔法をかけると、なにごともなかったかのように動き回っていた。
次は小学生くらいの女の子だった。
「おねえちゃん、おかあさんの病気を治してほしい」
「おかあさんはどこにいるの?」
「家でぐったりとしているよ」
後回しにしようかなと思っていると、女の子は大粒の涙を流していた。その姿を見ていると、すぐに治療してあげたいと思うようになった。
アカネはすぐ近くにいる、マツリに事情を説明する。彼女は話を聞くと、首を縦に何度も動かしていた。
「アカネさんは治療のために場所を離れます。戻ってくるまでお待ちください」
女の子と一緒に、母親のところに向かう。少女の涙からすると、一刻を争っているような気がしてならなかった。