パルマ生誕祭に向けて その3
パルマ生誕祭に向けて、コンビニおもてなし各本支店並びに出張所で、パルマ生誕祭ケーキの予約がはじまってしばらく経ちました。
去年の実績があるからでしょうか、今年は出足が好調です。
去年は、パラナミオのポスター目当てのテトテ集落の皆様のスタートダッシュがとんでもなかったという裏事情を考慮してもですね、今年はそれ以上の出足になっている次第です。
ポスターの効果ももちろんあったと思いますが、それ以上に大きな要因としましては、やはりコンビニおもてなし5号店東店並びに西店の存在が大きいといえます。
このコンビニおもてなし5号店東店並びに西店があります辺境都市ナカンコンベは、僕達が住んでいる一帯では群を抜いて人口が多い辺境都市なんです。
それだけに、商品やイベントが話題になったり人気になると、売り上げがすごいことになるんです。
で、このパルマ生誕祭ケーキなんですが、予約開始とともに辺境都市ナカンコンベで大人気になったんですよ。
それにはいくつか原因がありました。
まず、試食です。
コンビニおもてなし5号店東店にはウルムナギ又のリーダー的存在のルービアスが店員として所属しているのですが、このルービアスはコンビニおもてなし全店員の中で最高の試食マスターとでも言うべき存在なんです。
とにかくですね、
試食をお勧めするタイミング
試食を告知する楽しげな声
思わず食べて見たくなるような口上
みんなの興味を引かせる前衛的なダンス
もうですね、どれをとっても「試食を配るために産まれてきた女」としか思えないといいますか、そのどのスキルも最高なんです。
そんなルービアスのおかげで、予約数がかなり伸びているのは間違いありません。
次に、宣伝です。
これには外的要因が2つありました。
1つはナカンコンベはの商店街組合が、コンビニおもてなしのパルマ生誕祭ケーキを紹介してくれたことが大きいです。
このナカンコンベ商店街に限らず、宣伝のポスターはコンビニおもてなしがお店を展開しているすべての都市の商店街組合に配布させてもらっているのですが、
「商店街組合月報でも紹介させてもらったですです」
そう、ナカンコンベの商店街組合で働いている蟻人が教えてくれたんです。
この商店街組合月報なんですが、文字通り商店街組合が組合加盟店や購入契約をしている一般家庭などに毎月一回25日頃に発行している冊子なんです。
この冊子は商店街組合に加盟しているお店のことをあれこれ紹介してくれていまして、で、最新号では
「パルマ生誕祭特集」
が組まれていまして、そのトップ記事と表紙でコンビニおもてなしのパルマ生誕祭ケーキが紹介されていたんです。
いや、これ、正直びっくりしました。
事前にですね
「紹介させてもらうかもしれないですですので、ケーキの画像とポスターの画像を撮影させてほしいですです」
といって、商店街組合の蟻人さんが数人、水晶撮影装置をもってお店にこられていたもんですから、小さくでも紹介してもらえるかなくらいに思っていたのですが、まさか一面でかでかのみならず、表紙にまで起用されていた次第なんです。
ちなみに……
この冊子の表紙で紹介されるのって結構大変らしいんです。
相当な人気店でないと表紙や一面には起用されないというので有名なんだそうです。
コンビニおもてなし5号店が開店した際も、後ろの方の
「今月の新開店店舗」
のコーナーで紹介されただけだったんです。
あ、このコーナは都市で開店したお店が全部紹介されますので、特別でもなんでもないんですよ。
その表紙と一面に、開店して一年も経っていないうちの店が紹介されたもんですから、その影響力はすごかったです。
この冊子は25日の朝、あちこちのお店やこの冊子を定期購読なさっているお宅すべてに配布されたそうなんですが……それを見たお客様達がコンビニおもてなし5号店東店並び西店に殺到してこられたんです。
