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81章 セカンドライフの街の労働実態

 仕事を終えたばかりのユラがやってきた。1日しか働いていないとは思えないほど、身体がクタクタになっていた。

「過酷な労働をしているのに、時給1800ゴールドは安すぎます。これでは、満足な生活を送れません」

 付与金が1000ゴールドなので、実質的な時給は800ゴールド。日本の最低時給並のお金となっている。

「ユラはどんな仕事をしたの?」

「重い荷物を持つ重労働です。10キロ以上のモノを持ち続け、ときには20キロのモノを持つこともありました」

 重量物を持ち続けていたら、身体を壊すのは必然だ。人間の身体は重たいものを持てるようにはできていない。

「重量物よりも問題なのは、1日の労働時間です。17時間労働はありえないです。休憩は90分だったので、実働は15時間30分となります」

 1日で17時間も拘束されるのか。20時間勤務の会社よりはマシであるものの、長時間拘束であることに変わりはない。この勤務を続けていたら、身体を壊すのは必然といえる。

 体の筋肉を傷めたのか、ユラはあちこちを抑えていた。

「1日しか働いていないのに、筋肉痛を起こしてしまいました」

 金銭の援助するつもりはないものの、治癒魔法をかけるのはいいかな。

「ユラ、回復魔法をかけるね」

 ユラは弱々しい声で返事をする。彼女の疲労ぶりを表していた。

「はい、お願いします」 

 重労働をした女性に対して、回復魔法を使用する。会社の後輩だからか、治ってほしいという気持ちが強かった。

「痛みが完全になくなりました。アカネ先輩、ありがとうございます」

 回復魔法はありとあらゆる病気を治すことができる。これさえされば、病気で死ぬ人をなくすことができる。

「重労働を続けていたら、いずれかは身体を壊してしまいます。近日中に他の仕事をやろうと思います」  

「その方がいいと思う」

「スーパー、占い屋などをあたってみます」

 ユラは次の仕事を探すために、動き出そうとしている。そのような女性に対して、アカネは声をかけた。

「私はほとんどの病気を治せるよ。困ったときは相談してね」

「アカネさんは、『セカンドライフの街』の医者ですね」

 正式な医者ではないもの、それ以上の役割を担っている。医学の知識を持つよりも、治療できる力を持っている者が強いことを証明した。

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