72章 絵の才能
アカネは一睡もすることなく、絵を描き続ける。一秒たりとも、無駄にできないという思いが強かった。
睡眠をとっていないだけでなく、ご飯も食べていない。食べなくても生きられるスキルを、最大限活用することにした。
入浴、着替えなどもしていない。汗をかかない体質であるため、放置しても問題にならないのである。
超人的な身体を手に入れたものの、絵の才能については変わっていなかった。絵を書けば書くほど、自分の下手さが伝わってくる。
メイホウにお願いして、絵のスキルもアップさせておけばよかった。そうしていれば、自分の理想とするものを描けたのではなかろうか。
玄関をノックされる。アカネは筆を置いたのち、扉の方に向かうことにした。
「こんにちは・・・・・・」
アカネの前に現れたのは、「なごみや」のミライだった。
「ミライさん、いらっしゃい」
人に会うのは二週間ぶりだ。絵の依頼を受けてからというもの、一歩も外に出ていなかった。
客人も来たことだし、少しだけ休憩しようかな。適度に息抜きをすることで、よい絵をかけるようになるかもしれない。書きたい、書きたいと意思が強すぎると、うまくいかなくなる。
ミライは頭を下げてから、家の中に入っていった。
「お邪魔します」
久しぶりに人に会ったからか、気分がウキウキとしている。人間は煩わしい生き物ではあるものの、たまには会いたいと思えるのかもしれない。