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73章 ミライが絵を描く

「アカネさんの絵を展示すると聞きました。私はとっても楽しみにしています」

 アカネは自嘲気味に呟いた。

「期待するような絵はできそうにないかな・・・・・・」

 天才的な絵を描ける、幼稚園児にも勝てないようなレベルである。自分の絵を見ているだけで、悲しくなってくる。

 ミライは落ち込んでいる、女性の肩に手を乗せる。彼女自身の持つ温かさが伝わってきた。

「絵をうまく書いた人が求められるのではなく、求められる絵を描けた人が勝者ですよ」

 天才といわれた〇〇〇は、常人からすれば理解のしがたい絵である。高値を付けている人は、どこを評価しているのだろうか。アカネは何度も見たものの、ガラクタの集まりにしか思えなかった。

「アカネさんの絵なら、プレミアがつくのではないでしょうか」

 絵が上手だからではなく、個人に対する評価を反映させている。アカネとしては、絵のうまさを認められたかった。

「私も絵を描いてみていいですか?」

「ミライさんは絵を描けるの?」

「一度も描いたことはないけど、なんとかなるような気がします」

 絵の授業を受けなかったとしても、上手に書ける人は存在する。美的感覚というのは、個人差によるところが大きい。

「集中したいので、絵を描いている間は声をかけないでくださいね」

「わかった。絵が完成するまで、睡眠をとってるね」

 睡眠をとるのは340時間ぶりなので、眠り方を忘れてしまっていなければいいけど。アカネは一途の不安に駆られることとなった。

 布団に横たわると、一分としないうちに眠りについていた。誰かと一緒にいる安心感が、睡眠に対する不安を吹き飛ばすこととなった。

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