事前に一面と表紙ってことを聞いてなかった僕と5号店東店の店長シャルンエッセンスと5号店西店の店長スシスは揃って油断していたもんですから、朝一でお店に殺到して、パルマ生誕祭ケーキを予約して、ついでに買い物をしていかれる大量のお客様を前にして
「い、一体何が起きたんだ!?」
「ど、どういうことなのでしょう?」
「予想の範疇を超えております」
と、揃って困惑することしか出来なかった次第なんですよ……
で、昼頃に冊子の事を把握した僕は、とりあえずスアにお願いしてチュ木人形を複数派遣してもらいました。
このチュ木人形は意思を持たない木人形です。
単純作業しか出来ませんが、いないよりはマシです。
このチュ木人形達に、品物の袋詰め作業や品切れ商品の補充、店内の清掃などを担当してもらい、どうにかこの日を乗り切る事が出来ました。
そして外的要因のもう一つですが……
このパルマ生誕祭ケーキのことが王都の商店街組合までもが紹介してくれたんだそうです。
えぇ、王都の商店街組合が発行している商店街組合月報でも紹介されていたんです。
これはですね、ドンタコスゥコ商会のドンタコスゥコが教えてくれまして、
「王都方面で、パルマ生誕祭ケーキが絶対うれますねぇ!」
そう言って、とんでもない数のパルマ生誕祭ケーキを注文してくれたんです。
要は、パルマ生誕祭ケーキを仕入れてですね、王都近辺の町や村、辺境都市に出向いていって。
「はいはい、あの王都の商店街組合月報で紹介された、コンビニおもてなし製のパルマ生誕祭ケーキですよ~」
と、言って商売する気なわけです、はい・
まぁ、でも、これはコンビニおもてなしにとってもありがたいわけです。
特にドンタコスゥコは、こうやってコンビニおもてなしから仕入れた商品をコンビニおもてなしが展開していない他の都市で販売する際に、
「この商品はこんなお店で販売しているんですよねぇ」
そう言って、コンビニおもてなしのチラシも一緒に配布してくれているんです。
そのおかげで、口コミによるお客さんも着実に増えていたのですが、今回のこの王都の商店街組合月報で紹介されたというのは、その口コミの度合いというか、規模が桁違いなわけです、はい。
で
「ここが今月の王都の商店街組合月報で紹介されたっていうコンビニおもてなしさんかい?」
そう言って、5号店を尋ねてこられる他の商店の方々の数がすごかったです。
なんでも、この王都の商店街組合月報はですね、王都全土に影響力があるもんですから、空を高速で移動出来る鳥人さん達がその日に配達して回っているそうでして、王都まで1ヶ月近くかかるナカンコンベにも、わずか半日で届くそうなんです。
そのせいで、商店街組合月報の発売日だった25日のお昼過ぎには、ナカンコンベのほとんどの商会の方々がこのことを把握されていてですね、ドンタコスゥコに続いてパルマ生誕祭ケーキの卸売りの相談にこられた次第なんです。
そんな皆様を前にして
「これは今回は楽しいことになりそうですねぇ」
そう言って、ファラさんがとっても楽しそうに対応に当たられていたのですが、ドンタコスゥコを筆頭にほぼ全ての商店の皆さんが悔しそうな表情をなさっておられましたので、おそらくファラさんの全勝だったようですね。
とまぁ、そんなわけで25日は怒濤の勢いで過ぎていった次第でした。
「……こりゃ、明日からもすごいことになりそうだなぁ」
後片付けをしながらそんなことを思っていた僕なんですけど、
「えぇ、だからこそ明日は今日以上に気合いを入れて望みますわ!」
シャルンエッセンスがそう言いながらにっこり笑ってくれました。
「リョウイチお兄様のお店が繁盛するのは、私の喜びでもございますから」
「そう言ってもらえると嬉しいよ、ありがとうシャルンエッセンス」
僕は、そんなシャルンエッセンスにお礼をいいながら、僕自身も気合いを入れ直していた次第です。